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貴族将校

「王国軍の増強……ですか」


 アンクはオーウェンス城内の軍務庁で王国軍参謀本部との会議の最中であった。


「そうだ。今の王国軍の兵力は7個師団12万人。国土を防衛するためには不足と言わざるを得ない」


 アンクの前に座るのはオーラス・ウェナシア公爵、ミンガス王国軍中将兼参謀副長だ。ていうか連邦軍少佐と地方軍中将って同格なのか?


「しかしオーラス中将、連邦軍の部隊(第128管区戦闘団)も合わせれば防衛部隊は十分に確保できていると思いますが」


「アンク少佐、連邦軍と王国軍はその役割において大きな差があるのです。貴方達連邦軍はアル・ファシル軍の迎撃が主任務で、我々王国軍は国内の治安維持と反乱鎮圧を目的とする。いくら連邦軍の部隊が精強だとしても国内の治安維持にまで部隊を配備しますか?確か第128管区戦闘団は2個師団5万人の兵力だと聞くが、果たしてそこまで手が回るのか私は疑問に思うがね」


 まあ、中将の言いたいことは分かるよ?事実この国壮絶な内戦してるしね。連邦軍は基本国境防衛が主任務だし、連邦軍が地方政府及び地方軍隊の行動に口出しするのは内政不干渉の原則に反するしね。


「中将、私から1つよろしいですか?」


 ユニアが聞く。オーラスは頷いた。


「増強の規模はどのくらいなのでしょうか?」


「参謀本部が検討しているのは1個歩兵師団と1個魔法科師団の増強と国民防衛隊の新設、計4万人の増員だ」


「増員と言う事は徴兵ですか?」


「そうだ、王立士官学校からは3000人程の士官候補生が送られてくるようだ。彼らを指揮官にして3万5000人を市民から徴兵し訓練を施す」


 アンクは聞いた。


「しかし、歩兵師団及び国民防衛隊は徴兵した市民で部隊を編成するとしても魔法科師団は徴兵市民では編成できませんよ」


「その点は心配はしないでくれ給え。ミンガス北部の民兵組織の魔法科部隊を徴用する」


 おいおい、国軍に民兵組織入れて大丈夫なのか?


「しかし、今ミンガスの経済はお世辞にも良いとは言えません。そんな状況で3万5000人もの市民を徴用されれば少なからず経済に影響が出ます!」


「ユニア大尉、君はこの国の王女だ。この国の事が心配なのもよく分かる。……しかし貴女(あなた)は連邦軍の将校だ。この場には王女ではなく、連邦軍大尉として参加しているはずだ。貴女にミンガス王国軍の方針に口出しをする権限はない」


「でもっ……!」


 アンクは立ち上がりかけたユニアの肩を掴んだ。


「ユニア大尉、オーラス中将の言っていることは正しい。……しかし、オーラス中将。彼女の言う事にも一理あります。どうでしょう、無差別徴兵ではなく、志願制にすればそこまで経済にダメージが出ないはず。ご再考願えませんか?」


「……良いでしょう、アンク少佐の提案は一度本部に持ち帰ります。結果は2週間後の5月11日にここで知らせるということで」


「それで結構です。それでは私達は失礼いたします」


 アンクはユニアとコールスを連れ、軍務庁を出た。途端、ユニアがアンクに話しかけた。


「少佐……さっきは申し訳ありませんでした。つい感情的になってしまい……」


「大丈夫だ、大尉。それに君の身分からすれば当たり前の反応だ。オーラス中将も言ってただろ。『この国が心配なのもよく分かる』ってな」


 アンクがそう言うとコールスが耳打ちしてきた。


「少佐、さっきのオーラス中将ですが……」


「どうした?」


「彼は元は連邦軍の将校だったそうです。それも、首都防衛特科師団の副司令官を務めていたそうです」


「首都防衛特科師団の?それは本当か」


 首都防衛特科師団。文字通りカムス連邦の首都オムルスを守備する連邦軍最強の精鋭部隊。


「しかし、なぜそんな高級将校がこの国の国軍に?」


「左遷された………というかクーデターで首都を追われ、この国の国軍に入ったようです。そしてそのクーデターを裏で仕組んだのが……」


「俺の親父か」


「ええ、5年前のアンパーカス・クーデタです。アーガルス・ローウェン行政省長官が首都防衛特科師団を動かし王政に批判的な貴族及び軍司令官を首都から一掃したあのクーデタでオールス中将はオムルスを追われたようです」


 アンクは深くため息を吐いた。


「だからオールス中将は連邦軍を嫌っているのか……」


「少佐は自分を追放した人物の子息だから余計に、ですね」


 今度はユニアが言ってきた。


「全く……ここに来ても親父の呪縛があるとはな」


「上流貴族の子息とはそういう物ですよ、少佐」


「ここにいる3人は皆そうですよね」


 コールスが言う。確かにアンクは連邦公爵、つまりカムス連邦の貴族の中で最も高い爵家の出だし、コールスも連邦侯爵家の出身、ユニアはミンガス王家の出身だ。


「貴族出身の指揮官と言うのは兵士から信用されないらしいですからね。少佐は特に兵士の信頼を得られるようにしないと」


「分かってるよ少尉。さて、そろそろ時間だ。アングル基地に戻るぞ」


「はい」


「了解しました」


 貴族出身の3人の将校は、オーウェンス城を出、アングルに向け出発した。

 ちなみに連邦軍将校と地方軍将校の序列は次の通りです。

連邦軍大佐≒地方軍元帥

連邦軍中佐≒地方軍大将

連邦軍少佐≒地方軍中将

連邦軍准佐≒地方軍少将

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