暴力衝動と平和主義者6
何もかもが逆転した。そのまま続くのは頭部への衝撃。ちなみに縦の衝撃と横の衝撃があった。わかりやすく言うなら私は投げ飛ばされて頭から落とされて、そのまま蹴りを入れられたのだろう。普通なら死んでる。でも、私の肉体は人間どころのものじゃない。
だから、
「な、なんでたちあか゜れない・・・・」
言葉すら不明瞭だ。
目の前がくらむ。たかだか人間如きの攻撃にダメージを受けるはずが、
「殺す気で打ち込みましたがその程度ですか」
レベル概念が無い人間にそんなことを言われたのは初めてだ。わたしとて魔族だ。数々の命を奪いレベルというものを上げてきた。しかし、この世界にはその概念が無い。つまりはほとんどの人間がレベル1なのだ。例外がいたとしてもそれこそ例外でしかない。白と黒の鉄馬に乗っていた連中もレベルは低かった。
そうか! 奴のレベルを鑑定しよう。それなら、奴のレベルとスキルがわかる!
「鑑定」
その瞬間、肌が泡立った。
なんだこれは?!
名前
紅 青子
ステータス
HP 10
MP 1
STR 1
DEF 1
DEX 1
MAG 1
LUC 1
スキル
紅一族の呪い
失敗作
欠陥品
殺意衝動
なんだことは?! レベルがなにも上がっていない上にスキルはすべてマイナススキルだ。マイナススキルは場合によっては反転して強い効果を呼ぶときもあるが、あれらは明らかにマイナスでしかない。詳細鑑定をすれば、
紅一族の呪い
血族は血族であり得る限り力を高めあう。血族以外の血が混じれば能力を落とす。
つまり彼女は能力が落ちている状態だ。
失敗作
文字通りなんの意味もない。むしろ、遺伝子操作の失敗で寿命も短い。
予測二十年。
欠陥品
生贄に使えない部品。
なんだこれは?!
異世界とはいえこんなことがあっていいのか?!
とはいえ、彼女の殺意は突き刺さってくる。
こんなゴミみたいなステータスで私を殺しに来ている。そして、ダメージすら与えている。
ちなみに、私のステータスを再確認する。
クリムゾン
LV 100
HP 10000/9800
MP 10000/10000
STR 1000
DFE 1000
DFX 1000
MAG 1000
LUC 1000
スキルは省くが圧倒的なステータスで私にダメージを与えた。同じことを49回すれば私を殺せるということだ。
考えてほしい。ステータスというのは文字通りのものだ。それを覆すことは難しい。なのに彼女はたやすく超えてダメージにした。
それが恐ろしい。
ただ投げただけではない。投げた上で殺しに来たのだ。
しかも、挌上の化け物を殺しに来たのだ。
なんなのだ彼女は!
だが、同じことを49回繰り返す前に私は彼女を葬るだろう。だからこそ、
「大層な力だな、だが・・・」
右頬に衝撃。ダメージはないが直後に左頬を蹴り抜かれる。ほぼ同時に後ろ回しの左かかと蹴りで顔が空を向いた。
「ダメージなんてないと思っていますか?」
その言葉に思わずステータスを展開して言葉をこぼす。
「うそ」
クリムゾン
LV 100
HP 10000/9000
MP 10000/10000
STR 1000
DFE 1000
DFX 1000
MAG 1000
LUC 1000
なんでレベル1の人間がこんなことをできるのか?!
体力だって残ってる。でも、こんなの普通の人間ができることじゃない。
私との攻防で力の差もわかってる。なのに、マイナススキルも持っているのに、なんでこんなことができるのか?!
「何を考えているかわかりませんが、私がしたのはあなたの力を借りただけですよ」
何を言っているのかわからない。でも、言葉は続く。
「合気道って知っていますか? わかりやすく言うと相手の力を借りて投げ飛ばしたり色々する武術です」
知らない。でも、若干は理解する。
「つまりお前は私の力を制してダメージにしたのだな」
「ええ、車は投げ飛ばせませんけど人なら目で追える限りはそうですね」
なるほど、うけたダメージは私自身のものか。理屈だけは理解したな。
とはいえ、これ以上のダメージは避けたいところだ。なら、魔法で・・・
「逃げるんですか?」