24 小山評定
日本史の授業で長宗我部元親は出てきませんでした……
三成挙兵の報せは小山に行軍していた家康の元にも伝わり諸将が集められた。
「各々方ようお聞きくだされ。上方で石田治部、毛利中納言らが兵を上げた。大坂に妻子を置かれているお方も多くおられるであろう。これより大坂に引き返し彼らの味方をしてもこの家康は恨みは致さぬ。」
家康がそう言うと諸将は黙り込んだ。
とりあえず俺も便乗して黙る。
そして2分ほど時が立った頃である。
「ワシは内府にお味方致す、福島太夫正則!」
そう言って正則が立ち上がった。
「右に同じく、細川越中守忠興!」
「ワシも同じく、黒田甲斐守長政!」
舅殿と長政も続く。
「ならば拙者は居城を内府にお預けいたそう、長宗我部侍従忠親!」
ここで山内一豊のセリフを盗む。
「わしもお預け致す、池田侍従輝政!」
ここら辺からみんなどんどんと立ち上がり全員が家康に味方すると言った。
「各々方、よく申された!早速だが太夫殿と吉田侍従殿に先鋒をお任せしたい。秀忠は徳川本隊を率いて中山道を進め。ワシは東海道より進む!」
「おう!」
早速先発隊は進軍を開始し秀忠軍は中山道を進んだ。
「正信、中山道で上方側に着いたのは?」
「上田城の真田安房守のみでございます。中山道から外れた所にいる故相手にしない方が良いかと。」
「俺も同じ考えだ、真田は油断ならぬ相手。ここは無視して岐阜城へ向かうべし。」
「それより上方側と決戦になるとしたらどの辺りなのじゃ?」
榊原が聞く。
「上方側は今は大垣城に布陣しておる。そこから近い場所で激突するのではないかと俺は予想している。恐らくこの関ヶ原あたりかと……。」
俺がそう言って指を指す。
「関ヶ原か……。しかしここなら敵に挟まれてしまうのでは?」
「式部殿、なんのために金吾と吉川に近づいたか考えてくれ。」
「ああ、なるほど!」
榊原は分かったようだがやはり秀忠は分かってないようだ。
「ともかく真田をどうするかは小諸に着いてから決めましょう。既に仙石殿がお待ちです。」
正信が言う。
それにしても仙石に会うのは15年振りくらいか?
どうなってるか少しワクワクしながら俺たちは小諸城に到着した。
「これは中納言様、お待ちしておりましたぞ。既に真田伊豆守殿らもお待ちです。」
なんか思ったより腰が低いな。
まあ徳川のおかげで大名に復帰出来たからかな。
「む、これは淡路侍従殿。お父上には1度お会いしてあの時のことを謝罪したかったのですが……」
仙石は俺に気付いて話しかけてきた。
「わざわざかたじけない。しかし会わない方が父のためになるかと。」
「そうですか……大変申し訳ないことを致しました。」
「お気になさらず。この戦の後には四国を内2カ国の朱印状を頂いている故。仙石殿も讃岐に戻れたらよろしいな。」
「戻れたら良いのですがな。」
マンガの仙石と違い過ぎて可哀想に見えてきた。
戦後は讃岐に戻れる様に俺が手回ししてあげよう。
その後軍議が始まった。
「大谷刑部と安房守の密書を手に入れました。どうぞ。」
そう言って真田信之が秀忠に書状を差し出す。
「ほう……なに!」
秀忠はそれに目を通すや否や書状を破り割いた。
「なんと書いてあったのです!」
榊原が聞く。
「我らは腰抜け故、上田を無視して西に進むであろうと!ワシを侮辱しておって!」
「乗せられてはいかん!これは敵の罠であろう!」
俺が抑えるように言う。
「淡路殿のおっしゃる通り、ここは真田を攻めずに進軍すべきです。」
仙石も続く。
「お二方のおっしゃる通り、川中島の森殿に真田は任せ我らは西に進むべきです。」
「正信、お主まで何を申す!我らは侮辱されたのじゃぞ!悔しくないのか!?」
「そのような感情で動いてはなりませぬ!ワシのように失態を晒したいおつもりか!」
仙石が言うと説得力あるな。
ほんとに改心してるみたいだ。
「むっ……仙石殿がそこまで言うか……。」
「しかし背後を突かれればお味方は……。」
「なら後詰は真田殿が務められれば良かろう。」
俺は真田信之が裏で繋がってるのを見越して言う。
「……承知致した。」
「では我らはこのまま中山道を進み治部を討ちましょう。」
「うむ、全軍進め!」
こうして俺と仙石の説得の甲斐あって秀忠軍は真田と戦わず関ヶ原を目指すことになった。