14 さぁ、修行の開始なんです6
ヒュドラ、多頭の蛇、頭を斬り飛ばせばその傷口からさらに二本の頭が生える
解決策は傷口の焼きつぶし
しかしその対策も巨大すぎるためか潰し切れない
ただいたずらに頭を増やす
「隊長!援軍が来ました!」
「英雄クラスの方々です!」
隊長と呼ばれた男はまるで子供のように目を輝かせた
生きる伝説をその目に見られる、この行き詰った戦闘を打開できる
そう思ったからだろう
「助かった!」
「撤退もやむなしと思ったが、これなら討伐できるかもしれない」
美汐が隊長のもとへとやってくる
その美貌にあっけにとられていると、美汐が口を開いた
「君がここの隊長かい?」
明らかに自分より年下だろう、そう思えるその姿の女性に君といわれむずがゆくなる
「あなたは?」
「しがない教師さ」
教師?なぜそのようなものがここに?
その疑問を打ち消すかのようにアクシアが口を出す
「私がアクシア、こちらは、消滅の霧雨、といえばわかるかしら?」
その言葉を聞いた隊長は目を大きくして驚く
「あなたが、あの!」
「お会いできて光栄です!」
握手を求める隊長を軽くいなして美汐は続ける
「さて、問題のヒュドラだが、状況は?」
「あ、はい、現在交戦中ですが、頭の再生速度が速すぎまして」
「異常です、通常のヒュドラならば十分私たちでも対処できるのですが...」
困った顔は怒られたラブラドール・レトリーバを彷彿とさせる
「そうか、だが私たちなら討伐できるだろう」
「何せこの娘がいるからな」
美汐は詩季の背中をポンと叩く
「失礼ですが、そのこは?」
隊長は訝しげに聞いた
「私たちの弟子、といったところかな」
「すでに英雄クラスの実力はあるぞ」
ドヤァと自慢するかのように通常よりふくよかな胸を張る
「なんと!SSSランクを逸するものがとうとう出たのですか!?」
驚くのも無理はないだろう
かつての七大英雄以来10年以上近しいまでもその域に達するものはいなかったからだ
「それなれば、我々の勝利は確実と思われます」
「では、私たちは討伐に向かわせていただく」
「巻き込まれないようハンターたちを撤退させてもらえるか?」
了解したようにうなずくと、隊長はテレパスの伝令に指令を送ってもらう
「では、お気をつけて」
隊長たちに見送られ、四人はヒュドラ討伐へ向かう
普通のヒュドラ、といっても巨大ではあるが、その通常のモノでも10メートル
しかしやはり天災級は規格外といっていいだろう
50メートル
もはやただの炎による能力では表面を撫でる程度
50メートルという巨躯を包み込み、かつ焼き尽くせるほどの火力でなければ倒せない
美汐の力をもってしてもその再生能力によって無効化されるであろう
だからこその焼きつぶしだ
そして、今の詩季が最大級で放てるのは一つの都市を三度は焼き尽くせるほどの高火力
ヒュドラ最大の天敵だった
「さて、詩季」
「かまわんぞ、思いっきりやれ」
「ここならばそれで問題ないはずだ」
詩季「はい!」
両手を広げる詩季
その手に握る双銃剣に力を込める
構える
そして、放つ
放たれた銃弾は親指の先ほどの大きさしかない
普通に考えればそんなもの攻撃のうちに入らないだろう
その巨躯の前には
しかし、当たった瞬間にわかった
ただの、小さな弾丸ではない
当たった場所から炎は広がり、瞬く間にヒュドラを包む
その豪炎は首位の空気、土を焦がす
いや、土はガラスと化すほどだ
5分もかからなかっただろうか
ヒュドラは巨大な炭となっていた
そして体は崩れだす
遠くからそれを見ていた隊長は思わず拍手を送っていた
口は開き、あっけにとられたといった表情がまさしく当てはまる
「あれが、英雄クラスの力...」
「なるほど、我々ではとてもじゃないが...」
セリアも驚いた
まだ、少女、その少女の圧倒的な力
それを見せられ自分の力の弱さを知る
そこに、詩季たちが戻ってきた
すすけてはいるものの無傷
煤をはらえば何も起こっていないと言っていいほどだ
「あ、ありがとうございました!」
突如帰ってきた英雄たちに畏怖の念と尊敬の念をこめて礼を言う隊長
詩季「あの、けが人はいらっしゃいますか?」
先ほどと違う少女がそこには立っている
「だ、誰だね?どこから入って」
「彼女は詩季ですよ」
「能力ごとに性格と姿が変わるんだ」
あれほどの攻撃力を持ちながらさらに別能力を有しているのか
英雄との次元の違いに改めて驚いた
「怪我人は治療中です」
「大丈夫です、我々には優秀な治療隊がいますので」
詩季「そうですか、よかった」
優しく微笑む詩季の姿にかつての信仰の対象である聖母の姿が重なる
「では次へ行くとしよう」
「いったん組合に戻る」
「では」
隊長に会釈をすると5人は組合へと戻った
「あれが...英雄」
隊長は伝説を見たといううれしさを早く家族に伝えたくなった
今までセリフ部分が多かった気がしたので
描写を多めにしました
読みにくかったら戻しますが
これからはなるべく詳しく書こうと思います




