プロローグ
東京市経済特区渋谷、この昼間は視界に人が入らない事は無い街にも深夜になると静かになるものだ。
そんな街中を颯爽とタクシーが走っていた。
運転手は髭を綺麗に切り揃えた40代ぐらいの男である。
今の彼はとても気分がよかった。
その理由は、助席に置いてある茶封筒が原因だ。
彼は、さっきまで長野にいたのだが、会社に戻ろうとした時に客が舞い込んで来たのであった。
なぜ、タクシーで東京市まで行くのか知りたかったが、いつ家路に着けるかの方が、その時の彼の頭に渦巻いていた。
結局、最後まで客と話すことなく目的地についてしまった。
客は、こちらが料金を言う前に、この茶封筒を渡しスタスタと何処かへ行ってしまった。
運転手は、すぐに茶封筒を開けると万札が束になって入っていた。
紙の帯で綺麗に括られていたので100万あると推測された。
つまり、釣りはいらねえと言う事だろう。
わざと、溜息をついたが、自分のポケットマネーが増えるのは嬉しい限りであった。
以上が、彼が鼻唄まで歌っている理由である。
彼が、上機嫌でいると、前から円柱状の何かが跳ねながらこちらに来るのがわかった。
彼は、目を見張った。
円柱状の何かが跳ねた場所のアスファルトが、少しめくれ上がっていたからだ。
運転手が慌ててハンドルを切ろうとしたが、時既に遅し、タクシーといっしょに最期を迎えてしまった。
ただ、運転手がアルファベットと数字が書いてあると認識したが、死んでしまっては意味のない事かも知れない。
伏線のばら撒き過ぎには、気よつけたいです。
人外と人間との関係を描こうと思っています。多分。