表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マッチョ

作者: うどん卿

 あれは俺がまだ高2の頃だった。確か秋だったかな。まだ夏の暑さを感じさせながらも少々涼しくなってきた頃だったと記憶している。モミジはまだだったなあ。まあ、季節の話はどうでもいいんだ。まだ俺が若かったってことをおさえといてくれ。

 当時、俺はマッチョに憧れてたんだ。小3ぐらいからかな。テレビでみたマッチョを見て「俺も将来、こんなマッチョになりたい」幼いながらにそう思ったものさ。

 んで、まあ、そう。話は高2に戻るわけだけど、「そろそろ将来について真剣に考えなきゃいけない頃だな」と思ったんだ。そこで家族会議を開催したわけだ。勇気を振り絞って言ってやったんだ。

「かあちゃん! 俺、将来マッチョになりたいんだ!」

 まあ「反対されるだろうな」とは思ってたんだけど、でもやっぱ心の隅の方では自分を応援してくれるんじゃないかって思ってもいたんだと思う。だから、かあちゃんが血相を変えて怒り出した時には心の底からショックだったんだ。「マッチョなんて安定してない職業についてどうするの! 普通の生活すら送れないかもしれないじゃない! それにプロマッチョには一握りしかなれないのよ! そんな簡単じゃないのよ!」ってね色々言われたよ。とうちゃんもかあちゃんにつられて激怒だったよ。そうなってくると俺だってひいてはいられない。なにせホントにマッチョになりたかったんだからね。俺も怒鳴り散らしてやったさ。思いつく限りの暴言を浴びせかけて、感情の赴くままにダンベル片手に家を飛び出したんだ。気が高ぶっちゃたからその時のことはあまり覚えてないんだけど、気が付いたらジムの前にいた。当然俺にはジムに通うお金なんてあるはずもないから、窓の外から物羨ましげにトレーニングしてるマッチョをながめていたのさ。

 そう。そこで先生に出会ったんだ。

 先生は惚れ惚れするような筋肉を持っていてそれはもう完璧なマッチョだった。はちきれんばかりに膨らんだ胸筋が俺の眼を離さなかった。もう自分の感情を止めることが出来なかった。そりゃもうものすごく胸が高鳴っていたさ。「もう、こんな人には出会えないかもしれない」って思うとドキドキなんてもんじゃなかった。そうだな、しいて言うなら「ムキムキ」だったんだ。俺は衝動に駆られるがままに先生のところに駆け寄って「俺をマッチョにしてください!」って言ったんだ。そう。街のど真ん中でね。でもその時はまわりの人の視線なんて気にならなかったね。だって俺にとっっちゃ人生がかかってたんだ。

 先生は「マッチョになりたいのかい? じゃあ着いてきなさい」って言って歩き出した。どこの馬の骨ともわからないようなこの俺を先生は受け入れてくれたんだ。この恩はいくら感謝してもしきれない。本当に先生のおかげで今の俺はある。言い過ぎでもなんでもない。ホントにそう思ってるんだ。

 この後の事はサイトにでもなんでも載ってるからそっちを参考にしてもらった方がいいかな。

 あ、最後にマッチョになりたい若者に一言ですか。

 なんか恥ずかしいな。まだたいして偉くもないのに。まあでもそうですね。じゃあちょっとだけ。

 何事にも近道なんてないんだ。一個一個負荷を上げていけば気が付いたら物凄い結果を生むんだ。焦っちゃいけない。毎日ちょっとずつでも続けることだ。先生も言ってた。「どんなに忙しくても。どんなに疲れていても。例え意識がなかったとしても。プロテインを飲む事だけは決して忘れるな」ってね。

 どうも有難うございました。

 どのサイトを見ればこの後彼がどうなった分かるんですかね。ご存知の方がいらっしゃいましたら是非ご連絡く――――っあ! プロテイン飲むの忘れた! っじゃまた今度!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ