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29 浪人盛親

昨日更新忘れてました

ごめんなさい

慶長7年、俺は家康と秀忠に島津忠恒と謁見するのに列席することになった。

他に参加していたのは正信の子供の正純と本多忠勝ら徳川の譜代家臣だった。

つまり俺はこいつらと同格なんですよね。


「なんで俺を呼んだ?」


廊下で秀忠に聞いた。


「島津だから何しでかすか分からないのと井伊直政がどうも最近体調悪くてな。」


ええ、島津に撃たれましたからね。


「それで代理ってわけね。親父殺したんだからきっと恨まれてるよ。」


「当家の調べによると薩摩侍従と維新入道はとんでもなく不仲だったらしい。今回も抗戦派の龍伯を監禁してここまで来たそうじゃ。」


「優秀だな。内府はどうするつもりで?」


「その功績に免じて本領を安堵するらしい。甘いね。」


「同感だ。その甘さがいずれ仇となるぞ。」


ちなみにこの俺の発言は後々のフラグになるがそれが幕末の事か変化した歴史の事かはどうとも言えない。


家康の待つ部屋に入ると懐かしい顔もいた。


「これは藤堂殿、ご無沙汰しております。」


「宰相殿、お久しぶりですな。ささ、こちらへ。」


藤堂殿はそう言って俺に上座を譲ろうとしてくる。


「何をなされる、私は千王丸のままですぞ。」


「そうはいきませぬ。宰相殿は宰相殿に相応しい席に座られるべきです。」


こう言われると仕方ない。

俺は諦めて上座に座る。


「それにしても内府もお人が悪い。貴殿をここに呼ぶとは。」


「まあ反応は気になりますな。それで島津の処遇を決めるのでは?」


「なるほど。よく考えられてますな。」


そう話している内に本多忠勝が入ってきた。


「薩摩侍従殿がご到着なされました。」


そう言って忠勝の後ろから入ってきたが俺くらいの年齢の男、島津忠恒はまさに鬼島津の息子という感じの豪胆さとはかけ離れたどちらかと言えば舅殿に似た感じだった。


これが戦国DQN四天王、南の家久か……!

他の奴が拍子抜けしている中俺は1人で驚いていた。


「島津薩摩侍従、ただいま参りました。」


「ご苦労、関ヶ原ではやってくれたな。」


「あれは父の維新入道の独断専行でございます。私は父を止め叔父の龍伯も監禁致しました。内府様に逆らうつもりはございませぬ。」


「なるほど、土佐宰相はどう思う?」


いきなり家康に振られて俺は姿勢を正す。


「我ら長宗我部も肥前の鍋島加賀守も一族で別れ戦いましたがそれぞれ領土を安堵されています。」


「ほう、親の仇はそう申しておるがどうじゃ?」


こいつ性格悪すぎだろ、俺ならキレてるわ。


「長宗我部殿にはむしろ目障りな父を排除して頂き感謝しております。私も彼ら同様に敵対する気はありませなんだ。」


「では何故兵を出されなかった?」


隣で聞いていた本多正純が聞く。


「薩摩は南の端にあり日向と秋月、肥後の小西は石田側に付きなおかつ国内での内乱で兵を出せず。面目次第もござらん。」


「島津の石高はいくらであった、正純。」


「おおよそ、60万石かと……。」


「馬鹿者、実高じゃ。実際はもっと少ないのだろ?」


「ははっ。石田治部により45万石のところを61万石に……。」


「45万石なら負担も大きいだろう。それでも薩摩を治められるか?」


「もちろんでございます。薩摩を治められるのは我らしかおらぬと考えております。」


「ほお、大きく出おったわ。どうする秀忠?」


「えっ、私はよろしいかと……。」


「よし、なら島津は61万石を安堵いたす。それで決まりじゃ。」


おい待て今考えたら何もしてない伊達と島津が60万石で俺は45万石だと?

なんでだよ!


ちょっと不満も残った謁見は終わり俺は久しぶりに藤堂殿と京の町を観光することにした。

いや、散歩か?


「昔食わせた餅があるだろ。あれ食いに行くか?」


「是非行きたいです。それにしても公の場と喋り方を分けられてるんですね。」


「ああ、流石に内府様の前だとああしなきゃならんからな。」


この人はちゃんと色々考えてるな。

そう思いながら藤堂殿行きつけの餅屋に入る。


「おお、藤堂はん。お久しぶりですな。こちらのお侍は?」


「おう、久しいな。こいつは長宗我部忠親。俺が畿内にいた時に面倒を見てやってて今は土佐の大大名だ。」


「長宗我部言うたら有名人やないですか。いつも通りの品でよろしいですか?」


「ああ、2人分頼む。」


「長宗我部ってそんなに有名なんですか?」


「当たり前だろ。島津に復讐したって話題だぞ。」


えぇ……なんだそれは。


「それにしてもこの店の隣に寺子屋なんてあったか?やたらと子供の声がうるさいな。」


出された茶を飲みながら藤堂殿が不機嫌そうに言う。

確かにうるさい。


「ちょっと見てきましょうか?」


「ああ、店主。隣に寺子屋できたのか?」


「ええ、最近できたんですわ。そこの師匠が偉い賢いて近所でも評判ですねん。」


へえ、でも子供の世話はちゃんとして欲しいな。


「ほお、とりあえずガキを静かにさせるように言ってきてくれ。」


「承知致しました。」


俺は店を出て寺子屋に入る。

うるせぇな。阪急で騒ぐガキよりうるさい。


「おい、誰かいるか!」


俺が大声をあげる。


「どうなされました?うちになにか御用で?」


そう言って女が出てきた。

少し年下くらいかな?


「ああ、お主がここの師匠か?子供の声が隣の店まで漏れておる。少し声を小さくしてくれないか?」


「ああ、それは申し訳ありません。夫にすぐ申してまいります。」


「ああ、それよりお前。土佐の訛りだな。」


この女、標準語を喋っているようで微妙に土佐の訛りがある。

珍しくもないが同郷見つけると嬉しいよね。


「はい、土佐の大高坂で育ちました。お侍様も土佐の方?」


「ああ、何を隠そうワシは……!????」


部屋から出てきたその男に俺は驚愕した。

痩せて見た目は優しくなったがこいつは……。


「あ、あ、兄上!?」


「おししょー。このおっちゃんだれ?」


後ろから子供たちが俺を指さして聞く。


「あにうえっておししょーのおとうとなの?」


「ん?人違いではありませぬか?私は大岩祐夢と申す者。兄弟はおりませぬ。」


うっ嘘だ!大岩祐夢ってまるっきりお前じゃねえか!

しかも兄弟がいないってそこの女は兄上の娘だろうが!(信親に娘が生まれた時点で忠親は人質に出されていたので面識はない。)


「あっ、あれー?そうでござったか?とにかく少し静かにしてくれないかなぁ。」


「これはこれは申し訳ありませぬ。子供たちには注意しておきますので。それではこれにて。」


盛親改めて大岩は深々と頭を下げると部屋に戻っていった。


「あの……。」


俺は盛親の嫁(俺の姪っ子)に声をかける。


「ご安心くださいませ。あの人はもう土佐に戻ろうとは思っておりませぬ。土佐のことをよろしくお願いします、叔父上。」


おっ、叔父上って俺まだ23だけどな。


「ああ、兄上のこと頼むわ。」


そう言ってニコニコ笑顔で寺子屋を出たがそういうことじゃない!

となると大坂への入城の理由は己の実力を知るため……。

厄介だ、もっと厄介だ!


そう思いながら店に戻ると


「戻ったか、偶然京奉行の板倉殿がおってな。今話しておったのだ。」


む、京都所司代板倉勝重か!


「おい、板倉!絶対に隣の屋敷から目離すんじゃねえぞ。もしあいつがここから出たらお前の責任だからな!わかったか!」


迫真の勢いで迫られて板倉は気絶しそうになってる。

だが何としてもあいつを出してはいけない。

盛親には大岩祐夢として生涯を安らかに終えてもらわなければならない。

絶対にな!


10ヶ月後……。


「金吾中納言様がお亡くなりになられました。」


「は?」


その報告を金吾の家臣から受けた俺は呆然とした。


「いや、俺あいつに酒やめろって言ったんだけど。」


「結局やめられませんでした。」


「平岡はなんて?」


「平岡様が申されても無視されるばかりで……。金吾様からお手紙を預かってまいりました。」


「俺に?」


手紙を開ける前から金吾との思い出が蘇る。

一緒に訓練して遊んで城に登って……。

涙が出そうになる。

しかし手紙を開けた瞬間、涙は引っ込んだ。


「『酒やめられませんでした、ごめんね。』だと!?ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」


慶長7年12月、小早川金吾中納言秀秋、アルコール中毒で死亡。


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