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37 戦場のグルメ

俺は幕府の中でも前田家に次ぐ大身の大名で官位はぶっちぎりで外様トップだ。

軍議の席も一門衆と同じく最前列に座る。


「おっ、来られましたな。」


「お久しぶりです藤堂殿。此度は先陣を任せられたとか。」


「ああ、これで豊臣家とも決別できる。大和大納言様との思い出もな……。」


「あの方はとても良い人でした。人質の私にも優しくしてくださいましたし。」


「うむ、されど今は徳川に忠誠を誓った身。もはや後戻りは出来ぬ。」


そうだよ、ちょっと俺も昔のこと思い出しちゃったじゃんか。


「大御所と上様の御成である!」


雑談していると本多正純の声がして家康と秀忠が入ってきた。


「まずは皆の者、よう集まってくれた。この中には豊臣家に恩のある者もいよう。」


家康が続けようとすると政宗が立ち上がった。


「この伊達陸奥守政宗。天下を乱す豊臣家は許してはおけませぬ!」


「おお、そうじゃ、そうじゃ。」


それに続いて諸大名が立ち上がった。


「よう申してくれた。それでは陣触れを発表する!」


結局河内口の大将は松平忠明になった。

いやなんで忠直じゃねーかな。

不機嫌そうに陣に戻ろうとしたらいきなり肩を掴まれた。


「おうおう、四国65万石なのにタヌキの子供の世話係とは大変だな。」


そう言ったのは森忠政。

戦国DQN四天王の森長可の弟で本人もかなりクレイジーな男である。


「有り得ないよな。大御所は俺の事を信用してないらしい。」


「そう考えたら五万石程度の三七様が丹羽様や池田様を率いるって馬鹿げた話だよな。」


言われてみればそうだ。

金吾も織田の子供も石高的には家臣を下回るが軍を率いていた。

あー、確かになあ。


「いや納得いくか!俺は将軍の親友だぞ。」


「血縁と友情なら血縁だろうが。忠明ってのは奥平信昌の息子らしいな。」


「ああ、そうかい。それより今日の夜、俺の陣に来ないか?紅毛人に美味い飯を作らせる予定なんだ。」


「そりゃいいね。勝利の前祝いと行こうか。」


どうしても俺は西洋料理が食べたい。

特にステーキ、ステーキが食べたいんだ!

既に家臣に鹿は捕獲させたのであとはシェフを呼ぶだけだ。

そして夜。


「殿、エゲリスの料理人です。」


「ご苦労、半右衛門。早速だが作ってもらおうか。」


とは言えこの時代の人間はほとんど英語なんて喋れない。

土佐の人間なら尚更だ。


「I want you to make a steak with this meat」


「oh YES、Yes。」


俺がカタコトの英語で言うとシェフは理解してくれたようだ。


「あんた、紅毛の言葉喋れんのか!」


「ああ、少しだけな。」


忠政は関心していた。

それを他所にシェフは手際よく肉をカットして焼いてくれる。

待ちに待ったステーキだ!

30年食ってないからヨダレが出そうな匂いは忘れない。


「デキマシタ、バンビノステーキデス。」


「Thank you」


カタコトの日本語でステーキを差し出すシェフに対し俺か英語で返した。

シェフはワイングラスにワインも注いでくれた。


「これ、信長様が飲んでたやつだ。サ、サンキュウな。」


忠政もワインを見てキラキラした目で見る。


「ナイフとフォークの使い方はわかるか?左のフォークで肉を抑えて右のナイフで肉を斬るんだ。」


俺は忠政にテーブルマナーを説明しながら1口肉を食う。

ほのかな野生の香りのする肉汁が口の中で一瞬にして広がり甘くとろけてしまいそうな肉が俺を包み込む。


「うまい、うますぎる。悪魔的だ!」


俺はワインを注ぎ込む。

こうなるとあれが飲みたい。


「please、beer。」


「OK。」


シェフはビールも注いでくれた。

これだ、これ。

くぅぅぅぅっ!

ノンアルしか飲んだことないけどこの味は最高だ。


「この肉、めっちゃ美味い!おい、俺にもその飲み物をよこせ。」


忠政もビールと肉とワインを交互に流し込む。

そしてステーキの相棒の米を俺たちはかきこむ。


「あのー、松平下総守様がお越しです。」


「今飯食ってんだ、半右衛門が適当に相手しといてくれ。」


「いや、それが信九郎様のことで……。」


は、康豊がなんかしたのか?


「仕方ない通せ。」


飯の途中だが仕方ないな。

忠明が入ってくる。


「松平下総守でござる。貴殿の弟の右衛門佐殿が木津川口砦を攻略したいと申し出てきた。貴殿の意見を聞きたい。」


「よろしいのでは?とはいえ大御所の許可無しには戦を始めれませぬな。」


「私と右衛門佐殿で大御所に許可はとって参ります。貴殿としては構わないということですな。」


「構いませんよ。三千ほど預けましょう。」


「それは頼もしい。ではこれにて。」


この後家康から許可が降りた康豊は木津川口砦を襲撃しこれを制圧。

こうして大坂冬の陣が始まったのであった。

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[気になる点] バンビノステーキとはなんでしょう 人の子供でしょうか 羊なら 雄羊は ram 雌羊は ewe 子羊は lamb 雌羊なら mutton 鹿ならば 鹿肉なら Venison 鹿は d…
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