8 大阪の異変は相当やばかったんです2
荒野に燦然とたたずむ巨大な岩石群、そして、岩の露出した山
その山肌にぽっかりと口を開ける洞窟があった
その穴からは絶えず大型の魔生物が出入りしている
アリのような生体を持っていると聞いていたが、その姿は多種多様だった
「どうやら女王は複数種の魔生物を生み出せるようですね」
「それにあの数...」
「5人だけでは対処できなかったはずです」
「みなさん、これよりコロニーへと向かいます」
「最優先すべきは行方不明者の救出です」
「調査しながら捜索しましょう」
「それと、女王を発見しても決して接触しないように」
「では、透さん、お願いします」
「はい!」
透と呼ばれた青年は透明化を調査隊全員に展開した
彼は要透透明化の能力を持つ新人教師だ
彼の能力の特出すべき点はにおいや気配までも消してしまうことだろう
「よし、ではいくとしましょう」
「くれぐれも、気を付けてください」
調査団は魔生物の横をすり抜け、奥へと侵入していった
「やはり、道が分かれていますね」
「ここからは二手に分かれましょう」
「何かあれば連絡をお願いします」
調査隊は榊の班と大阪の調査隊リーダーである阿部千里の班に分かれた
彼女は目を閉じるだけで数キロ四方の情報を一瞬で把握できるが
閉鎖空間だとその把握距離は数メートル四方と格段に落ちてしまう
いざというときのため、戦闘力のない千里の側に透がついていくことになった
「阿部さん、これを」
「これは、銃ですか?」
「えぇ、最近開発されたばかりのショックガンです」
「手のひらサイズですが大型でも気絶させるほどの威力があります」
「護身用にどうぞ」
「ありがとうございます」
「では、私は左へ向かいます」
「どちらも数メートル先に大型がいますのでお気をつけて」
「了解です」
相変わらず大型はひっきりなしにうごめいているが
こちらに気づく様子は全くなかった
榊のほうの道はしばらく行くと開けた場所へとつながった
「ふむ、ここはどうやら食糧庫、ですかね」
「動物が生きたまま備蓄されている?」
「麻痺性の毒物を撃たれているようですね」
そこで、動物たちの中に人間が紛れているのを見つけた
「む、あれは...」
近づいてみると、行方不明になっていた七海と月だった
気を失っているようだが無事なようだ
調査班の一人が医療キットを取り出し、二人から血液を採取する
分析し、抗体をつくるためだ
「ほぉ、最新鋭の医療器具ですか」
「はい、これで毒物を分析すると数分で交代を作り出してくれるんです」
抗体ができると二人に投与した
しばらくすると二人は目を覚ます
「大丈夫ですか?」
「っは!さ、榊さん!」
「私たちは大丈夫です!」
「でも、空が!」
「落ち着いてください」
「雨宮さんがどうしたんです?」
「空は...美汐先生に、連れていかれました」
「!」
「日野先生、ですか?」
「はい!あの顔は間違いなく美汐先生です!」
「でも、その、様子がおかしいというか」
「いえ、なんというか、あれは人間じゃなかった?」
「顔は美汐先生だと思います」
「姿も、人間でした」
「でも、雰囲気というか、醸し出すオーラが、魔生物のそれに似ていました」
「そうですか...」
「それで、彼はどこに連れていかれたかわかりますか?」
「はい、ここに連れてこられる前の分かれ道」
「その左側です」
「ふむ」
「あなたは彼らと戻ってゆっくり体を休めてください」
「抗体を撃ったとはいえまだ万全でないはずですからね」
「はい」
「あの!先生!」
「空を、どうか空をよろしくお願いします!」
「ええ」
「では5名は彼らを護衛しながら戻ってください」
「私たちは引き続き探索をします」
「とりあえず阿部さんたちと合流しましょう」
「まだ接触していなければいいのですが」
来た道を戻り、分かれ道を左に進みなおす榊達
透明化の制限時間は残り35分
ナットウキナーゼは75度以上で死にますよ




