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15 黒幕の登場なんです3

 雨が降りしきる中、ふらふらと歩くのは魔生物となった英雄

荒野をずるずると足を引きずりながら歩く

刀は、その増えた腕に持っている

三本はオーラブレード、残りは合金で作られた刀

寧々子が持たせたものだった

ゾンビのようなその姿で、千堂神流は考える

理解不能なことに、彼女は思考していた

自分がなぜここにいるのか

何者なのか

命令は絶対

人類は滅ぼす

人々を守らなければ

なんで手がこんなにあるんだろう?


神流自身の思考も混在している

考えている、そのことを生み出した寧々子も知らない

彼女はいまだその意思の中で生きていた


そんな彼女を見つける偵察隊

速やかに組合、学園へと報告した


「歩いています」

「こちらには気づいていません」


「はい、ではこのまま監視を続けます」


それが彼らの最後の言葉となった

一瞬目を話しただけ

その一瞬で

数十キロ離れた場所にいるはずの

能力で神流を見ていたはずの

彼らの首を跳ね飛ばした

一寸のブレもなく全員のをだ

ちぐはぐにばらばらに並んでいる彼らの首はほぼ同時に胴体から離れる

オーラブレードは変幻自在

形状自体は刀以外の形はとれないものの

曲げ伸ばしについてのみ、自由にできる


転がる首を見向きもせず、また神流は歩き出す

虚ろな目で、先を見据える

よだれが、いや、そのような液体が口から垂れる

心臓は動いていない

死体だから



「学長、偵察隊からの定期通信が途絶えました」

「恐らく、すでに」


「そう、ですか・・・」

「死体を回収し次第彼らを手厚く葬ってあげてください」


「はい」


悲しそうな顔のアトラ

人が死ぬ、それを彼女は一番悲しむ

どれほど長く生きようとも、どれほど人の死を体験しようともなれることはなかった


神流は歩く

人の気配を探して

すでにいくつかの街は無くなっていた

誰も止められない

ハンターたちにも甚大な被害が出ている

歴戦の英雄はたった二人

新人の英雄はたった六人

たった、たったの八人

なすすべなく滅ぼされるのかもしれない

かつての英雄に、人間は絶滅させられる


神流はやがてたどり着くだろう

少しずつ、少しずつ

アトラたちのいる街まで近づいてきている

その間にあるすべての街を壊し、人を殺して

近づく

死刑執行人を待つように人々はもはやあきらめていた


そんな時だった

他国からほぼすべてのSランク以上のハンターがアトラのもとに集まってきた


「あなたたち、国の守りは!?」

その数の多さにアトラは驚いた

その中の一人、セリアが話す


「大丈夫ですよアトラ様」

「残ったSランク以上のハンターたちが守りについてくれていますです」


「しかし、それでは天災級が現れたときに」


「すでに民は安全なシェルターに全員避難させてますです」

「組合が必死になって作り出したシェルターですかならね」

「天災級でも落とせないですよ」


紳士のようないで立ちの男、エルビスがすっと前に出る


「我々もあれと戦います」

「あれは明らかに人間を滅ぼさんとする存在でしょう」

「だが、黙って滅ぼされるほど我々も弱くはない」

「必死で抵抗してみますよ」


アトラは感謝する

英雄二人を投入しようとしてはいた

しかし、二人では確実に全滅させられるだろう

それよりも大勢で疲弊させ、八人をとどめとして投入すれば、あるいは勝算があるかもしれない

それでもだめなら、自分が自分の命とこの国と引き換えに倒す

もちろんすべての人を避難させてから


「ありがとうございます、みなさん」

「必ず、勝ちましょう!」


一斉にオオオオ!という雄たけびを上げ、死を覚悟しながら戦いに挑まんとする


アクシア、美汐、詩季は呼ばれる

詩季たちは震えていた

勝てるかどうかもわからない脅威

それにこれから立ち向かうことになったからだ

実のところ、アトラは詩季たち六人に強制はしなかった

それどころか逃げるように言った

まだ若い命を散らせないために

少しでも長く生きてほしいと願って

しかし、詩季たちは即答で断った

英雄たる自負ではない

人を守りたい

その心からである


そんな震える詩季に美汐は語り掛ける


「大丈夫か?詩季」


詩季ナツキ「は、はい」

  「だいじょう、ぶ、です」


震え、おびえている

誰が見てもわかる

それでも


詩季フユノ「私たちには、やれるだけの、守れるだけの力があるんです」

  「だから、私たちは、何としても守ります」


詩季アキナ「怖いです、怖いけど」

  「私たちが戦うことを放棄しちゃったら」

  「守れる人も、守れない気がするから」


詩季ハルナ「私は、正直言うと逃げたい」

  「でも、でも、今まで何もしなかった自分が、何かできたら...」

  「ああもう!私も焼きが回ったのかもね!」

  「あんたたちと死ぬのもいいかなって思っちゃったよ」


ハルナは照れくさそうに頬を掻いた


「死なせないさ」

「お前たちは私たち過去の英雄が死んでも守る」

「ねえさん、それが私たちの、大人の責務だと思うんだ」


それに鷹音が答える


「そうね、美汐」

「私も、あなたと一緒にこの子たちを守りたい」


詩季アキナ「姉さん?」


「いまさら黙っていてもしょうがない」

「私たちは姉妹だ」

「今回の事件の首謀者と思われるリサーチャーとかいう狂人のせいで」

「私の姉、日野鷹音はこのような姿になった」


「私はね、詩季ちゃん」

「一度死にかけたの」

「その時リサーチャーに拾われて魔生物と合成された」

「あ、今は大丈夫よ」

「美汐のおかげで魔生物の細胞はすべて取り除かれたから」


「美汐先生に対する態度が何かおかしいとは思ったけど」

「まさか姉妹、しかも美汐先生の方が妹だったとは」


司が驚きの声をあげるとみんなコクコクとうなずいた


「まぁ、あなたたちは必ず守るわ」

「なんてったってかつて英雄と呼ばれてたんですからね」

「私たちは」

アクシアはドンと胸を叩く


これから向かうは一歩的な殺戮の世界

勝ち目は1%がいいところ

しかし切り札はある

アトラの能力開放だ

それでも20%といったところか

それほどに神災級となった神流の力は強い

それは、攫われたハンターたちの能力も組み込まれているからだ


かつての神災級よりも数段強い

アトラの切り札を持ってすら倒せなければ

人間は滅びる

完結まであと数話?ですかね

エピローグはほかの作品とのつながりもあるので

後々出すつもりです(前作もエピローグは書いてませんのでね)

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