45 植田の戦い
「では福留殿は降伏するのだな。」
植田城を包囲する幕府本陣にて膝まづく政親を本多忠政は冷徹に聞いた。
「ははっ、されど未だに城内には降伏に反対するものが多くおります。これらを説得するのに2日の時を頂きたい。」
「ダメじゃ、一日でやれ。」
「分かりました……できる限り手を尽くします。」
政親は背中を縮こませて城へ戻って行った。
「態度の大きい男だな。」
「誠です、あれが本多忠勝の息子とは情けない話ですな。」
城に入っていた丹羽長重と共に政親は本多を非難した。
「首の用意は?」
「私の家臣のうち病で先の短いものがやってくれるそうです……。しかし殿もやる時はやられるお方ですな。」
「そうでもしないと勝てぬからな。実に合理的な考えじゃ。」
「さて、幕府は釣れるでしょうか……。」
翌日、政親は首を持って本陣に向かった。
「これらの首は我が家臣の物です……。開城に反対するゆえ首を跳ねました。」
「これで全てなのか?」
「いえ……まだ少なからずおります。あと1日だけ時間を頂けぬでしょうか?」
「ならぬ、もう待てぬぞ。」
「いや、家臣の首を差し出してまで説得されているのです。もう少し福留殿にかけてみては如何かな?」
ここで森忠政が意見した。
「私も賛成です。」
これに池田家の諸将も賛成したので本多も仕方なく折れた。
そしてその頃、忠親率いる本隊は植田に向かって進軍していた。
「早朝に攻撃をかける。森勢は攻撃するな、内応しておるからな。まだ火縄は付けるなよ!」
勝てる、絶対に勝てる。
何故か自信が湧いていた。
そして夜明け……
「見事に休んでおるわ!全軍放てぃ!一気に敵を討ち取ってしまえッ!」
俺が命じると一斉に鉄砲隊の弾丸が幕府軍に襲いかかった。
「なっ、なんじゃぁー、夜襲か!」
「我らも殿に続く!進めぃ!」
幕府軍は3万いても所詮寄せ集め。
長宗我部軍の挟撃作戦により一気に幕府軍は大混乱に陥った。
「おのれ!森勢はどこだ!」
「森殿は既に撤退されたようです!おそらくは内通していたのかと!」
「ふざけるなぁァァァっ!」
「本多忠政だな。その首貰ったぞ!」
「おのれぃ!近づくな下郎!」
一領具足が一気に本多に襲いかかる。
「ワシを舐めるな!ワシは本多忠勝の嫡男であるぞ!」
「それがなんだっ!」
一領具足と本多では武士としての質が違いすぎた。
本多はあっさりと首を斬り落とされ、総大将が討死した幕府軍は散り散りに逃亡し主将格はほとんど討ち取られた。
「はっはっはっはっ!大勝利じゃ!直ぐに大坂の婿殿に動くように伝えよ!我らは阿波に向かうぞ!」
父上が成し遂げられなかった作戦、俺が成功させましたよ……。
とんでもないくらい達成感に満ち溢れた俺は更に阿波に向かった。