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11 小田原征伐…… の留守番

今年1年ありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

天正18年、小田原征伐が始まった。

とはいえ俺と秀俊はお留守番だ。

まだ11歳と9歳の子供を合戦に出す訳にも行かないのだろう。

俺たちの仕事は諸大名の妻子、つまり人質の監視。

とは言え俺も人質ですが?

一応秀長様と毛利の連中もいるので変なことは起こらないだろう。


そんな中、秀長様が体調を崩した。

俺はいても立っても居られず秀長様の元へ向かった。


「これは藤堂殿、お久しゅうございます。」


「おお、千王丸……いや右衛門佐殿か。残念ながら大納言様は今はお眠りになられておられる。」


「左様ですか。ではこれを……。丹波の栗でござる。」


「おお、わざわざすまんな。ところで金吾様の元はどうじゃ?」


「酒ばかり飲んで困っております。特に最近は毛利殿と毎日の様に……。」


「全く、金吾様が幼いことをいいことに困った御人じゃ。お主の方から一言言ったらどうじゃ?」


「ご冗談を。相手は120万石の大大名ですよ?」


「それもそうじゃ。とりあえず大納言様がお目覚めになられたらワシから伝えておこう。ともかく、お主も元気そうでなによりじゃ。」


「藤堂殿、お世話になりました。」


俺は今までの感謝を述べると屋敷に戻った。


「おい、金吾様はどこだ?」


「金吾様なら部屋で毛利様から頂いた酒を飲まれております。」


「ちっ、あのアル中め!」


「おい、秀俊!」


俺は舌打ちして秀俊の部屋を開けた。


「おっお前……。」


扉を開けたその光景に俺は絶句した。

秀俊は飲みながら遊女と寝ていたのだ。


「……もう我慢出来ん!母上に言いつける!」


「まっ、待ってくれ!これには訳があるの!毛利が良き女子がおると言うから……。」


「大納言様が体調を崩されている時に女の乳繰りあいとはいい身分だな。前々から思っていたが近頃のお前は酒ばかり飲んで仕事は家臣に任せ切りだ。いい加減にしろ!」


俺にキレられて少し秀俊も反省しているようだ。


「わかった、今日は帰れ。ともかく、1度風呂に入って酔いを覚ましてくる。」


「ちょっと、待て。お前らこいつが酒を持ち運ばないか監視しておけ。」


俺は小姓に命じると屋敷の酒を全てぶっ壊した。

こうでもしないとあいつマジでダメになるわ。


その後もう我慢出来んとなった俺は藤堂殿の所に行った。


「やはり酔っ払って女と寝ておりました。今から毛利殿に苦情を言うので一緒に来て頂けませぬか?」


「うむ、殿下にバレれば大変なことになる。行こう。」


こうして俺と藤堂殿は顔を真っ赤にして毛利輝元の所にやって来た。


「毛利殿!我が主を廃人にするのはやめて頂きたい!近頃は酒を飲み今日に至っては女と交わっておりました。殿はまだ9つなのです!豊臣家の後継者に媚びを売りたい気持ちはわかりますが殿のことも考えてくだされ!」


30も年下の俺に怒鳴られて輝元は顔を真っ赤にしている。


「なっ、なんじゃと!わしを誰だと思うておる!毛利家の当主、毛利輝元であるぞ!」


「お待ちくだされ!わしも近頃同じ事を思うておりました。殿も酒を飲みすぎです!いい加減にして下され!」


広家殿が助け舟を出してくれた。


「なっ、広家まで……。」


「小早川の叔父上に言いますよ?」


「うっ……。右衛門佐殿、すまなかった。これからは気をつけよう。」


「こちらこそ無礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。ではこれにて。」


部屋を出たあと俺は広家殿の屋敷に出向いた。


「吉川殿、先程は感謝致します。」


「いえいえ、言ったでしょう。似たような主君を持つと大変だと。これからもお互い助け合いましょうぞ。」


「よろしくお頼み申し上げる。」


その後、秀長様が起きたので今までの感謝を述べた。

成長した俺を見て秀長様は栗を食べながら嬉しそうだった。

そして屋敷に戻るとさすがに反省したのか秀俊は素振りをしていた。


「おっ、久しぶりにやるか。」


俺も木刀を取り秀俊に向ける。


「いいぞ、覚悟せよ!」


やはり突っ込んできた。

前に仁右衛門にしたように隙を見て叩こうとした時だ。


「甘いな!」


秀俊はそれを交わすと逆に俺の喉元に刃を向けた。


「酒だけ飲んでたと思うなよ。」


「はっはっはっ、そりゃそうだよな。久しぶりに母上のところで飯でも食うか?」


「ああ、そうしよう。」


そして俺たちは久しぶりに母上の屋敷に来た。


「ん?何でこんな人が多いんだ?」


謎に賑わう屋敷を見た秀俊は困惑している。


「何でだ?ってお前は竹千代!」


俺は見覚えのある顔を見つけた。

あの糞ガキだ。


「げっ、忠親か!なんでお前がここに!」


「お前こそなんで母上の屋敷に!」


「何だ、知り合いか?」


「ああ、徳川殿の嫡男でいきなり俺に突進してきた……。」


「突進とは無礼な!お前が人の屋敷をウロウロしているからだろ!」


「こーら、何を喧嘩してるの?って辰之助に千王丸!元気にしてた?」


「ははっ!」


俺たちは声を揃えて言う。


「ここに来たってことは夕飯を食べに来たのね、今作ってる最中だから。それと藤吉郎様からのご命令であんたらも小田原に行くことになったよ?」


「うっ、初陣ですか!?」


俺が聞く。


「違う違う。諸大名の妻子を連れて来いって命令。宴を開くらしいからそれにあんたらもね。」


ちぇっ、初陣は盛親に遅れを取ってしまった……。

しかし官位も政権での立場も俺の方が上だし。


「まあこの屋敷では喧嘩しないこと。ささ、上がんなさい。」


「お前、北政所様と知り合いなのか?」


「俺らの母上だよ。」


「そうか、じゃあ後でな。」


うーん、どうも君〇名はみたいな関係だ。

いや知らんけどね。


晩飯の席にはたくさんの諸大名の子供が集まっていた。

宮松丸など見覚えのある顔もある。


「さーて、みんなお待たせ。仲良く食べな。」


秀俊も俺も久しぶりの懐かしい食事を楽しみその日の夜は小田原出陣?に備えた。

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