10 元服
聚楽第の行楽が終わると秀俊は豊臣家の後継者として認識され始めた。
そして翌年、元服した秀俊は丹波亀山に10万石を与えられることになった。
そして俺は秀吉に呼び出された。
「千王丸、秀俊がおめえを家臣にしたいとうるさくてな。悪いがお主にはあいつの家臣になってやってくれんか?」
「秀俊の家臣にですか……。しかし私と秀俊は主従関係ではなくどちらかと言えば兄弟。他の方々がどう思うか。」
「安心せい。あいつもお主を家臣にしたいとは申したが親友と思っとる。他の奴らと扱いは違うじゃろう。」
「そうですな。では私も……。」
「うむ、おめえも元服させる。されど忠興の娘との婚儀は落ち着いてからの方がええ。」
「ははっ。有り難き幸せでございます。」
そして数日後、細川忠興を烏帽子親として俺は元服した。
さらに秀吉から従五位下右衛門佐の官位が送られた。
これは異例なことであり母上の強い奨めがあったらしい。
こうして長宗我部右衛門佐忠親となった俺は秀俊と共に丹波に移る事になったのだが秀俊は家臣を入れて自分は大坂に残ったので俺もそれに従ったある日……。
「毛利輝元が俺の元服の祝いをしたいらしい。お前も着いて来てくれ。」
待てよ……。これはこいつがアル中になる原因の奴では……?
さすがにアル中を止めても問題ないだろ。
「まあいいんじゃないか?ただ酒は飲みすぎるなよ。」
「分かってるさ。まあ輝元もその加減くらいするだろう。」
俺も正直、限度があると考えたので適当だった。
その日の夜、毛利家の屋敷に俺たちはわざわざ出向いた。
「これは金吾様、それに右衛門佐殿でござるな。ささ、お上がりくださいませ。」
わざわざ輝元自身がお出迎えとはどんだけ媚び売りたいんだ……。
「安芸で採れた海の幸を沢山用意致しました。酒もこの通り。」
「おお、わざわざすまぬな。しかし美味そうなものばかりじゃ。」
飯を見て機嫌を良くした秀俊は上座に座る。
俺はその横にちょこっと座った。
「ささ、お飲みくだされ。右衛門佐殿もどうぞ。」
「いえ、拙者は酒が弱いので……。」
実際アルコールパッチテストクラス最弱だしね。
にしてもこいつのせいで四国征伐があったようなものなのにこんなに良く態度変えれるな。
「紹介しておきます。我が養子の宮松丸でござる。どうぞ良しなに。」
輝元に紹介されて俺くらいの年代の子供が出てきた。
毛利秀元か。
「宮松丸でございます。」
「宮松丸か!豊家のため、よく尽くしてくれ。」
秀俊はすっかり酒が回ってる。
あぁ、もう止められねえと俺が頭を抱えていると隣のおじさんが話しかけてきた。
「お互いお調子者の主君を持つと大変ですな。」
「えっ、ああ。ところで貴方は?」
「申し遅れましたな。それがし吉川広家でござる。」
「これは出雲侍従殿、飛んだご無礼を。」
「いえいえ、お気になさらず。貴方は金吾様の右腕とも言える存在。いずれは豊家の中核を担われるでしょう。」
「そっそのような事はありませぬ。私はいずれ長宗我部に戻りますので。」
「されどもっぱら噂ですぞ。長宗我部の若君は四男が奉行の増田長盛なのに対して五男の貴方は丹後侍従。いずれは貴方が家督を継ぐのではと。」
「いやぁ〜、私は兄を支えるのが役目ですので。」
誰だよ!またあいつがキレるじゃねえか。
そんな感じで俺は吉川広家と話をしていく内に彼と仲良くなった。
対して秀俊はベロベロに酔っ払い俺が肩を貸してやっと屋敷に帰れた。
こいつに酒は飲まさないと決めた次の日である。
「徳川家康が俺をもてなしたいそうだ。三河の美味い酒も料理も用意しているらしい。」
「飲むなよ?お前昨日のこと忘れたか?」
「忘れた!行くぞ!」
秀俊は俺を半ば強制的に徳川家の屋敷に連れてきた。
「おお、金吾様。お上がりくだされ。」
あの徳川家康ですら平身低頭である。
しかしオーラがやはり毛利輝元とは比べ物にならない。
「そちらは右衛門佐殿ですな。酒はあまり好まれないとか?」
「ええ、お耳が早いようで。」
昨日の夜の話だぞ?しかし家康とは仲良くしておきたい。
「まあまあ。されど料理も素晴らしいものばかりですのでご安心なされよ。」
確かに三河の料理は安芸の料理より味が濃くて美味かった。
特に家康が鷹狩を良くするので肉も沢山あり飯だけでも満足だ。
んで俺が厠に行こうとした時のことだ。
「痛てっ!なんだおめえは!」
いきなり角で誰かとぶつかってキレられた。
「なんだと!?そちらが突っ込んできたでは無いか!」
「いーや、おめえが先だ!」
「なんだ、お前ガキじゃねえか!」
「ガキにガキなんて言われたくねえよ!」
俺はそのガキと睨み合った。
「ふん、痴れ者めが!見慣れぬがお主は何者か?オレは竹千代だ。」
ん?徳川竹千代って……。
「お前……家康殿の嫡男か!」
「今更だな!んで名前を名乗れ!」
「長宗我部右衛門佐忠親だ。よろしくな。」
さすがに江戸幕府二代将軍となると仲良くしたいから俺は挨拶した。
「なんだおめえ、父上の名前を聞いた途端に……。全く、まあここで会ったのも何かの縁だ。名前と顔は覚えといてやる。」
そう言って秀忠は歩いていった。
その日も秀俊はべろんべろんに酔っ払い翌日は宇喜多家、その次の日は上杉家、でその次の日は島津家と次々と大名の屋敷に行っては酔っ払う生活を続けていた。
しかし俺はその中でたくさんの出会いがあったがその出会いがのちのち重要になるのはまあ読者の人は予想できるだろう……。