表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今を生きるセツナ  作者: たい
第一章 超能力との出会い
8/20

同居人

「やっぱりこのレーザーポインターは危ないから、出力を落とすか制限をつけた方がいいよ」

「えー、かっこいいからいいじゃん! さっきだって、きのブロックがビーってなってズバッ! ってなったじゃん!」

「だからそれが危ないの! 間違って人に当たったりしたらどうするの?」


あの後、リカとユーリはだいぶ打ち解けてきて、今では二人でユーリの作った物を改良するまでになった。

ちなみに僕もユーリって呼ぶことにした。ユーリはかせよりこっちの方が呼びやすいし。


「セツナ君、理科ちゃん、そろそろ行こうと思うんだけど、どうする?」


木村さんが話しかけてくる。

研究所は広いんだし、木村さんもまだまだ紹介したいところがあるんだろう。


「あの・・・私、もうちょっとここにいたいんですけど、駄目ですか?」


理科が言う。相当ユーリのことが気に入ったようだ。


「うーん・・・いいよ。これから行く所はどっちかというとセツナ君に紹介する所だし。

これからも研究所で暮らすんだから、そのうち施設の場所も覚えちゃうだろうしね」


その答えを聞いた理科は嬉しそうだった。ユーリもよろこんでいるようだ。


「それじゃあセツナ君。行こうか」

「はい」


木村さんに促されて出口へ向かう。


「理科ちゃん、あとで迎えにくるからね」

「わかりました。セツナ、あとでね」

「ばいばーい。よっしー! セツナ!」


二人に見送られ、部屋を出る。


「今度はどこへ行くんですか?」


歩きながら木村さんに尋ねる。


「次に行くのは、超能力者用の宿舎だよ」





第一総合研究ラボからしばらく歩いてやってきたのは、これから僕が暮らす事になるであろう施設だった。


「ここが超能力者用の宿舎、『第一能力者管理棟』だよ。会わせたい人がいるからついてきて」


木村さんの後ろについて建物の中に入って行く。

中は解放的な雰囲気で、テーブルや椅子が置かれていてとてもくつろげそうだった。

へぇー・・・なかなかおしゃれなつくりだな・・・


「ここはセツナ君達、能力者の憩いの場になってくれたらいいと思ってるんだ。実際に生活する部屋は二階にあるよ」



部屋の中央にある階段をのぼって二階へ行く。

木村さんは「05」と書かれている部屋の前で立ち止まった。


「ここがこれから君が暮らすことになる部屋だよ。」


木村さんがドアを開ける。

中は以外と広くて、雰囲気のいい部屋だ。

そして奥の壁には一人の男の人が寄りかかっていた。

・・・・・・誰?


「彼は君のルームメイト、柏柳(かしなぎ)君だよ」


ルームメイト!? なにそれ!? 聞いてない!


「俺もさっき聞いたばかりなんだ。同じ精神感応系統だし、仲良くしてくれると嬉しいな」


柏柳という人はそう言って手を差し出してきた。


「あ、えっと・・・はい。よろしくお願いします」


戸惑いながらもその手を握る。

まあルームメイトがいたからって、特別困ることがあるわけでもない。


「ありがとう。改めて自己紹介させてもらうけど、俺の名前は柏柳(かしなぎ) (かえで)

精神感応系統レベル2の能力者だよ」


柏柳さんはショートヘアーの優しそうな男性だ。

年齢は15才くらいだろうか。

精神感応系統ということは、『精神感応能力』か『思考伝達能力』のどっちかの能力を持っているってことだろう。


「その通り。俺の能力は『精神感応(テレパス)』、他人の考えを読み取る能力だよ」


一言も発していないのに柏柳さんが答える。

今のも読まれてたんだ・・・!


「まあ、万能じゃあ無いんだけどね。他人の考えは読もうと思った時にしか読めないし、表面化してこない思考、つまり『深層心理』とか『自分でも気づかない感情』とかは読めないんだ」


なるほど。

でもそれってむしろ都合がいいんじゃないかな?

他人の考えが聞きたくないのに聞こえてくるなんてことはないから、自分の能力で悩むような事もなくて済むじゃないか。


「はははっ! そうだね! その通りだ! 確かにこっちの方がいいや!」


柏柳さんが笑い出す。

今のも聞かれてたのか。

声に出してないのに意思が伝わるっていうのはなんか新鮮な感じだな・・・


「そんな事より、この部屋を見にきたんでしょ? 後ろの人が不思議そうに見てるよ」


そう言われて後ろを見ると、木村さんが「意味がわからない」って感じの顔をしてる。

そういえば僕はさっきから一言も発してないし、木村さんから見たら握手したあと柏柳さんが一人で勝手にしゃべっているように見えただろう。


「木村さん、この部屋って思ったより広いですね」


多少強引かと思ったけど、話を戻す。


「え? ああ、うん。二人部屋だからね。この宿舎にはここみたいな部屋が全部で10部屋あるんだ」


二人部屋が10部屋ってことは20人分か。

今研究所にいる能力者が13人らしいから、少し多めに造ったんだろう。


「それに無理言ってここに住んでもらうわけだから、それなりに立派な部屋じゃないと」


確かに、13人の中には研究所に来たくなかった人もいるかもしれない。

もし貧相な部屋だったらそんな人に失礼だろう。


「でもじゃあ何で二人部屋なんですか?」


立派な部屋を造るなら、一人部屋の方がいいとおもうんだけどな。


「ああそれはね」


木村さんが、理科と話していた時と同じ顔になる。

あれ? もしかして難しい話?


「この研究所で生活していくって事は、外部の人間と接触できないって事でしょ?

つまり研究所の中の人としか関われないって事。

でも研究所の中には、子供は君達能力者しか・・・いや、理科ちゃんやユーリちゃんもいるからもう少し多いか・・・それでも十数人しか子供はいない。だからどうしても同世代の子とのコミュニケーションが少なくなってしまうんだ。だから部屋を二人用にして、少しでも他人との交流を増やして欲しい思ったんだよ」


なるほど。

十数人ってことは学校のクラスよりも少ないって事だし、多くの子供とは関われないだろう。

下手をすると引きこもりみたいになってしまうかもしれない。


そこでふと気付く。


「超能力者ってみんな子供なんですか?」


木村さんの話は、能力者が子供なのを前提に話をしているように聞こえる。

大人の能力者はいないんだろうか。


「そうなんだ。どういうわけか、今まで確認されている能力者は全員未成年なんだよ。いろいろ仮説はあるんだけど、理由はわからないんだ」


へー、そうなんだ。

まあ大人の能力者がいたら、研究所で暮らしてもらうのも簡単じゃないだろうし研究者にとっては好都合なのかもしれないけど。


「へぇー、そうだったんだ。俺も知らなかったよ。能力者は子供だけだったなんてね」


柏柳さんも木村さんの話の話を興味深そうに聞いている。


ていうか、まだ読まれてる?


「もう読んでないよー」

「読んでるじゃないですか!」


そう言うと柏柳さんは楽しそうに笑った。

こっちからだと読まれてるかどうかわからないから、ちょっと怖いな・・・

あ、でも僕の能力ならもしかしたらわかるのかもしれない。

なんたって僕の能力は『鋭い勘』だからね!


・・・・・・曖昧過ぎるだろ。僕の能力。


「ところで君、名前はなんて言うの?」


柏柳さんが尋ねてくる。

あ、そっか。頭で考えた事しかわからないんだっけ。

自分の名前なんていちいち考えたりしないから思考を読んでもわからなかったんだろう。

なるほど、確かにそういう点では万能じゃないかもしれない。


今生(こんじょう) 刹那(せつな)です。えっと、精神感応系統レベル1の能力者です」


さっきの柏柳さんの自己紹介にならって自分の系統とレベルも添える。

ここでの自己紹介はこういうのが普通なんだろうか。


「今生君か。これから長い付き合いになるだろうけど、よろしくね」


そう言って柏柳さんはまた笑った。

よく笑う人だなぁ・・・


でも、これから一緒に暮らしていく人が悪い人じゃなさそうで、僕は安心した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ