第2章クッキング部の新入生歓迎会No.1
第2章
クッキング部の新入生歓迎会
次の日、私は朝一番に入部届けを提出した。この日の小樽先生の数学の授業は先生と目が合うたびに、ニヤリと笑うので怖くて泣きそうだった。
昼休み、夏帆ちゃんに入部の話をしようと思ってたけど
「ごめん!今日先輩から呼びだしあってさ、お昼一緒に食べれない!」
と言われてしまったので、ひとりで中庭ででも食べようと思っていたら、また女の子達にキャーキャー言われている楓様が教室にやってきた。
「あかねちゃん!」
楓様は迷う様子もなく私のところにやってきた。
「入部決めてくれたんだってね。ありがとう。」
ダメだ、爽やかな笑顔がイケメンすぎるっ!
「よかったら、今日一緒にお昼食べない?」
ヤダ、キュンっと胸がときめく音がした気がする……。
いろんな女の子達にちょっと冷たい目で見られながら、私は楓様と一緒に中庭に来た。そして隣り合わせに座る。それだけで緊張する・・・!
「今日、部員みんなで顔合わせしようって話になったんだ。放課後家庭科室に来てくれる?」
「あ、はい!分かりました!」
「あ、気にしないで食べていいよ。もしかしてお弁当も手作り?」
「え?まあ、はい」
「ねえ、あかねちゃんさ、もしかして緊張してる?」
図星なことを言われて私はビクッとしてしまった。
「緊張する必要ないのに!同学年なんだし。私のことも名前で呼んで?ね?」
そんなこと言われても……き、緊張する!
「え、なんて呼んだら……楓様?」
「ま、そう呼んでる人もいるみたいだけど……よそよそしくない?」
「じ、じゃあ楓ちゃん……」
なんか似合わないけど!
「じゃあついでに連絡取れた方が良いと思うから、LINEのIDも教えとく」
まさか、みんなの憧れの楓様……じゃなくて楓ちゃんのIDをもらえるなんて!恐れ多い……!でも結局交換した。同じ部員だし良いよね。
「今日部員の人たちとも交換しといたらいいよ。後でグループにも招待しとくね」
「ありがとう。あの、クッキング部の部員は変わった人が多いって聞いたんだけど……」
楓ちゃんはちょっとびっくりしたような顔をして、そして突然笑いだした。
「あかねちゃんの耳にももう入ってるんだ!まぁ、ちょっとねー、曲者ぞろいではあるかな……。男ばっかりだしね」
やっぱりそうなんだ。
「まさか、渋谷先輩みたいな人がいっぱいいるとか……?」
「ハハハッ!さすがにそれは無いけどね!」
と言って笑ってからちょっと表情が暗くなって
「……無い……けどね。」
と呟いた。なんか、意味ありげで逆に怖いんですが……!
「ま、ほんと根は良い人たちばっかりのはずだから」
とも苦笑いしながら言う。
「私はほとんど部活に顔出せてなくて、部長もほとんど来ないし、男子に囲まれることになると思うけど、頑張ってね」
「え!?」
「でもキケンを感じたら、すぐ私を呼んでくれていいから。すぐ助けに行くよ」
「え、そんなに危ないの?」
「まあとりあえず今日会ってみて!」
行きたくなくなってきた……。
その日の放課後。結局夏帆ちゃんと話すこともなくここまで来てしまった。
家庭科教室……!よ、よし。入るぞ。頑張れあかね。ここまで来たんだ。
大きく、吸って~、はいて~。
「てめぇ、何してんだよ」
ものすごい鋭い目つきと冷たい表情。イケメンだけど、怖い。ネクタイの色が上の学年。そして、家庭科教室の中から出てきた人。この人は先輩……?
「あ!あかねちゃん!いらっしゃい!」
奥から楓ちゃんが顔を出している。ちょっとほっとした。
「高松先輩。彼女が今日から新しく入る日向あかねちゃんです」
そう言うと高松先輩はギロッと私をにらんだ。
こ、怖い……!
「へぇ、お前が。部長が気に入ったって言う?」
突然ニヤリと微笑んだ高松先輩。ちょっと寒気がする。
「入れよ。」
そういって高松先輩が私の手をとって引っ張る。そして私をじーっと見つめている。
「部長が気に入ったって言うからさぞかしとんでもねぇ肝っ玉の座ったやつが来るのかと思ったぜ」
まだ目を外さない。私はすっかりすくんでしまった。
「こいつ、俺に腕を掴まれただけで震えてやがる」
「いい加減にしてくださいよ!ちょっと渋谷先輩!」
楓ちゃんが困った顔で渋谷先輩を呼ぶと、先輩は奥の方からひょいっと顔を出した。
「はいはい~ってあれ?」
渋谷先輩が高松先輩の腕をとった。
「女の子を怖がらせるとか、男としてどうなのよ?」
「渋谷のニューコレクションにするつもり?」
「フン、あいにくだけどな、部員に手は出さない主義なんでね」
「へぇ、そう」
なんか、バチバチしてるのが見える……。