12 独眼竜と俺
あけましておめでとうございます。
こちらの作品が満足のいくまで楽しめたら宇喜多秀家の方も再開します
2日後、小田原に向かう1団が畿内を出発した。
秀俊と俺を先頭としその後ろから毛利の軍勢、そして母上や秀吉の側室が続く。
かなりの長旅だったが1週間後、無事に俺たちは小田原に到着した。
「あれ……城か?」
秀俊が指さして聞く。
「付城だろ?なかなか小田原が落ちないから殿下が立てたらしい。にしても25万の大軍とはすげえな。」
ここまでの人の集まりは見た事がない。
皆呆気に取られている。
早速俺たちは秀吉に挨拶するために本陣に出向いた。
「羽柴左衛門督秀俊、到着致しました。」
「うむ、金吾に右衛門佐。遠路はるばるご苦労であった。早速宴と言いたいところだがもう間もなく奥州から愚か者が来る。お主たちも立ち会え。」
奥州の愚か者……伊達政宗だ!
「お前様、この子らが長旅で疲れてるから休ませてあげたら?」
「おお、寧々や。いや豊臣の次世代を担う此奴らもいた方が良いじゃろ。それより市松と虎之助がお主が来んのを今か今かと待っとるで。」
噂をすれば2人のイカつい男が入ってきた。
「おお、母上ェ!」
「お待ちしておりましたぞ!」
イカつい30歳くらいの男が涙目で母上に駆け寄るのは少し滑稽だった。
「あら、市松に虎之助。見ない内にまた大きくなって。」
「中身はあの頃のままですよ。そちらは金吾様!お久しゅうございます。」
「おお、正則。清正も元気そうじゃ。紹介しておこう、わしの家臣で親友の忠親だ。」
「長宗我部右衛門佐忠親でござる。」
俺が挨拶する。
「おお、お前が噂の長宗我部殿のところの。俺は福島太夫正則、こっちは……。」
「加藤主計頭清正でござる。金吾様が世話になっているようで。」
噂に聞いてたのかな?
秀俊の顔は青ざめてる。
「感動の再会はあとじゃ!伊達が来るぞ。」
数十分もすると諸大名が続々と集まってきた。
秀俊は秀次、家康、秀勝(秀吉甥)、宇喜多秀家の次の席に座った。俺もその後ろに控える。
「伊達政宗殿でござる。」
浅野長政がそう言って入ってきた。
その後に入ってきた伊達政宗の格好を見て一同はザワついた。
白装束に右目の眼帯は異様といえば異様だった。
その後は大〇ドラマで見たくだりが似たような感じであった。
その夜は宴が開かれた。
美人なねーちゃんが踊るのを見ながら飲む酒は美味かったが秀俊は飲まさなかった。
まあ母上もいたからビビったのだろうが。
そして伊達政宗がパフォーマンスを始めた。
「皆々様、ようお集まりくださった!これより披露致すのはずんだ餅の作り方でござる。」
ん?これ見たことあるぞ。
「なあ、右衛門佐。俺もお前の寧々様の飯食って育った仲だ。俺のことは市兄と呼んでくれ。」
唐突に横にいた福島正則が声をかけてきた。
「はっ、はあ。」
「じゃあ俺のことは虎兄と呼べ。」
その隣の加藤清正も言う。
「はっ、はあ。それよりもずんだ餅は?」
「んっ、なんかヤバそうじゃねえか。」
「市松、やめとけ。あれでも頑張ってんだ。」
2人が小馬鹿にする中、秀吉は政宗に差し出されたずんだ餅を嬉しそうに食べた。
「んっ!これは美味い!みんな食え!」
「えっ?美味いの!?」
正則はキョトンとしていた。
俺も食ったことないから知らんけど正直仙台なら牛タン食いたかっなー。
まだ仙台じゃないけど。
「うっ、うめえ……。」
近習に配られたずんだ餅を食べた清正が感嘆の声を流す。
「嘘だろ……って美味え!」
正則は一口で食べてしまった。
うん、確かに美味い。
まあ餅は美味いからな。
秀俊の方はなんか宇喜多秀家と話してる。
まあ大丈夫だろう。
その日の夜、皆が帰ったあと宴会の場所に忘れ物があるので戻ってくると伊達政宗が座っていた。
「これは伊達殿……。先程は美味い餅をありがとうございました。」
「ああ、あなたは確か金吾様の家老の……。」
「長宗我部右衛門佐でござる。」
「長宗我部……土佐侍従殿のご子息ですか。」
「左様、しかし150万石から72万石とは心中お察し致す。」
「貴殿の父上こそ、四国100万石から10万石とは……。私の方がマシではありませぬか。」
「しかし伊達殿はまだお若いではありませぬか。我が父は既に老いて長兄は討死しております。」
「だからこそ貴殿がおられるのでは?まだ貴殿がいるなら長宗我部の未来は明るい。」
「そうだと良いのですが……跡を継ぐのは私ではなく兄の盛親です。」
「まあ転機は突然に訪れるものです。もしもこれより先、天下を取る機会があるならどこかを境に東を私が、西を貴殿が治めるなど面白いではないか!」
「伊達殿、そのような事は小声で話しましょう。されどその話、なかなか面白き事でございますな。」
伊達政宗にそこまでの[軍事センス]があるならやってみろw
とは内心思ったがちょっとやってみたい。
まるで平将門と藤原純友みたいだ。
そんな感じで話してると秀俊がわざわざ迎えに来てくれた。
「ここにいたか。母上が正則や清正らを集めて晩飯を食べると……。って伊達政宗か。」
「これは金吾様、これより先お世話になりもうす。」
「ずんだ餅美味かったぞ。さ、行くぞ。」
ということで政宗と別れ俺は豊臣家の子飼いの集まりに参加することになった。
「おお、金吾様に右衛門佐!紹介しておこう、こいつは黒田長政、で隣が浅野幸長、その隣が池田輝政で加藤嘉明、最後の細川忠興は知ってるな?」
虎兄が紹介してくれた。
「黒田甲州じゃ。よろしく。」
「浅野左京太夫でござる。」
「加藤左馬助だ。」
「池田侍従。」
「で、俺は細川侍従だ。」
「それは知ってますよ。長宗我部右衛門佐でござる。」
「おっしゃ!みんな集まったところで飲むぞ!」
「待って市松!辰之助は飲んじゃダメだよ?飲みすぎって高虎が心配してた。」
それを聞いてみんなが笑う。
なんというかイツメンが出来た感覚だ。
とはいえ父親くらい歳離れてるけどね。
戦の最中とはいえ俺たちは楽しいひとときを過ごした。