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34 天下の跡継ぎ

「えっ、お前が悪くね?」


このドラマチックな話を仙石主観で聞いた俺はやっぱ呆れてしまった。


「いや、誠に申し訳ない。」


「ダメだよね。とりあえず墓参りしていこうぜ。」


俺と仙石は兄上の墓の前で手を合わせた。

四国は取り返せました。どうか俺を見守っていてください。


とりあえず仙石を追求する気もないし今更島津も恨む気は無いので戸次川問題はここで完全に解決した。

仙石はそのまま讃岐に戻ったが俺は肥前の佐賀城に向かった。

肥前に縁もゆかりも無いがここにいるビックネームに兵法を学ぶためだ。


「お初にお目にかかります。長宗我部中納言忠親でございます。」


「鍋島加賀守直茂でござる。丁寧な挨拶痛み入る。」


そのビックネームは鍋島直茂。

父上と同い年で肥前の熊、龍造寺隆信の右腕として各地で活躍し沖田畷の戦いで隆信が討たれると混乱する龍造寺家をまとめあげ現在では佐賀藩の藩祖となっている。

数々の歴戦をくぐりぬけてきたのだろう顔の傷跡すらもかっこよく見えるイケおじだ。


「まさか土佐中納言殿もあろうお方がお会いしたいと仰られるとは思いませなんだ。」


直茂はそう言いながら部屋に案内してくれた。


「今の世に戦国乱世を知るお方は大御所と鍋島様くらいしかおられませぬ。是非ともご教授頂きたい。」


「承知致しました。ではまずは我が主隆信の話から始めましょう。」


直茂の指導は三日三晩続いた。

正直疲れたがとても為になる話ばかりで戦国大名というものをよく知ることが出来た。


翌年、結城秀康が病死した。

そのため息子が松平忠直として跡を継ぎ蒼との結婚式も行われた。

祝いの席には将軍秀忠の代理として本多正純、祖父の舅殿ら俺と親しい大名たちも集まった。


「そなたの父上は誠に勇猛なお方であった。娘のことを頼みますぞ。」


気性の荒い忠直には少し心配だったがそれ以上に幕府の一門との婚姻関係は重要だった。


「ははっ!父上に負けぬように精進致しまする!」


「越前殿、蒼はかの長宗我部元親公と我が義父明智光秀の血を引く者。どうぞ大切にしてやってくだされ。」


俺と舅殿が忠直に酒を継ぎながら言う。

今考えたら蒼って明智光秀と細川藤孝の曾孫で細川忠興と長宗我部元親の孫というとんでもない血筋を持ってるんだな。

年の差は6歳。

仲良くしてくれるといいが……。


「そういえば幕府の3代目は竹千代様か国千代様、どちらが務められるのじゃ?」


ふとした時に正則が言い始めた。


「そりゃ竹千代様じゃろ。嫡子であるぞ。」


「いや、筑前(黒田長政)。上様が仰せられていたが竹千代様は病弱で気も弱く国千代様の成長次第では国千代様が3代目になられるらしい。」


池田輝政のその一言で皆が驚いた。


「大御所はどちらに継がせるつもりなのじゃ?」


清正も聞く。


「大御所は知らぬが江…御台様は国千代様に継がせたいらしい。」


「丹羽殿は何故それを?」


「知らぬか市松。五郎左の妻は御台様の従妹で五郎左の母君は御台様の叔母に当たる。それにワシも五郎左も御台様も幼い頃はよく遊んでいたのじゃ。」


織田家次世代メンバーの丹羽長重と池田輝政は今でも江とよく話してるらしい。


「どうなのだ下野守。」


正則が端にいる正純に聞いた。


「大御所は習いに従い竹千代様を三代将軍にされたいとお考えです。」


「なるほどのう、中納言はどう思う?」


「それはもちろん婿殿になって頂きたいが……。」


「おやめ下さい、義父上。私は上様をお支えするだけです。」


「冗談じゃ。やはり国千代様のご成長次第では国千代様の方が良いと思う。」


その後も正則が諸将に聞きまくったが大体はみんな俺と同じ考えだった。


3年もすると国千代は神童と呼ばれるほどの才能を見せ勤勉で体も大きく気の利く子供なのに対し竹千代はひ弱で臆病、部屋に引きこもっていたため秀忠は悩んでいた。


「どうしたらいいんだ?忠親。」


「知りませんよ。国千代様にすればいいんじゃないですか?」


「そうか……やはりワシも国千代にしようと思うのだが父上がな……。」


まあ自分の幼名を与えるくらいだから溺愛しているのだろう。

ところで引きこもりの兄と活発な弟ってどっかで聞いた事があるな。


「家臣はどう考えてるんですか?」


「本多正純、鳥居忠政らは国千代を、土井利勝や酒井忠世らは竹千代を推しておる。下手すれば内乱になりかねん。外様はどう思うておる?」


「大方は国千代様派かと……。」


「そうか、それより敬語やめてくれないか?どうも話しづらい。」


「お前の家臣が近くにいるとうるさいんでな。ともかく外様が国千代派なら問題ないだろ。」


「ああ、しかしお主の父上は姫若子と呼ばれたのであろう。竹千代を推さないのか?」


あっーーー!既視感の正体はそれだッ!!


「まあ父上と竹千代では抱えるものが違いますから。」


「兄上がどうなされたのです?」


子供の声がした。


「ああ、国千代か。中納言と世間話をしていただけだ。」


「これは中納言殿。遠路はるばるご苦労ですな。」


「おお、国千代。見ない間にまた大きくなったか?」


俺は最近、国千代を可愛がってる。というのも弥三郎と国千代が仲良しだからだ。


「はい、徳川の跡を継ぐ者として日々鍛錬は欠かせませぬ。」


「立派なこと言うじゃん。親父のこと、よく支えてやれよ。」


「ははっ!では私は勉学に戻りますゆえに。」


国千代はお辞儀をすると出ていった。


「もうあいつでいいじゃん。引きこもりなんて当主にしても無駄だよ。」


「そうだな。少なくとも父上がおられる内は……。」


この発言が後々大変なことになるかもしれないのだがそれはまだ誰も知らない。

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