35 暗殺されそう?
どうでもいいですが私は島津ファンが苦手です。
慶長16年、家康と豊臣秀頼が二条城で会見しその後に清正が不審な死を遂げた。
かと言って俺に関係あるの?と言われたら特にないが結構悲しかった。
さらに2年後に池田輝政と浅野幸長もこれまた不審な死を遂げた。
「豊臣譜代がまた1人……次は我が身かと思うておる。」
舅殿が不安げに言う。
「やはり暗殺でしょうか?だとすると大御所は豊臣家を。」
「であろうな。かと言って我らは豊臣家に今更与するつもりもない。下手な疑いをかけられて暗殺されるのは御免じゃ。」
「全くですな。しかし市兄を始末しないのは何故でしょう?」
「あいつは馬鹿だからだろう。清正と幸長は頭が良かった。輝政は都の近くに大領を抱えていたからかな。」
「明日は我が身と覚悟しておくべきですね。」
「ああ。そうじゃな。」
そうは言ったものの俺は暗殺されなかったまま方広寺梵鐘事件が発生した。
その後、家康は俺を含めた西国の諸大名に誓書を提出させた。
豊臣家の使者が浦戸城に来たのはその2日後だった。
「豊臣家家臣、木村長門守重成でございます。本日はお目通りが叶い恐悦至極に存じ奉ります。」
「まずは遠路はるばるご苦労であった。何の御用かな?」
「ははっ、右府様よりの言付けを預かっておりまする。」
「秀頼殿が?どうせ徳川を討てということだろう。残念ながら当家の弥三郎は上様の娘を妻としておる。そもそも亡き父上が切り取られた所領をノコノコと奪いに来た豊臣家など元より感謝などないわ。」
「なんと……貴殿は亡き太閤殿下により淡路を与えられたではありませぬか。」
俺に高圧的な態度で言われたにも関わらず重成は臆することなく突っかかってくる。
見事だ。
「あれはワシの実力じゃ。そこらの二世大名と一緒にするでない。それに今味方になる大名はいるのか?」
「それは……」
「せいぜい浪人共しかおらんであろう。秀頼に伝えておけ。最後に良き戦をしようと。」
「承知致しました。それでは戦場にて。」
重成は丁寧に挨拶すると城を後にした。
「肝の座った小僧ですな。」
桑名が言う。
「ああ、徳川にもあんなのがいればいいがな。」
ちなみに木村重成が大阪方の戦犯だったのでは?と忠親は思っている。
「さて最後の戦になるかな。」
「それより盛親様は動かれるのでしょうか?」
「別に長宗我部の家は残ってるし未練もないだろうから大丈夫でしょ。」
一月後、幕府は豊臣家の討伐を決定。
諸大名に大坂城へ出陣するように命じた。
「豊永、我らはいくら出せと?」
「一万三千と。」
俺が奉行の豊永勝元に聞く。
まあ秀忠なりに気遣ってくれたのだろう。
規定より少し少ない軍役だ。
「いや、2万出せ。」
「お待ちくだされッ!それは多すぎますぞ。」
「前田家は一万二千、伊達は一万。我らはそれと同じではダメなのじゃ。」
「しかし二万は厳しいかと……」
「なに、一領具足達がいるじゃないか。」
最後なんだ、最後くらい史実では苦しめられたあいつらに全力で戦わせてやりたい。
俺なりの配慮だった。
「承知致しました。すぐに呼びかけます。」
豊永らが触れを出すとあっという間に六千もの一領具足が浦戸城下に集まった。
「皆の者!良く聞けいッ!豊臣家は30年前、我らの土地を、誇りを、そして亡き父上の夢を奪った!その借りを返す時が来たぞぉぉぉぉぉ!」
そう言って俺が刀を抜き上にあげると一領具足達も続く。
そして合計で二万の軍勢を率いて淡路の洲本で政親の接待を受けていた時のことである。
「申し上げます!盛親様が大坂城に入ったとの事!」
「なにぃぃぃぃぃぃぃッッ!」
その時、城にいた全員が絶叫した。