暴力衝動と平和主義者7
その言葉に私は止まった。
本来なら遠距離射撃だけで彼女を葬っていただろう。
だが、
「逃げる?」
自分の声が乾いている。だが、
「私が逃げる時は魔族の敗北だ!」
でかいことを言ってしまった。
でも、バカにされて引けるわけがない。
「クリムゾンさん」
「なんだ?」
黒髪の女と言葉を交わす。
「このまま戦えば私は死にます」
知っている。それが現実だからだ。でも、彼女の言葉には続きがあった。
「でも、あなたを確実に殺します」
矛盾してる。でも、本気だろう。
なら、向かい打つしかない。我々は侵略者で彼女は防衛者だ。
だが、困惑する。ただ、一人の人間がなぜここまでするのかと。
「君は何なんだ?」
「ただの人間ですよ」
そんなわけあるかと叫びたい。
そもそも私と殺しあえる時点でおかしいのだ。なのに彼女は生きている。
「やりあいましょう」
また始まる。人間と化け物・・・いや、化け物と異形が激突する。
青子はおかしい! 速度でいうなら遅い。なのに私の動きを上回る。
後ろに回った直後に回られる。そして地面に叩き付けられる。続き打撃もわかるが組み伏せられて思う。
これが人間の力か?
ステータスは並みの人間以下だ。なのに彼女は強い。
だからこそ、今、彼女の顔が目の前にある。
「負けを認めますか?」
はねのけるだけなら簡単だ。だが、彼女は蛇のように絡みつくだろう。だからこそ、
「お前を殺す」
「嬉しいですね」
背骨と肩が軋む。青子に極められているのだろう。正直砕かれても構わないが周りに味方が誰もいない。ふむ、どうするか…