11 18人で災害級を狩るんです1
あの時のことは誰も覚えていない
詩季以外は...
自分たちがなすすべなく殺されたというのに
彼女たちは何事もなかったかのように日常を過ごす
自分たちは、覚えている
その恐怖、死の恐怖というものを
あの時確実に覚悟した死
事故で突如として奪われた覚悟なき死とはまるで違うあの恐怖
思い出すだけでもからだが震える
もう一度...戦えるだろうか?
敵と対峙したとき、恐怖が体を支配しないだろうか?
あの日からずっと考えていた
そのせいで次の依頼にも行けないでいた
そんな詩季に霊花が話しかけてきた
「ねぇ、詩季ちゃん大丈夫?」
「調査依頼から帰ってからへんだよ?」
「何か考えてると思ったら震えだすし」
「私たち見ては泣きそうになるし」
詩季「それは...」
「いえ、何でもないですわ」
「心配してくれてありがとう」
「何でもないって、そんなわけないじゃない」
「ねぇ、何か悩み事があるなら教えてよ」
詩季「実は...」
詩季「だめですわ!ナツキ!」
詩季「フユノちゃん!」
「話そう、みんなに」
詩季「で、でも」
詩季「大丈夫だよ」
「みんななら、大丈夫だよ」
詩季「そう、ですわね」
「そうだよ、私たち、友達だもん」
「どんなことでも、私たち、受け止めるから」
「話して」
詩季はコクリとうなずく
「みんな、呼んでくるね」
「部屋で待ってて」
詩季「わかった」
詩季は部屋に戻り、5人を待った
しばらくすると5人が部屋に戻ってきた
「なに?話って」
「なんだろ~、面白い話~?」
「その顔から察するに、何か悪いこと、ですか?」
ハクラの的を射た発言に少しぎょっとする詩季
詩季「そう、これから話すこと」
「これは、あの時、何が起こったかってこと」
「詩季さんが突然帰ろうと言い出してすぐに討伐隊を派遣するように進言したことですね」
「あの時は、何を聞いても答えてくれなかったですが」
詩季「ごめんね、鷹音ちゃん」
「あの時の私は、話せる状態じゃなかったの」
「みんなが、死んじゃうのを見たから」
「僕たちが!?」
「それは、夢で?」
詩季「ううん、違うの、あれは、現実」
「でも、私たちは死んでいないです」
「ということは、未来予知?ということですか?」
詩季「違うの、でも、それと近いかも」
「私は、未来を体験したから」
5人は分からないという風だ
詩季「わからない、よね」
「私もまだ混乱してるもの」
フゥーと息を吐く
詩季「でも、事実」
「あの時私たちは洞窟に入り、調査をした」
「何事もなく調査は終わって」
「外に出た時だった」
「100体もの大型野獣種や甲虫種が私たちを取り囲んでいたの」
「100体!?」
「そんな数の群れ、人型種ならまだしも」
「野獣種や甲虫種の混合した大型の群れ聞いたことないよ!」
詩季「私たちは洞窟内に逃げて、救援を呼んだ」
「でも、多勢に無勢で」
「救援が来る前に私以外、くっうっ、死んじゃって」
泣きながら話す詩季
詩季「私ももうだめかと思ったその時」
「頭の中で声がしたの」
「私の中にいるナツキちゃんやフユノちゃんとも違う声」
「もう一人の、4人目の、私」
「ハルミちゃん、起きてる?」
その質問に答えるかのように
赤かった詩季の髪が桃色に染まる
その目つきは気だるそうになり、何を考えているのか分からない
という印象を与えた
詩季「紹介に、預かりましたー」
「ハルミでーす、イエーイ」
まったく感情のこもっていない声
「え?だ、誰?」
「詩季ちゃん?」
詩季「そうだよ」
「私もあの子らと一緒」
「ずっと気づかれないように寝てたの」
「寝、てた?」
詩季「めんどくさいからね~」
「適当に外の世界見ながら寝てる方が楽じゃん」
「まぁ今回は私も死にそうだったから手を貸しただけだけどね」
「基本、めんどくさいことやらないから」
「じゃ、また寝るわ」
「おやすみー」
引っ込もうとするハルミを呼び止める鷹音
「待ってください」
詩季「なーにー?」
「あなたの、能力は?」
「どうやって私たちを生き返らせたんです?」
詩季「君さー、聞いてなかったのさっき」
「未来を体験したってアキナが言ってたでしょ?」
「ええ、聞いてました」
「でも、それが一体どういうことなのか」
「わからなくて」
詩季「そっかー、説明不足だったかー、アチャーだなー」
「単純に言うと、時間操作だよ」
「君たちが洞窟に入る前の時間まで戻したってことー」
「おわかり?」
「時間、操作?」
「そんな能力、本当にあるんですか?」
「今まで見たことも聞いたこともn」
そう言いかけて鷹音は止まった
自分の手の中になぜかボールペンが握られていた
「え?これは、なんでこんなものを」
詩季「体験してもらった方が早いからね」
「時間を止めて持たせた」
「時間を止める...」
「そんなことまで」
詩季「止めれる時間は5分?止めるのに5分って表現もあれだけど」
「体感で5分位かなってこと」
「戻せる時間は2時間が限度」
「進めれる時間はわかんない」
「ためしたことないからね」
「もういい?あたし眠いんだけど」
「は、はい」
「ありがとう、ございました」
一同は驚愕、その表情をだすので精いっぱいだった
仲間に理解してもらっておいた方が絡ませやすいので打ち明けさせました




