16 初陣
私が昔好きだったアイドルが解散して1年ですがその日にこのタイトルとは
慶長2年、ついに俺の初陣の時が来た。
秀吉は再度朝鮮への出兵を命じ俺は父上の率いる六番隊に藤堂殿や嘉明と共に編成された。
全軍の総大将は秀俊が務めることになり俺にとって縁の深い者たちの元で初陣を迎えることが出来た。
洲本城下に集まった1200の軍勢の大半は皆選りすぐりの者たちで最新鋭の装備に身を包んでいた。
名護屋城にてその軍勢を見た父上は大いに驚いた。
「お主、よくもそこまでの兵を揃えたな。」
「数が少ないので装備に金をかけることが出来ました。長宗我部の名に恥じぬようにと。」
「ふん、お前が長宗我部の名を語るとはな。」
盛親が嫌味を言ってきた。
「やめぬか、千熊丸。味方の士気が下がるようなことを言うでない。」
「しかし!」
「あの、土佐侍従殿。そろそろ軍議が始まります。」
盛親が反論しようとしたところでタイミング良く藤堂殿がやって来た。
「左様ですか、わざわざ申し訳ない。いくぞ千熊丸。」
父上はそれを聞いて城内に入っていった。
「先程はかたじけのうございます。」
「何、気になされるな。お主が苦労しているのはワシが1番わかっておる。さあ、我らも軍議に。」
こうして不穏な朝鮮出兵が始まった。
父上は陸路から俺たちに指示を出し藤堂殿、嘉明、俺は水軍として動くように命じられた。
「藤堂殿、朝鮮水軍は厄介ですか?」
安宅船の先で俺は藤堂殿に聞いた。
「ああ、特に李舜臣は強敵じゃぞ。気をつけよ。」
「叔父上、先発隊より報告。敵襲でござる!」
キタキタ!これでこそ戦だ!
久しぶりに再開した仁右衛門が報告する。
「わかった、来島を援軍に向かわせる。」
「我々も向かいます。」
「いや、お主はまだ行かんで良い。あくまで大将は指示を出すものじゃと教えたであろう。」
藤堂殿のぐう正論に俺は黙ってしまった。
「分かりました……。」
「分かれば良い。おそらくこの攻撃は大規模なものでは無い。小競り合いで初陣する程お主は安い将では無い。」
「ご配慮かたじけのうございます。」
この人は本当に俺の事を気にかけてくれるんだな。
一礼した俺は自分の船に戻った。
まもなく敵を撃退したとの報せが走った。
そしていよいよ初陣の時が来た。
「各々よう集まってくれた。物見の偵察によるとこの先に敵の大船団が停泊しているとの事だ。我らはこれに夜襲をかける。」
「おう!」
嘉明が答える。
その地図を見て俺は気づいた。
「藤堂殿、この先は陸地があります。拙者は手勢を率いて陸に逃げる敵を待ち伏せします。」
「承知した。死ぬでないぞ、千王丸。」
俺は手勢を半分に分け水軍は利宗と又四郎に預け政親と共に600の兵を率いてバレずに北まで移動した。
「全員いつでも撃てるように準備しておけ。」
俺はリボルバーに弾を込めながら指示する。
目先には大量の亀甲船が浮かんでいる。
そして数時間後、当たりが暗くなると同時に水軍の奇襲が始まった。
爆音が轟き悲鳴が聞こえる中俺は静かに敵を待ち構えた。
そしていよいよその時が来た。
「まもなく、敵がこちらに向かって来ます。」
「良し、全員俺が撃ったら撃て!」
俺は身を乗り出しリボルバーの照準をこちらに気付かずに逃げてくる敵の頭を合わせた。
「堕ちろ。」
某アニメのスナイパーのセリフを言って俺が引き金を引く。
鈍い音と共に敵の頭が吹き飛ぶ。
それと共に隠れていた軍勢がいっせいに鉄砲を撃った。
ストックをつけた鉄砲の命中率は凄まじいもので一気に敵の前衛が屍と化した。
2分ほどの掃射で敵の勢いが緩んだのを確認した俺は刀を抜いた。
「総員、俺に続け!」
全軍が一気に混乱する敵勢に襲いかかった。
俺は1人の兵士に狙いをつけた。
刀を兵士の首に合わせ勢いよく振り下ろす。
兵士の首から血が飛び出し首が落ちる。
その時の感覚は快感に近いものだった。
その後逃げ場を失った敵軍はほぼ全滅し俺もかなりの首を上げた。
その中には大将クラスの者も含まれており大手柄だった。
朝になり藤堂殿達も上陸した。
「始めて人を殺めた感覚はどうじゃ?」
「嫌なものではありませんでした。むしろ、気持ちが良かったかも。」
「お主は武士に向いているようだな。又右衛門などは初陣の時に嘔吐しおった。」
「これからの時代は武士ではなく政の時代です、多分。」
「同じ意見じゃ。しかし敵の大将の元均を討ち取るとはあっぱれじゃ。恩賞は期待した方が良い。」
「まだまだ油断はできません。李舜臣がまだ残っています。」
「ああ、奴は油断しなくても厳しい相手じゃ。」
藤堂殿は俺の肩を叩くと船に戻っていった。