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夜間警察 通称夜警  作者: 田中ソラ
第二章 始まりの前の静けさ
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2話 個性豊かな先輩

少し早い時間ですが、更新します。

「お。行動するのが早いね~」


「横峰さん。お疲れ様です」「お疲れ様っす」


 食堂へ行くと、恐らく書類整理をしている横峰さんと真っ黒な髪を美しく伸ばしている真面目そうな女性がいた。


「うんうん。部屋の整理がついたのかな? 素早くて見習わないとね。真由!」


「そうですね。十二時まで残り二時間。時間の余裕もありますし、寮内を全てみるのは難しいと思いますが半分以上は見れますね」


 真由、と呼ばれた女性は真面目にこれからの私達の行動の考察をしていた。


 顎に手を当て、眼鏡をクイっとエアーであげる仕草はやけに似合っているのが印象的だ。


「だよね~あ、そういえば紹介がまだだったね。彼女は第三部隊副隊長、結城真由(ゆうきまゆ)! 私と同期なんだ」


「坂井深紅っす」「松木夜霧です」


 横峰さんの時と同じように挨拶をする。


 横峰さんは結城さんを煽てるように立たせ、結城さんは渋々といった様子で立ち上がり挨拶をした。


「ええ、二人ともよろしくお願いします。では隊長。別の職務があるので私はこれで」


「分かった~」


 結城さんに敬礼をするとクスっと笑い敬礼を返してくれた。


 そしてそのまま食堂を出て行き別の職務へと向かった。


「さて。ここにずっと引き止めても仕方ないからね。あ、そうだ」


「他に何かあるんですか?」


 何かを思い出したような声を出した横峰さんに、私は思わず質問してしまった。


「ううん。まだ行き場所が決まってないなら大浴場に行ってみたら? 私や真由と仲良い別部隊の隊長や副隊長がお風呂に入ってると思うよ」


「「分かりました」」


 横峰さんに敬礼し、食堂を出て地図を見ながら大浴場へと向かう。


 もうすぐで大浴場……という時、大浴場の方から大きな声が聞こえてきた。


「ふははははは!」


「愉快そうな笑い声だね……」


 とても楽しそうな男性の笑い声が聞こえてきた。


 大浴場に近づけば近づくほど声が大きくなる。大浴場に到着すると、その声は男湯の方から聞こえてくることが分かった。


「いってらっしゃい、坂井」


「え~俺一人かよ」


 マジか、と言いたげな坂井。当たり前じゃない。


「私は女なんだから男湯に入れないの。ほら、早く行かないと時間なくなるよ?」


「しゃあぇねなぁ」


 渋々坂井は男湯の暖簾を潜り男湯へ、私は女湯の暖簾を潜り女湯へと向かった。


 風呂場の前、脱衣所は広々としていた。


 鍵がついていないタイプのロッカーとついているタイプのロッカーの二つが左右に分かれている。


 じろじろと脱衣所を観察していると、バスタオルを体に巻いた女性が奥のお風呂に繋がる扉から出てきた。


「まあ~! 新人さんかしら?」


「あ、えっと……そうです」


 裸に近い状態の女性を直視することができず、どぎまぎしながら会話が始まってしまった。


「可愛らしい女の子だわ~女の子は二年ぶりかしら?」


「そうなんですね。紹介が遅れました、松木夜霧です」


 鍵がついていない方のロッカーに行き、着替えている女性に向かい自己紹介をした。


 変わらず視線は定まらないけれど。


阿木穂花(あぎほのか)よ。第二部隊で副隊長をしているわ。あかりちゃんの一つ年下だけれど仲良いのよ~」


「そうなんですね。横峰さんから紹介されてここへ来ました」


「まあ、納得だわ~」


 阿木さんの最初の印象としては全体的にふわふわしている先輩だな、だった。


 けれど、副隊長をしているってことは実力は本物なんだろう。ギャップが凄そうな人だ……


「着替えの邪魔をしてすいません」


 まだ着替えの最中の阿木さんに向かって、頭を下げた。


 同性とはいえ初対面の女に、ほぼ裸の状態を見られて気分のいい人はいないからね。きちんと謝っておかないと。


「全然いいわよ~これから仲良くしましょうね、夜霧ちゃん」


「はい。よろしくお願いします」


 着替え終わった阿木さんはこちらに向かい歩いてきて、私に手を出した。その手を握ると満足そうな顔をし、洗面台のある場所で頭を乾かしだした。


 これ以上話をすることはないだろう。


 私はそのまま、女湯を出た。


「お、女子がもう一人の新人か!」


「あ、えっと……」


 一言言うなら大変そう、だろう。


 女湯の暖簾を潜り、外へ出ると嫌そうな顔をしている坂井が目に入ってきた。


 何事かと思い、坂井をじっくり見ると坂井よりも大柄でがっしりした体格の男性に肩を組まれていた。


 恐らくこの人がさっきの愉快そうな笑い声の人だろう。なんか予想通りかも……いや、予想通りすぎて怖いんだけど。


「名を!」


「あ、失礼しました。松木夜霧です」


「松木というのか! しかし男女で同期というのは珍しい!」


「そ、そうですね……」


 大きな声と気迫に押され、私は縮こまってしまった。


 肩を組まれている坂井の目は死んでおり、この状況から助けてはくれないだろう。


「俺は椎名絨輔(しいなじゅうすけ)だ! 第二部隊の隊長をしている!」


 え、第二部隊の隊長?


 ということは先ほど会った阿木さんが支えているのはこの人なのか。なんか性格真反対だから支えるのとても大変そうなんだけど。阿木さん大丈夫なのかな……なんて、新人の私が心配しても意味ないか。


「椎名隊長。そろそろ離してもらっても……」


「ああ、すまない!」


 椎名さんってなんか全体的に煩いかも。


 体のシルエットもそうだし、顔立ちは良いけれど元気そうなのが一目で分かってしまうし、言動はこれって言ったら失礼だけど物凄い。


 個性豊かなのは警察学校で見てきたけれどそれを超えてくる夜間警察官ってなんか、もうやばい。


 やばいとしか言いようがないなだけど……


「ではオレはここで失礼するよ! 二人とも、精進し給え!」


「「は、はい」」


「ははははは!」


 豪快に、愉快に笑いながら椎名さんは大浴場を去っていった。


 嵐が去っていったようだ。静けさと疲労が半端ない。


「濃い。俺、出会った中で一番濃い男かも……」


「私もそうだと思う」


 ここ、大浴場だけでどっと疲れたのは恐らく気のせいではないだろう。


 はは、何も笑えない……

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