第1章あかね、クッキング部に入学してしまうNo.4
渋谷view
あんな純粋そうで可愛い子を逃すなんて惜しいことした。
「楓、余計なことするなよ。」
「先輩こそ。先輩が余計なことするから、彼女怖がって逃げちゃったじゃないですか」
「男なんだから、女という女は愛するべきだと思うけど……」
って、こいつは女だった。くそ、忘れるレベルのイケメン度合いで困るよな。
ピロン♪
LINEがきたらしい。
「げ、部長……」
以下LINEの引用。
どうなった?
可愛い女の子が来たけど逃げられた
女?
ヒロシしばらく部活出入り禁止
ヒロシとか呼ぶな
なんもしてねーよ
なんとかして入部させて
え?
女は嫌がるかと思ったけど、いいの?
嫌いなんて言ったことある?
可愛い子は好き
じゃあこれまでの数々の
嫌がらせはなんなの?
おかげで女の子みんないなくなるじゃん
あれは可愛がってるだけ
とにかく小樽にでも言ってどうにかして
入部しなかったらヒロシ炙るから
写真撮ってるんでしょ、送って
チッ、お見通しかよ。俺は仕方なくさっき盗撮した彼女の写真を送った。長い髪の毛をツインテールに結んで、行儀よく座ってキラキラした目で教室を眺めている。確かにこんなかわいい子、俺としても入ってほしいけどね。
「先輩、部長が惚れたから早く入部させろって言LINE来ました。これはヤバいですね。彼女耐えられると良いけど。」
楓がニヤつきながら言ってくる。ってか俺に送れよ!
あかねview
次の日の昼休み。
「あー!あかね面倒なのに目つけられたね」
「え……」
「渋谷先輩ってとんでもない女ったらしって有名なんだよ。私の友達も何人か手を出されてるんだよね……」
うわぁ、夏帆ちゃんからかなり負のオーラが出てる……。
「でも、その人と楓様しか見てないけど、なんで女の子がやめていくのか分かんなかった」
「あ、部長はいなかったの?」
「え、いなかったけど……」
「女の子達がやめていくのは部長に問題があるの。部長は……」
そこまで夏帆ちゃんが言った時、勢いよく教室のドアが開いた。
ドアを開けたのはかなりいかついハードボイルドな感じのおじさん先生。数学の先生、小樽先生だ。この間、この小樽先生の初授業だったけど、別に怒っているわけでもないのに、その圧倒的な存在感と口調が怖すぎて泣きそうだった。今も教室を見渡してるけど、目つきが怖すぎる!うるさかった教室も一気に静かになってしまった。ピリッと走っている緊張感。
「日向あかねはどこだ?」
唸るような低音ボイスの小樽先生。って、え!?私!?
「あかね、何かしたの?」
夏帆ちゃんが小声で聞いてくる。
「いや、多分何もしてない……」
私が黙っている間にも小樽先生の声は大きくなっていく。
「いねぇのか?」
「あの……私です」
私は恐る恐る立ち上がった。小樽先生は私をじっと見ている。
「お前か。話がある。ついてこい」
そう言って教室を出る先生を慌てて追いかけた。私がちょっと夏帆ちゃんを見ると、夏帆ちゃんが泣きそうな顔で口ががんばれ、と動いているのが見えた。