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おしまいの町に灯りが灯る  作者: 川名真季
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供述と発見の八日目

「横沢真央さんを玄関前で待ち伏せしました。それから横沢さんが帰って来たところを鉄の板を入れたカバンで三回ほど殴りました。横沢さんの意識がなくなったことを確認すると、横沢さんを玄関前に放置して横沢さんのカバンから財布を盗み、そのまま逃げました。財布は一万円札一枚とと五千円札一枚、それと小銭とSuicaを抜き取ると生ゴミを入れた小さいスーパーの白い袋の中に入れて口を縛り、さらに紙ゴミの入った大きな透明な袋の中に入れて生ゴミの日に捨てました」


横沢真央の事件が起こった当日の状況について、セールスマン風の二人組、世田谷区在住の澤野卓人さわの たくと四十四歳と港区在住の松島恵介《まつしま けいすけ》四十一歳の供述した内容は、ほぼこのようなものだった。警察は横沢家に入って横沢真央を塩素ガスを充満させたトイレに閉じ込めたのではないかと問い詰めたが、彼らからはそれ以上のことはやっていないという答えが帰ってくるだけだった。そこで何故横沢真央を狙ったかを問いただすと、彼らは一様に「頼まれたから」と答えた。二人ともTwitterをやっているのだが、ある日それぞれのTwitterのアカウントに「現在の必殺仕事人になって弱い人を助けませんか。お金もがっぽり稼げます。もしやる気になられたらこちらのアカウントにダイレクトメールをください」というメッセージが書かれたダイレクトメールが届いた。二人とも何の気なしに返信すると「私の彼を誘惑する悪い人妻を懲らしめてください」というメッセージと共に横沢真央の写真と彼女が四時前に家に帰るのでそのとき頭を殴って気絶させて欲しいというお願い事、お願い事を叶えてくれたら三百万円支払う事等が書かれたダイレクトメールが届いた。二人は事情が違えど、非正規派遣であるため生活が苦しく、三百万円は喉から手が出るほど欲しかった。そこで彼ら二人はダイレクトメールで指定された日に三戸里市に行き、即席のコンビで横沢真央を襲った。


警察では二人のこの供述を疑った。Twitterのアカウントなどいくらでも偽造できると警察では考えているため、自作自演を疑ったのだ。しかし、今のところ彼らのTwitterに残されたダイレクトメールが自作自演であることを証明する証拠はなく、彼らがダイレクトメールをもらったというアカウントnanaminchan225を調べてみたが、既にこのアカウントは削除されていた。しかし、彼らの言うことが全くの嘘だという確実な証拠も今のところ見つかっていない。


「彼らの言うことを信じますか」


午後四時半過ぎ、朝霞台探偵事務所で学は時哉に訊ねた。


「彼らは横沢真央さんを襲うように依頼したnanaminchan225から彼らの銀行口座に三百万円が振り込まれたと主張しているようだね。彼らの通帳を調べれば、その記録が出てくるだろう。ただその振込も彼らの自作自演ではないとは言い切れない。例えば、彼らは横沢さんの財布を盗んでいる。同じように他の人の財布を盗んで得たお金を自分の銀行口座に振り込んだとも考えられる。しかし、マスコミには公表されていない横沢さんの財布が盗まれていたことを彼らが自白したことで彼らの自白の信憑性が高いことも事実だ」


「彼らの主張が正しければ、横沢さん殺しに新たな動機が見つかったということですよね」


「確かにそうだが、あまりにも唐突すぎるという感じは否めない。最もnanaminchan225の言うような出来事が本当にあったのか、もう一度職場の同僚や近隣住民に確かめてみなくてはならないだろう」




そんなことを話しているとき、テレビ画面の上部に緊急速報の文字が出てきた。


「三戸里市で失踪した女性、空き家の一室で縛られた状態で見つかる」


「先生! これは!」


学はテレビ画面を食い入るように見つめる。


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