砂漠にて
砂漠の山が、どこまでも連なっている。
夕日を浴びた砂山は、ツゥと延びる一筆書きの尾根を挟んで、明確に光と影を区別させている。
まるで、サルバドールダリの絵を見ているようだ。
美しい景色を見て漏れた嘆息は、徐々に憂鬱なものへ変わっていった。
今夜も、砂の上で夜を明かすことになりそうだ。
砂漠を歩き始めて4日目。
夏よりひどくはないが、疲労がかなり溜まっている。
喉を潤す水分も、もはや頼りない程しか残っていない。
ナハンは、一人で砂漠にいることの不安を感じながら、近くの禿げた岩に身を凭せた。
溜息を吐きながら空を見上げる。
そこには街で見るのとは比較にならない程の、おびただしい数の星が夜空に埋まっている。
あと何回、こんな寂しい夜を過ごさなければならないのだろうか。
彼は鬱々とした頭のまま、考え事をすることにした。
(おかしいな。ベドレムの街で聞いた話では、この辺りに天幕があるというが……。)
ナハンが向かっている聖都ーハヴァノンーは、砂漠をずっと北上し、広大なオリーブ林を突き抜けた場所にある。
天幕は砂漠の旅の終わりを告げるような地点にあり、オリーブや水分が豊富に蓄えられている。
そのため、砂漠越えをする旅人や商人にとって、休息地点としても重宝されているのだ。
(まあ明日中には着くだろう。久しぶりに柔らかい布の上で眠りたいし、それに簡単に聖都について情報収集しておかないと。)
ナハンはそのうち、眠りについた。