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39 夏の陣

「いや、久しぶりですな、兄上。」


まさか盛親に調略をかけさせるとは思わなかった。

条件は伊予に20万石。

幕府としても盛親の狙いは大名への復帰だと考えているようだ。


「何の用だ、よもや敵に寝返れなどと言わぬであろうな。」


「伊予20万石でどうでしょう?」


「いらぬ。」


えっ?大名復帰が目的じゃないの?

それ以外に理由ある?


「もしかして俺が憎いのですか?」


「然に非ず、ワシは己の武将としての器を試したい。」


は?そんな理由かよ……。

それにしても丸くなったなぁ。


「では誘いには乗らぬと……。」


「ああ。」


「本当にそれで構わないのですね?」


「ああ。だが家族だけは引き取って欲しい……。」


「分かりました、今連れて帰りますか?」


「ああ、呼んでくる。」


しばらくすると女子供の泣き声が聞こえてきた。


「右から孫の盛胤、三男の盛信、四男の盛定。それから妻と娘だ。大事にしてやってくれ。」


「承知致しました。」


「お前とは戦いたくない。次の戦ではぶつからないように祈っている。」


「私も同じですよ。」


当たり前だが盛親の軍には四国の者もおり俺だって戦いたくない。

まあどうせ俺は後方担当なので特に問題ないだろう。

でもなんか忘れてるような……?


甥っ子たちを連れて俺は浦戸に戻った。


「殿、上様より豊臣討伐の命が下りました。まずは二条城に集合せよとのこと。」


「うむ、此度も二万連れていくぞ。」


「先の戦での被害もほとんどなく可能です。」


「よし、これが最後の戦だ。抜かるなよ。」


長宗我部軍二万が四国を出立した。

二条城には既に多くの諸将が集まっており例の通り俺は最前列に座った。

陣立ては前回同様に河内方面だが今回は総大将が忠直なので安心した。

その後、河内方面軍の中で軍議が開かれた。

メンバーは先鋒の藤堂殿、井伊直孝、各陣の大将の榊原康勝、酒井家次、本田忠朝、松平康長、前田利常、俺、忠直である。


「では我らの方針としては、大御所の命に従い無用な戦は避けるように致す。」


忠直は真田丸の戦いで痛い目を見ている。

今回は慎重なのだろう。

皆も頷く。

この先で八尾の戦いが起きるのは分かっていたので俺は吉成と吉田重親を呼び出した。


「兄上が仕掛けてくるとしたら萱振村と長瀬川の可能性が高い。恐らく奇襲だ。お主らは藤堂殿に付きこれに備えよ。」


「されど藤堂様だけで十分なのでは?」


「甘いな吉成。相手とて六千くらいは動員しておる。そなたらに三千を預けるゆえ奇襲に備えておけ。」


この時はこれで大丈夫だろうと思っていた。

だが盛親もそう甘くはなかった。

忠直と休息中に茶を飲んでいた時のことである。


「申し上げます、八尾及び若江にて藤堂殿、井伊殿が敵と接触致しました!」


「それでどうなった!?」


忠直より俺が先に聞く。


「ははっ!大坂方の長宗我部宮内少輔の奇襲により藤堂隊は壊滅。藤堂様はご無事ですが藤堂仁右衛門様、藤堂勘解由様、援軍の桑名様、吉田様、お討死!井伊勢は敵将の木村長門を討ち取りましたがかなりの損害を受け宮内少輔を追撃することは出来なかったのこと!」


俺は飲んでたお茶を吹き出してずっこけた。


「は?????」


俺は直ぐに忠直と共に藤堂殿のところに向かった。


「藤堂殿、私の家臣が警告したはずですぞ!」


「すまぬ……思った以上に敵の鉄砲の数が多くて警戒していたのだが圧倒されてしまった……。」


見れば藤堂殿自身も被弾しているようだ。

一体盛親は何をしたんだ……。

とにかく史実と少し違うようで盛親の軍はここで壊滅せずまだピンピンしているようだ。

つまり明日の決戦では突っ込んでくる可能性が高い。

覚悟を決めなければならないようだ。

藤堂殿に面会したあと忠直と別れた俺は家臣たちの遺体に手を合わせた。

すまない……俺が付いていればこんな事には……。


こいつらの死を無駄にしないためにも明日は盛親を何としても討ち取るしかない。

翌日、俺は岡山口方面に配置された。

前田利常を先手として黒田長政、加藤嘉明、姑殿、藤堂殿、井伊直孝、立花宗茂、秀忠と鉄壁の布陣だった。

そして早朝、天王口方面から銃声が聞こえた。

世にいう天王寺、岡山の戦いである。

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