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14 さぁ、修行の開始なんです7

「ここらはもともとそんなに魔生物の発生はなかったのです」

「それゆえに大都市を形成していたのですが」


天災級に一瞬にして灰にされた町

もはや生物の影も形も...

いや、影は残っていた

一瞬で焼かれたためか、影の身が焦げ付いて残っていた


「人の、後か...」

「一体どれほどの火で焼かれれば影だけ残して消えるというのだ」


美汐は唇をかむ


「生存者はいないのですか?」


「はい、本当に...」

「本当に一瞬で」

「少し離れた観測所にいたものの証言です」

「突如現れた獣のようなものが輝いたと思ったら街が無くなっていたそうです」

「その彼も、全身に三度のやけどを負って、死亡しました」


どうやら観測所にいたのは支部長の知り合いだったようだ

無地のハンカチを取り出し、涙をぬぐう


「その獣は今どこに?」


「中心部です。街の」

「我より強いものなしとでも言わんばかりに眠っていますよ」


それを聞いて美汐はニヤリと笑った

寝ているのなら好都合だ

奇襲をかけれるから

相手は一瞬で大都市を灰にするほどの熱量を持つ

奇襲で一気に倒し切るのが正解だろう


「それで、魔生物の個体名は?」


「わかりません、新種としか」


「ここにきて新種か」

「何をしてくるかわからん、早々に決めるぞ」


詩季フユノ「はい!」



目的地につくと、大きな獅子のような獣が寝ていた

背中には羽があるその大きさを考えれば重量を支えて飛ぶのは普通は不可能だろう

少し前に戦ったグリフィンもそうだが

あの重量で空をと出るのには理由がある

それは、詩季たち人間が持つ能力と同じような原理だ

自らの力をもって浮かぶのである

これを解明したのもかつてリサーチャーと呼ばれた古賀祢寧々子こがねねねこだった


「私が全力で抑えるから詩季ちゃん、あなたは全力で攻撃しなさい」

「いい一撃で?決めるの」

「出ないと私たちが消し飛ばされるからね」


頷き了解の意を示す詩季

その手にはすでに双銃剣が構えられていた

構えられた銃からはまるですべてを染め上げそうなほどの黒いものが漂っていた

詩季が今まで使ったことのない能力の一つ

闇、といっていいような力

圧倒的すぎるため自ら使わずにいた

それは、街一つ、いや、国一つを消しかねないからだった


制御の方法は覚えた

でも

一抹の不安が詩季の頭をよぎる

制御に失敗し、暴走させてしまえば広範囲が無に帰す

そんな危ない力を本当につかっていいのか?


そんな詩季に合図が下される

迷っている暇はない

やるしか、ないのだ


詩季は構えた銃を向ける


すべてを飲み込む闇、が、まるで食らいつくかのように獅子を飲み込む


詩季ナツキ「うああああああ!!」


ぶるぶると震えだす手と愛銃

銃にひびが入り始める

だんだんとひびは広がる

が、すんでのところで獅子を喰らい終わった闇は消える


詩季は一気に力が抜けて気を失った


「なんだ、今のは...」

「詩季、いったいなにを」


そこでふらりと倒れる詩季を受け止める

木を失った詩季を抱えてひとまず組合へと戻った


今まで見たことのない能力...

胃として使っていたようだが、一体いつから使えた?

なぜ、隠していた

疑問は残るも、今は天災級の殲滅が先だと考え

事態が収束してから聞くことにした


その場の光景を見ていたのはアクシア、美汐、そして転送のため付き添っていた榊だけ

その三人ともが今まで誰も見たことがない能力に驚いた

まるで闇そのもの、危険な力だと誰もが思う


目を覚ました詩季

美汐は彼女に真剣な面持ちで語った


「詩季、いいか、あの力、使うな」


詩季ナツキ「だ、大丈夫ですよ先生、あれ、私の切り札ですし」


「いいから使うな!」


詩季ナツキ「は、はい」


今まで見せたことのない真剣な怒りの表情に詩季は戸惑いつつも了承した



―――――――――――――――――――――――――――――


そんな光景を彼女たちは見ていた

そして、ナツキたちを一つの体に詰めた女神たる観測者は他の姉妹たる観測者に語る

オレンジ色の盾ロール髪にドレスのようないで立ち、三番目のトレーシャと

薄い灰色のポニーテールに映える青い瞳、軍服を着た少女のような姿の四番目のフィーアだ


「フィーアちゃん、この力」


「ええ、姉さま、これは、父様の」


そんな会話にミディアムストレートの黒髪の女性

一番目のアンリと呼ばれる姉妹の代理まとめ役が割って入る


「たしかに、お父様の力の一部を感じます」

「やはり、お父様はもう...」


悲しそうな顔をするアンリ


それを慰めるように四番目のフィーアは言う

「アンリ姉さま、まだそうと決まったわけではありません」

「ノル姉さまが探しているのです」

「必ず、見つかります」


本来のまとめ役、零番目のノルからの定期連絡はすでに途絶えている


それでも、妹たちは信じて待つしかなかった

与えられた自分たちの役割をこなしながら...


「天の門が開かれたことも、何かかかわっている気がします」

「やはり私が」

「いえ、与えられた役目はこなさなければ」

「フィーア、トレーシャ、観測に戻りましょう」

「大丈夫、お父様もノルお姉さまも必ず、戻ってきます」


自分自身に言い聞かせながら代理まとめ役のアンリは職務を全うするために観測点へと戻った


ほか作品とつなげるためのちょっとした話も書きました

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