11 18人で災害級を狩るんです2
話し終えた詩季
何とも言えない空気の中、司が口を開く
「まぁ、あれだね」
「彼女のおかげで僕たちはこうして生きてるわけだ」
「それについては感謝しなきゃ」
「性格は、あれだけど」
それに対して霊花も
「そうだよ、みんなが今こうしてここでおしゃべりできるのも」
「ハルミちゃん?のおかげだよ」
「そうだね~」
みなが口々にハルミに感謝の意を伝える
詩季は心の中でハルミがくすぐったがっているのを感じた
今まで表にも出ず誰にも気づかれていなかったハルミだ
照れるのも当然だろう
しばらくすると鷹音が言う
「よし!討伐に行きましょ!」
「もっと強くなって、もう二度と、詩季さんに悲しい思いをさせないように!」
「「「うん!」」」
組合の受付へと向かう六人
受付嬢がはっとした顔でこちらを見た
「あら、みなさん、ようやく来ていただけましたか」
「?」
「どうしたんですか?」
「実はですね」
「洞窟での調査依頼の件なのですが」
「あなた方のおかげで近くの街を襲撃せんと群れていた大型を一掃できました」
「追加報酬が出てますのでお受け取りください」
詩季「え?そ、そんな、いいですよ」
「僕たちただ報告しただけですよ?」
「いえ、その町から感謝のしるしとして金一封が送られてますので是非受け取ってください」
そういわれ、鷹音が詩季に
「受け取った方がいいですよ」
「街の方の感謝なんですから受け取らないと逆に失礼です」
詩季「そう...」
「じゃぁ、ありがたくいただきますね!」
「はい」
「ではこちらにカードをお願いします」
電子マネーがカードに振り込まれる
その額30万円
詩季「あ、あの、多すぎる気が...」
「その額であってますよ?」
「今回は街が滅ぶレベルでしたので」
「事前に察知できたのは非常に大きいです」
詩季「そう、なんですか」
「やったね~詩季ちゃん~」
詩季「うん、あとでみんなに配分するね」
「ところで、本日はどういったご用件でしょう?」
詩季「あ、はい、討伐依頼を受けようかと」
「討伐ですね」
「Dランクの依頼はこちらからお選びください」
総意ってタブレットを渡す受付嬢
詩季「どれにする?」
Dランクの討伐依頼はかなりあった
以前見たオーク討伐、ホワイトファング討伐などに加え
グランガチと呼ばれる水生獣大型の討伐
なかでも目を引いたのは複数パーティーによる災害級(街を滅ぼすレベル)の討伐だ
災害級といってもピンからキリまである
Dランクはおそらくキリのほう
詩季たちと複数パーティーで挑むなら十分勝てるだろう
討伐対象はマンティコア
人の言葉をまねし、誘い込み、人を食うと言われる大型の魔生物
それだけなら複数で挑む必要はないだろう
Dランク1パーティでも負けはしない相手
しかし、今回確認されたのは異常に巨大な個体だった
場所は東京、すでに異世界の侵食によって森になっているが、近くには街もある
そこは以前は大型など確認されてはいなかったが
ここ数年で異常なほど増えていた
詩季「よし、これにしよう!」
「うん、いいと思うよ」
「そうですね、私もそれでいいと思います」
司とハクラが同意した
それに続いてみんなも同意する
詩季「では、これを受けますわね」
「日にちは...明日となってますけど」
「大丈夫です?」
みんな頷く
詩季「では、これをお願いします」
「はい、では登録いたしますのでしばらくお待ちください」
「・・・」
「登録完了しました」
「規定人数には達していますので」
「明日の朝9時にこちらの待合い場にお越しください」
「合同討伐依頼の場合はタブレットで別パーティの名前や顔、能力が確認できますので」
「参考になさってください」
「また、簡易SNSでのやり取りも可能です」
「こちらもご利用になられると便利ですよ」
詩季「はい、ありがとうございます」
依頼を受けた六人は明日に備えるため、準備をしに武器屋などがある商店街へと向かった
詩季「明日には間に合わないだろうけど」
「武器を新調しよう」
「今の武器、まだ学園仕様の奴だしね」
「そうだね、4年前の最新式も今はだいぶ古いモデルだからね」
「ハクラちゃんのはともかく僕らのは変えないと」
「そうですね、私のは特注品で一点ものですから」
「代えがないですので」
ハクラの武器は研究員兼Sランクハンターであった両親から受け継いだもの
意志によって形を変える武器
十数年前様々な形に変質する鉱物でできた体を持つ魔生物
その鉱物を素材として作られたものだ
その魔生物はそれ以来見つかっていないため、作られた武器もハクラが持つ一点だけだった
詩季「えーっと、武器屋、武器屋」
「あ、あれかな?」
大きな店構え、ショーウィンドーに並ぶ様々な武器が目に入る
「へー、あなたの能力に合ったものを作りますって書いてある」
「入ってみよう」
目を輝かせて真っ先に入る司
「いらっしゃいませ」
「武器購入ですか?作成ですか?」
「学園卒業生なら1割引きで提供していますよ」
「あ、学園卒業生です」
司はそう言って証明カードを見せる
それに習って5人も見せた
「はい、ご提示ありがとうございます」
「あの、能力に合った武器を作成しますとあったんですが」
「はい、作成依頼ですね」
「ここは学園の製造機関、研究機関の卒業生たちが武器を制作してますので」
「学園で渡されたもののように各自の能力に合ったものが提供できるんです」
詩季「おお、それはすごい」
「それじゃぁ、作ってもらおうよみんな」
「あ、予算は各自10万くらいなんですけど」
「どうですか?」
「そうですね、大きさにもよりますが、相場で大体6万~7万くらいですので」
「大丈夫ですよ」
5人は安堵した
「じゃぁ、お願いします」
「はい、ではこちらの紙に詳しい能力の説明をご記入ください」
「あと、ご希望の武器形態があればそちらもお願いします」
用紙に記入し始める5人
「そちらのお客様は、作成はいかがいたしましょう?」
と、店員がハクラに言う
「あ、私はこれがあるので」
ハクラは持っていた刀を見せる
真っ白な刀身に金の装飾、イメージを反映させる赤い玉
それを見て店員は感嘆の声をあげる
「おお!それはまさしく!」
「Sランクハンター鬼ヶ島さんの!」
「ということは、あなたは」
「はい、娘です」
「そうですかそうですか」
「以前わたくし岡山にいたとき助けていただいたんですよ」
「とても、お強い方たちでした...」
「はい、自慢の、両親です」
Sランクハンター鬼ヶ島夫妻は有名で、その名は世間に認知されていた
故人となった今でも西では英雄扱いだ
「なるほどなるほど」
「そちらの刀は当時の研究の髄を集結させて作られました」
「できた刀は素材となった天災級の魔生物、それを討ち果たした鬼ヶ島夫妻に贈られた」
「死して今その刀は娘さんの手にある」
「これほどうれしいことはありません」
「あれ?ということはもしかして」
「はい、これを作り出したのはわたくしがいた研究室です」
「以前はそこで室長をやっていましたが」
「岡山が壊滅してからは東京に移り、研究をしていました」
「しかし、数年前、鬼ヶ島さんたちのようなハンターさんたちを何か手伝えることはないかと思い」
「この店を作りました」
「そう、だったんですか」
「あの、最高の刀を、ありがとうございます!」
頭を下げるハクラ
「いえ、わたくしの方こそ、使っていただいてありがとうございます」
「研究員、いや、職人冥利につきますよ」
二人で笑いあっていると5人がどうやら用紙を書き終えたようだった
「はい、制作には一週間ほどかかりますので」
「できましたらお電話いたしますね」
「料金は取りに来られたときにお願いいたします」
「はい」
帰路へとつく六人
その日は早めに就寝した
次の日、予定時刻の30分前に集合場所へと向かう
すでに集合場所にはメンバーがいた
タブレットで確認してはいたが、見知った顔ばかり
同じクラスの男ばかりのパーティーと
別クラスだが学年は同じ男女混合の攻撃系能力のパーティだった
「お、もう来たのか、みんな早いな~」
男ばかりのパーティのリーダー江藤影郎が言った
彼の能力は影から影へと移動できる一種のテレポート能力だが
影の中を移動するのでどこに移動したのか見えないという利点がある
武器は小太刀、暗殺に向いている能力だったが
本人が卑怯を嫌うため、魔生物相手でも正々堂々を貫いてしまう
「あちきたちが一番だけどね~い」
と、男女混合チームのリーダー要香那実が言う
彼女の能力はパイロキネシスによる炎
単純な攻撃力だけなら学園でも随一だったが
手加減ができず、周囲を焼き尽くすこともしばしばあった
卒業の少し前にようやく手加減のコツを覚えたため、今は使いこなして大いに活躍している
武器はフレアガンランス
突き刺すと炎が噴き出す仕組みだ
「全員集まったみたいだね~い」
「ちょっと早いけど、いこっかねい」
香那実の一言に全員は同意し、すぐに現場へと向かうためテレポーターのもとへ向かった
いろいろ書きたくて最近長いかもです




