14 さぁ、修行の開始なんです8
組合に戻るとすぐに次なる天災級討伐へと向かうことになった
支部長は険しい顔をしている
どうやらこの組合に三体もの天災級が向かってきているようだ
「人間よりも確実に知能の劣るはずの魔生物が徒党を組んで攻撃を仕掛けに来るか」
「やはり、この騒動は何者かによって費い起こされている可能性が高いな」
「ともあれ、まずこちらに向かってきている天災級を討伐せねばな」
美汐は立ち上がる
「三手に分かれよう」
「私は東、ばあさんは西、詩季は南だ」
詩季「はい」
「ところで詩季ちゃん、あのピンクの髪の子は?」
詩季「は、はぁ、出てきたくないって言ってます」
「めんどくさいそうで...」
「だめよ、あなたたちはその子を引っ張り出せないの?」
詩季「いえ、やったことはないんですが」
「ちょっと二人に言ってやってみます」
そういうと詩季は目をつむる
詩季の髪の色が目まぐるしく変わり、ほどなくして桃色の髪の毛で止まる
眼はたれ目のやる気のなさそうな顔になった詩季
ハルミが表に出てきた
詩季「うへぇ、無理やり出すなんてひどいじゃん」
「つべこべ言わずお前も働け」
「修行にならん!」
美汐に叱咤される
だが全く動じることなく美汐の顔をジーッとみている
「なんだ?何を見ている」
詩季「べつに~、私修行なんてする必要ないと思うんだけど」
「これ以上能力伸びないもん」
やる気が全くない、しかし、その言葉には実感がなぜかこもっている
「それは、一体どういうことだ?」
詩季「もう試したんすよ」
「あたしは他の三人が能力を覚醒させるはるか前」
「美汐先生に出会ったあたりからずっと訓練してたんすよ」
「ずーっと、ずっとね」
「ちゃんと反復して完璧に使いこなしてる」
「だからこそ、これ以上成長しないんですよ」
美汐はそれを聞いて考える
「なるほど、そんなに前から...」
「しかしお前の力は必ずこれから役に立つはずだ」
「それに戦闘訓練などしたことがないだろう?」
「ならば今回やってみるべきだ」
それも一理あるとハルミは思った
他の三人も同意している
なら、ここであの力を試すべきではないのか?
ハルミは少しうずいた
ほんの少しだが心が高鳴る
詩季「わかった、あたし、頑張ってみる」
もはやめんどくさそうな顔はしていない
相変わらずのたれ目ではあったが目に光があった
三人はそれぞれ榊に運ばれ、天災級が向かってくる場所へと先回りした
いや、というよりもただ組合を囲って配置しただけだ
遠目からだが、何かが羽ばたきながら飛んでくるのが見える
リンドブルムと呼ばれる竜だった
それが、三体
スピードはあまり早くない
ハルミはその動きを確実にとらえる
まもなくその巨体が上空へと差し掛かるその時
ハルミは能力を発動した
自分の動きのみを加速させる
その速さは誰の目にもとらえることはできない
当然リンドブルムも
そして、気づかれぬよう背後に回り込むと、リンドブルムの時間を加速させた
その加速させた時間は、老化
瞬く間にしおれ、ミイラ化し、骨になり、ボロボロに朽ち、落ちた
詩季「やっぱり、あたしの考えは正しかったっぽいね」
「狙いを定めて使える時間の加速」
「これならあたしも、戦...」
そこで気づいた
何を言ってるんだ自分は
堕落した人生こそ我が人生だと思っていた
誰かのために自分の時間を割くなんて考えられない
それが自分だったはずだ
他の三人のせいで影響されてきたのかもしれない
誰かの役に立つのも悪くないと
ほどなくして連絡が入る
何の問題もなく他二体のリンドブルムも倒されたことを知った
組合は歓喜に沸いていた
それもそのはず、もし英雄クラスの三人が来ていなければ組合は無くなっていたかもしれない
そうなればヨーロッパは滅びていた
「ありがとうございました」
「美汐さん、アクシアさん、詩季さん」
「あとは我々で処理できるでしょう」
「本当に、ありがとうございました」
深々と頭を下げる支部長
「いえいえ、こちらも役に立ててよかったのですよ」
エヘンとない胸を張るセリア
「なんでお前が偉そうにしてるんだ?」
美汐は突っ込む
「なんとなくですよなんとなく」
ひとまずヨーロッパの危機は去った
一日休憩をするとすぐに次の場所へと向かうため、ヨーロッパに別れを告げた
それから数ヵ月
世界に現れた天災級は美汐たちの活躍と、ハンターたちの頑張りによってなんとか全滅した
その頃には詩季たちも、そして詩季のパーティメンバーたちも強く、たくましくなっていた
歴戦を超えたといってもいい
それほどに彼女たちは成長した
修行なんてほんとは書かなくてもいいんですよ
尺稼ぎ、とは言いませんが
いきなり強いってのも好きなのでそういう方向でもよかったかもしれない
と、少し後悔しています




