10 卒業、そして始まるのはハンターライフなんです3
洞窟が見えてきた
六人は木陰で依頼を確認した
司はタブレット端末を取り出す
「えっと、洞窟の周辺で複数の大型魔生物が群れているのが目撃された」
「洞窟内でコロニーが形成されている恐れがある」
「なるほど、数年前の大阪で確認されたコロニーみたいなものがここにもあるかもってことか」
「Aランク以上のハンターは複数パーティでコロニー壊滅もしてほしいっと」
「私たちはDランクなので調査のみってことですね」
詩季「そうですわね」
「では、調査を開始します」
「才華さん、シールドをお願いします」
「うん~、わかった~」
才華の能力は成長していた
以前は自分だけにしか張れなかったシールドを味方全体に張れるようになっていた
詩季「わたくしも身体強化をかけますわ」
詩季は筋力強化、五感強化を全員にかける
詩季「視力も強化されてますから暗がりでも見えるはずですわ」
「ありがとう詩季ちゃん」
六人はそろって洞窟内へと入っていった
意外と広い洞窟内をしばらく進むと開けた部屋に出た
「あ、あれ!」
ハクラが何かを発見した
慌てて岩陰に隠れる六人
部屋の中心部に三匹の大型魔生物がいた
「こんなにすぐいるとは思ってもみなかったよ」
そういいながら司はタブレットで写真を撮り始めた
タブレットに魔生物たちの情報が表示される
「ふむふむ、あれは大型のタイラントビートル、グランドボア、サスカッチエイプだね」
「どれもランクはDか」
「でも、雪山にしかいないサスカッチエイプがどうしてここに?」
「寒がりな~やつも~いるんじゃない~?」
「それは...わからないけど」
「まぁいいや」
詩季「あの三匹、倒せないことはありませんが」
「仲間を呼ばれると厄介ですわね」
「見つからないように隠れて進みましょう」
「了解」
六人は岩陰に隠れながら先に進む
奥へと続く道は先ほどよりは狭かったが、それでも大型が通るには十分だった
しばらく進むとまた開けた部屋に行き当たる
部屋を見まわしハクラが気づく
「あれ?ここ、行き止まりです」
「ほんとだ、それに、何もいない」
「通常の魔生物すらいないね」
詩季「じゃぁあの三匹は、ただ同じ場所にいただけ?」
「でも、まったく種類の違う三匹が固まって行動するのはどう考えても、おかしいですわ」
「うーん、これ以上は僕たちにはわからないよ」
「このことを報告しよう」
詩季「そうですわね」
「僕その前にここの写真撮ってくるよ」
そういうと司は部屋の写真をタブレットで取り始めた
「おまたせ、行こう」
六人は出口へと戻っていった
出口にたどり着く六人
外からの陽光が包み込む
まぶしい光に目が慣れ、外の光景が映り始める
そこには
ありえないほどの大型魔生物が洞窟を取り囲み立っていた
「え?なに?これ...」
数はおよそ100体
今の六人では勝てるはずもない
Aクラスハンターでも苦労する数だった
詩季「みんな!洞窟に戻って!」
「司ちゃん!救援を要請して!」
「わかった!」
司はタブレットの救援要請を押す
六人は洞窟の広場へと戻った
そのあとをぞろぞろと大型が迫ってくる
詩季「っく、やるしかない!」
「才華ちゃん!シールドお願い!」
「フユノ!」
詩季「わかりましてよ!」
「身体能力強化!五感強化!筋力増強!」
身体強化を最高潮まで上げる詩季
詩季「行くよみんな!」
「構えて!」
詩季は双銃剣を、司はダガーを、ハクラは二刀剣を、才華は盾を、霊花はくぎと人形を
鷹音は銃式槍をそれぞれ構えた
ハクラが能力を解放し、鬼になる
以前のように暴走することはない
ハクラのままで舞いを舞い始めた
大型に剣がめり込む、切れずに、めり込んだ
「剣が、抜けない!」
動きを止められたハクラに大型の攻撃が襲い掛かる
ボキボキと体中の骨を粉砕され、壁に叩きつけられるハクラ
詩季「ハクラちゃん!」
見るからにこと切れているハクラ
次に襲われたのは霊花だった
一騎打ちでの攻撃方法を持たない霊花は恐怖にすくみ、その股布を温かいものが濡らす
あっさりと上下に切り裂かれ、上半身が宙を舞い、落ちた
「れ、霊花ちゃん...」
「そんな、どうして」
絶望感に苛まれ、動きを止めた才華
「危ない!才華ちゃん!」
その声も聞こえたかどうかわからない
それほどあっさり才華は喰いつかれ、足だけが地面に転がった
「よくも!みんなを!」
司はテレポートで背後をとり、数体の大型を倒したが、多勢に無勢
すぐに取り囲まれ、魔生物が包囲を解いた時には
四肢をもがれた虫のようになっていた
生きてはいたものの、おびただしい出血がもう長くないことを物語っていた
すぐに鷹音は能力で大型を消し飛ばし、切り刻んでいく
「この!この!みんなを!返して!」
泣き叫ぶその頭蓋を猿型の魔生物が投げた岩が砕いた
詩季はあまりの惨劇に動けずにいた
もうすでに、目の前まで迫っていた魔生物の猛攻
死を覚悟した
(あぁ、もうここで、死んじゃうんだ)
(みんな、ごめんね)
(すぐに、私たちも)
そう思った時、心で声がした
??? (仕方ないなぁ)
(これは貸しにしてあげる)
(私は、めんどくさがりなんだ)
詩季 (だ、だれ!?)
??? (なにさ、ずっと一緒にいたのに気付いてなかったの?)
(あ、そっか、私寝てたから気づかないのも無理ないか)
(まぁいいや、いくよ!)
その瞬間、何もかもが、巻き戻っていく
今まさに手を伸ばしていた魔生物も
殺され地に付したみんなも
すべてが、戻る
詩季「どういうこと?なの...」
今までのことは嘘だったのか?夢?
今、詩季は、洞窟の前の木陰にいた
「どうしたの?詩季ちゃん」
心配そうに顔をのぞき込む霊花
詩季「霊花、ちゃん?」
「あれ?なんで?」
「みんな、生きて...」
「ん~?なにいってるの~?」
「あ~、わかった~」
「詩季ちゃん、寝てたでしょ~」
「だめだよ~、任務中に寝ちゃ~」
「ど、どうしたの?詩季ちゃん」
司が驚きの声をあげた
詩季「え?」
涙腺からとめどなくあふれる涙
「え?ど、どうしたんです!?」
ハクラも驚いていた
詩季「わ、わかんない」
「でも、ここから逃げなきゃ!」
「え?どういうこと!?」
詩季「ごめん司ちゃん!説明はあと!」
「すぐにテレポーターを呼んで!」
「わ、わかった!」
スイッチを押し、テレポーターを呼び出す
「どうされました!?」
「今しがた送ったばかりですよ?」
詩季「ここ、危険です!」
「100体以上の大型が周辺にひそんでいます!」
一同は驚愕した
とりあえず報告のために帰還する
今しがた起こったことは、たぶん夢ではない
一体何が起こったのか詩季にはわからない
帰還し、報告の後、詩季だけで部屋で会話を始めた
詩季「あの時聞こえた声、私たちの体、心で聞こえた」
「体を使っていないときの私たちが話し合うときみたいでしたわ」
詩季「うん、そんな感じだった」
詩季「もしかして、もう一人、いるの?」
詩季「16年も一緒にいて一度も顔を出さなかったってことですの!?」
詩季「そうなのかも」
「でも、だとしたら、一体だれが...」
詩季「あの時、この体になる前のトラック事故」
「轢かれたのは三人じゃなかった?」
「もう一人、巻き込まれてたのかも」
詩季「ちょっと!いるんですの?」
「いるなら顔くらい出しなさい!」
...
沈黙、反応はない
かに思われた
???「やっと気づいたの?」
何かが体の主導権を握る
詩季 (だれだよ、あんた)
???「私?私はハルミ」
詩季 (え?ハルミちゃんって、確か)
(学校に全然来てなかったこだよ)
詩季「そうそう、私はさ、何事もめんどくさがりでねぇ」
「あの日はネットでも売ってなかったPCパーツを買うために仕方なく外に出てたんだ」
「そしたら運悪くさ、あんたたちと一緒に死んだってわけよ」
詩季 (さっきさ、私たち以外、みんな死んだ?)
(あれは夢なんかじゃなかった)
(あんたの能力、だよな?)
詩季「そうだよぉ、私のはさ、どうやら時間?に関することみたいなんだぁ」
「あんたたちが寝てる間に体使っていくらか試してたんだぁ」
「そうさね、例えば」
「止める、戻すはできるねぇ」
「進める、は使ったことないけど、多分できる」
詩季 (す、すごい)
(あ、そだハルミちゃん)
(ありがとうね!みんなを助けてくれて!)
(これからみんなで頑張ろうね!)
詩季「...やだよ」
詩季 (え?)
詩季「さっきも言ったろう?私はさ、めんどくさがりなんだ」
「一人が好きなんだ」
「何の因果かあんたらと引っ付いちまったけど」
「基本わたしは何もしない」
詩季 (で、でも、さっき助けてくれたじゃない!)
詩季「そりゃぁ命がかかってたからねぇ」
「あの年で死んじゃったんだ」
「こんなにあっさりとまた死にたくないからね」
「じゃ、私はまた寝るから」
「あとはあんたらで勝手にやってくれ」
「あ、でも一応、ちょっとくらいは手を貸したげるよ」
「本当に危なそうなときだけね」
「長年一緒にいた中だからね」
それだけ言うとハルミはまた引っ込んでしまった
詩季「なんて自分勝手な!」
詩季「ほんとですわ!」
「ああもう!イライラしますわ!」
詩季「でも、実際、あいつがいなきゃあたしらはあそこで死んでた」
「そこだけは、感謝、かな?」
詩季「きっとうまくやって行けるよ」
「だって、助けてくれた時」
「ハルミちゃん、心の底で、みんなを助けなきゃって思ってたもん」
「二人だって感じたでしょ?」
詩季(フユノ、ナツキ)「そ、それは、確かに」
詩季「きっとピンチになったら助けてくれるよ」
「でも、私たちもっと強くなって、ハルミちゃんが安心できるようにならなきゃ!」
詩季「そうだな」
詩季「ですわね」
新しい仲間、ハルミを体に感じ、三人は部屋へと戻った
どうしてももう一人をここで出しておきたかったので
ちょっと長くなりました




