1話 中編
私は、焦っていた。
こちらからの呼びかけに、三番機からの応答が無いからだ。
死んだんじゃ無いかと不安がよぎるが、今は敵を追うのが先決だった。
「救急班に連絡しろっ」
二番機にそう命令するが、横から
「もう事後処理班と一緒に向かわせてる。」と
管制室から通信が入った。
「了解。」
そう返事をすると
「安心しろ。希美の心停止はまだ確認されてない。」
少しだけ身が軽くなった気がした。
相手は速い。
こちらの機体では、追いつけないことはわかっていた。
相手との距離は広がる一方で、見失ってもおかしくはなかった。
「増槽を外す。」
そう言って、まだ空になっていない燃料タンクをパージした。
切り離された燃料タンクは、落下していき、地面を数回跳ねた後、車に突っ込んで行った。
二番機もこちらに習い増槽を捨てる。
相手は、こちらが増槽を捨てたのを見ていたらしく、こちら側に向きを変えて接近してくる。
ヤツを捕獲できるなんて思わなかった。
破壊できるかも、怪しかった。
ヤツを捕獲できるなんて思わなかった。
破壊できるかも、怪しかった。
二番機に、ハンドサインで指示を送る。
訓練通りにやれば、ヤツを堕とせるかも知れない。
二番機が敵に突撃して行くのを見つつ敵の側面に回り込む。
敵は、二番機に近づき至近距離からバーニアを浴びせて怯んだところをネットガンを奪い撃ち込んだ。
ほんの一瞬の出来事だったが、近づいてネットガンを撃つには十分の時間だった。
勝ちが目の前に迫っていた。