48 羽柴復活
ところで長宗我部の石高と評価については意見が割れますしつい先日も過大評価だとか言われてたんですけど領有した国の数は武田信玄と上杉謙信クラスなんだぜ!
というのは強引ですが本作で初めに言っているように太閤検地の土佐の石高は動員兵力からの逆算なのに加えて長宗我部家は実は石高ではなく貫高で表しているというわけわかめなのです。
24800町とからしく単純計算でだいたい24万石だそうです。
うーん、よく分からない!
ともかく長宗我部家の所領を70万石とか60万石とか言うのはナンセンスで90万石前後が1番近いんじゃないかと個人的には思ってます。
じゃあ四国征伐でなんで4万も動員できたのかは考えてみたのですが普通に考えて家の有事なら一万石につき500人くらいは動員するよねって話ですね。
それにしてもわざわざ負担を減らすために石高を半分にしてくれあ増田長盛はなんていい人なんでしょう。
そこら辺、戸次川での秀吉の後ろめたさというのが見えてきますね。
「よく考えたら江戸に屋敷立てたのにまた大坂に屋敷立てるのか?」
大坂城内は黒田長政のこの一言で一気に凍りついた。
「確かに……大坂にも屋敷の後はあるがせっかく金をかけて建てた意味がねえな。」
福島正則が珍しく冷静に分析する。
「お前にしてまともな考えだな。わしも新しく金をかけて屋敷を立てるのはどうかと思うが……。」
「姑殿まで……。じゃあいっその事屋敷を置くのやめませんか?」
「えっ!」
みんな声を揃えて驚いた。
「だって土佐と江戸を行き来するの金も時間もかかるしめんどくさいんですよ。室町幕府も鎌倉幕府もそんな事してなかったしウチもやる必要なんてないんじゃないですか?」
「いや、でもそれは不味くないか?そうだろ本多殿。」
島津家久が正純に迫る。
「いやー幕府としても大名へ負担をかけ過ぎると反感買いそうで不安だったんですよ。もうここはキッパリ無しとしますか。」
「上様もよろしいですな?」
「うむ、そなたらの方が余より政には詳しいだろう。そなたらに地盤作りは任せる。」
「さすが上様じゃっ!我らを信用してくださる!」
俺を含めおっさんはみんな信用されているのに感動した。
外様といって幕政から遠ざけられていて悲しかったのだ。
「申し上げます!宇喜多中納言様がいらっしゃいました!」
「やあ、どうもどうも。八丈島から泳いで参ったぞ。」
「黙れ八郎。貴様カナヅチだろう。」
「それは言っちゃダメだ家久。」
「備前殿、少し見られないうちに丸くなられましたな。」
「おお、大夫殿か。随分とじじいになったな。というか越中殿も甲州殿もみんなじじいだな。」
「よう言われましたな、越中と呼ばれたのは久しぶりでござる。」
「わしも甲州と呼ばれたのは20年振りかのう。そうじゃ、久しぶりにおねね様に会いに行かぬか?」
「おお、それは良い!」
一同が声を揃え言う。
「おねね様というのは北政所様のことか?余も1度お目にかかりたいと思っていたのだが同伴しても良いか?」
「ええ、是非とも!母上も喜びますよ!」
ということで俺達子飼いと忠長、忠直らは母上の元に向かった。
出迎えてくれた母上は見た目こそ老けたものの中身はそのままだった。
「まあ、みんなじじいになったねえ。それにしても千王丸、土佐侍従殿にそっくりね。」
「あれ、母上って父上のこと知ってるんですか?」
「うん、たまに挨拶に来てくれてたのよ。それよりその奥の若い子はもしかして……。」
「お初にお目にかかりまする。徳川右大将忠長でござる。」
「同じく権大納言忠直でございます。」
「まあー将軍に副将軍ね。こんなところまでよくお越しくださいました。狭いところだけど上がってちょうだい。」
「ははっ!ではお言葉に甘えさせていただきます。」
なんて礼儀正しい子なんだろうとみんな思って感心していた。
忠直もまあキャラ作ってるな……。
「おねね様!久しぶりに飯食いてえよ。」
「市松、私だってもう70過ぎてるのよ?ちょっとしんどいかなぁ。」
「ご無理をなさらず、お身体を大事にしてくださいませ。」
「まあ、将軍様にそう言って貰えると元気が出てきたわ。今日はご馳走にしようね。」
久しぶりに母上の飯を食べ楽しいひとときを過ごした俺は一段落したところで母上の元に膝まづいた。
「これだけ良くして頂いたのにも関わらず、豊臣を滅ぼしてしまい、面目時代もございませぬ!」
「んー?そんなことあんたまだ気にしてたの?私は豊臣の家も大事だけどあんた達の事も大事に思ってるよ。だからあんた達の選択を批判したりはしないよ?」
優しい……優しすぎます!
実の母とは幼いうちに死別していた俺は泣き出してしまった。
「ご安心くだされ。豊臣家は羽柴家として再興させますゆえ。」
「えっ????」
忠長の発言で周りはいっせいに忠長の方を見る。
「確か北政所様の元には羽柴利次という御人がいらっしゃいましたね。」
「ええ、確かに利次はいますけど。」
「利次殿と宇喜多殿の娘に結婚して頂き近江長浜25万石を与えて大名としての存続を認めます。」
「えーーーーーーーっ!!!!!」
ここで俺は気づいた。
盛親や真田信繁、毛利勝永らは無駄死だったのではないか?
結局豊臣は羽柴家として名を残すことになるじゃないか。
まあいいかー。
「将軍様、あんたはほんとに出来た子だよ。きっとあの人もあっちで喜んでるね。」
母上は泣きながら忠長の頭を撫でる。
正則や嘉明はそれを見て貰い泣きしてるし普段はクールな長政も感動していた。
その頃江戸城には。
「来たぜ!これで勝ってどっちも疲弊しているうちに忠輝殿を担ぎあげて俺が天下の主となるぞ。」
「殿、それ聞かれてたら冗談抜きで大変なことになるのでやめてください。」
ハイテンションの伊達政宗を片倉重長が宥めようとする。
「はっはっは。伊達殿は相変わらずですな。」
「おう、信之。お前も来ておったか。」
真田信之……松代13万石の大名であの真田信繁の兄である。
(ちなめに本作での登場はかなり久しぶり)
「流石は冗談上手の伊達殿です。夢は大きく持たれた方が良いですからな。」
「ふん!お主こそこの戦で活躍して信濃を丸ごと頂くつもりだろうが。」
「まあそれくらいに土地は空くでしょうな。何より50万石を超える長宗我部や島津、黒田などが消えるのですから。」
「あんな奴らには負けてられん。この俺にかかればあっという間よ。」
「しかしこちらはそれ以上に寄せ集めですがな。」
信之は集まった諸大名を見て言った。
見れば軍を率いる徳川頼房も徳川忠輝も酒井忠世も土井利勝もその他の武将もだいたい関ヶ原と大坂の陣くらいしか経験のない武将ばかりだ。
「佐竹殿も上杉殿も来られていないとは……。 我らが相当骨を折らねばならぬようですな。」
「何、どれも竜騎兵で皆殺しじゃ。」
「それに天下の真田軍も加われば怖いもの無しでござる。期待しておりますぞ。」
そう言って土井利勝がやってきた。
「おお土井殿。この戦に勝てば誠に100万石を頂けるのだな?」
「はい、朱印状もお渡ししたはずですが。」
「以前権現様に反故にされたのでな。上様はそのようにはなさらぬと期待しておるぞ。」
「ご案じなされますな。我らは伊達殿に嘘をついたりは致しませぬ。」
嘘である。この男を含め幕府はこの戦が終わっても政宗に所領を与えるつもりなど初めからない。
むしろ討死して欲しいとすら思っている。
「それで東北からは伊達殿と最上殿と南部殿と津軽殿ですか。上杉殿と佐竹殿は?」
「どうせ景勝は直江が死んで腑抜けたのであろう。佐竹は日和見だな。」
「左様ですか……。せっかく歴戦の猛者と戦えると思ったのですが……。」
嘘である。
土井利勝は戦国武将が大嫌いなので上杉景勝も佐竹義宣も討死して欲しいと思っている。
「それで出陣はいつですかな?」
信之が真面目な表情で聞く。
「出陣は明後日。総大将は水戸中納言様でござる。」
政宗が怪訝そうに言う。
「水戸殿か。上様では無いのだな。」
「上様はまだ幼く戦に出るのには危険が伴いますゆえ。」
「まあ怪我をされても困るからな!」
そう言って笑う政宗とは逆に信之は不安げだった。
(相手は歴戦の勇将ばかり……。上様が来られないとなると兵の士気もかなり下がるぞ……。)