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今を生きるセツナ  作者: たい
第一章 超能力との出会い
3/20

超能力

「―――はい?」


思わず声を上げてしまった。

今の、聞き間違いじゃない・・・よな。


「超能力って……ど、どういう事ですか?」


と、西河さんに尋ねる。

「言葉の通りだ。君は常人を超えた能力、つまり超能力を持っている。それが、君を研究所に連れてきた理由だ」

「超能力って、あのスプーンを曲げたりするあれですか?」

「ああ、その通りだ」


僕が超能力者……


「冗談……ですよね?」

「いや、事実だ」


即座に否定されてしまった。


「先程の検査でそれを確認した。間違いない」


いや、だって、そんな……


「やはりすぐには信じられないか」


そりゃそうだ。超能力なんてものが存在するとは思えない。研究所に来た本当の理由を誤魔化そうとしてるんじゃないだろうか。


「そう、か……」


西河さんはそう呟くと、突然立ち上がった。


「見せたい物がある。ついてきてくれ」





西河さんに連れてこられたのはさっきまでいたビルから少し離れたところにある大きな建物だった。窓が無くて四角いのでまるで大きな豆腐みたいだ。

これが噂の豆腐建築か。……違うか。


「ここだ。中に入ってくれ」


中はどでかい体育館みたいになっていた。ただし上も下も右も左も前も後ろも壁は真っ白だけど。

奥の方には人がいるみたいだった。その人がいる方に西河さんが歩いて行く。


「杉城君、調子はどうだい?」


西河さんが問いかける。


「西河博士ですか。いたって順調ですよ。なにかご用でしょうか?」


杉城と呼ばれた男の人が答える。

年齢は15歳前後だろうか。


「彼に君の能力を見せてやって欲しい。」


能力って超能力の事か。手品でもするつもりだろうか。


「ほう。何故ですか?」

「彼は超能力を信じられないんだ」

「なるほど。では、もしや彼は精神感応系統ですか?」

「ああ、その通りだ」


杉城っていう人の話し方、大人びているというかなんというか・・・自信に満ちた話し方だなぁ。


「わかりました。いいでしょう」


そういうと杉城さんの身体が浮き上がった。そしてあたりを自由自在に飛びまわる。

え? 浮き上がった?


「彼はこの研究所で最も強い力を持つ超能力者、杉城(すぎしろ) 聖護(しょうご)君だ」


西河さんが説明してくる。

す、すごい手品だなぁ。

認めはせん、認めはせんぞ……!


「ほう……これでも認めないとは思ったより頑固だな……」


杉城さんが呟く。

すると、突然僕の身体が浮かびあがった。


「え? う、うわぁ!」


そして浮き上がった身体は杉城さんの元へと飛んでいく。


「これでわかったか?」


目の前で杉城さんが言う。


「す、スゴイ手品ですね!」


なんか意地になってる気もするけど、やっぱり超能力なんてありえない! ……はず。


「そうか、どうしても認めないと言うのなら……」


そう言うと杉城さんは僕から少し距離をとり、右手を上げた。


「……身を(もっ)て体感してもらおう。」


そう言って杉城さんが右手を振り下ろす。

すると僕の身体は車輪のようにまわり始めた。

そしてそのスピードはグングン上がってゆく。

あ、頭が…… ゆれ、揺れて…… い、胃の中身が……


しばらくまわされて、やっと回転が止まる。


「もう一度聞こう。……どうだ」


杉城さんの目は、笑っていた。


「み、認めさせていただきます……」




その日、僕は超能力が存在する事を知った。









「……で、超能力が実在するのはわかりましたけど」


白い建物から戻ってきて、今いるのはさっきのビル。

僕は改めて西河さんに説明をうけていた。


「研究所に連れてこられた理由はわかりました。けど、なんで研究所で暮らさないといけないんですか? 定期的に通うんじゃ駄目なんですか?」


僕は質問する。


「セツナ君の言うことももっともだ。しかし、超能力というのは特別な力だ。それゆえに、誤解や混乱を招きやすい。だからこの研究所という一つの場所に集める必要があったんだ」


えっと……どういうこと?


「つまり、超能力という異能の力を怖がったり気味悪がったりした人々が君たち超能力者に危害を加えようとするかもしれないから、それを防ぐためには超能力の存在を隠し一つの場所に集まって生活してもらう事が必要だったということだ」

「な、なるほど」


なんだか思っていたよりも大変な事になってるみたいだ。


「まあ本音を言ってしまえば、超能力や超能力者がどんな物なのか研究したいというのが私たち研究者にとっての一番の理由だけれどね」

「はは……」


僕は顔を引きつらせて苦笑する。


「大丈夫だ。そんな不安そうな顔しなくても、脳を取り出してホルマリン漬けにして保存、なんてしないから」

「当たり前ですっ!」


そこでふと気がつく。


「……ん? そういえば『超能力の存在を隠し』って言ってましたけど……」

「その通り。超能力の存在は国家機密だ」


こ、国家機密!?

なんかかっこいい……

ってそうじゃなくて。


「じゃあこの研究所の外の人達は……」

「ああ。超能力の存在を知らない」

なるほど、研究所で暮らせというのはそういう事だったのか。

「わかりました」

「納得してくれたかい?」

「はい」


まあ、あれだけ回転させられたら嫌でも。


「そうか。では」


と、一呼吸置いてから西河さんは言った。


「君の能力について説明しよう」


……そうだった。

僕も能力者なんだよな。

全然自覚はないけど、どんな能力なんだろ。

緊張しながら西河さんの話に耳を傾ける。


「君の能力は恐らく『精神感応能力』だ」

「せ、セーシンカンノウ……?」


な、なんじゃそりゃ?


「つまり君の持つ鋭い勘。それが超能力という事だ」

「いやいや、そんな大それた物じゃありませんよ。勘は外れる事だってありますし」


僕は否定する。


「しかし君が超能力者だという事は先程の検査で確認済だ」

「それは分かってますけど……」


でも、杉城さんのようなすごい能力を見せられたら、自分が超能力者だとは思えなくなってくる。


「君の勘が外れるのは恐らく力が弱いからだろう。超能力とは言ってもそんなものだ。全員が杉城君のような能力を持っている訳では無い」


考えてみれば当たり前だ。杉城さんみたいなのがたくさんいたらたまったもんじゃない。


「じゃあ僕には研究対象としての価値はあまりありませんね……」


僕はそう言ったけれど、


「そんな事は無い。超能力の強さや精度などを向上させる事ができるのかという事も研究者としては非常に気になる。そういった事を調べるのに君のような力の弱い超能力者は必要なのだよ」


と真剣な表情で返された。


「それに君の能力には気になる事がある」

「気になる事?」

「ああ。君の能力は、どんなものなのかはっきりわからないんだ」


えっ。どういう事?僕の能力がはっきりわからないって……


「僕の能力はセーシンカンノウとか言う能力じゃ無いんですか?」


ついさっき西河さんが自分でそう言ったはずなのに。


「いや、精神感応には違いないんだが、具体的にどんな力なのかわからないんだ」


具体的にって……


「やっぱりどういう事かわからないんですけど」

「うーん。上手く説明するにはこの研究所での超能力の扱いについて知ってもらう必要があるな。ここからは超能力について説明しよう」


そう言ってから西河さんはまた一呼吸おいてから話し始めた。


「この研究所には君を含めて13人の超能力者がいる。みんなそれぞれ違った能力を持っているのだが、似たような能力を持っている者が複数いることもあった。なのでその似たような超能力をいくつかのグループにまとめてみた。

念動能力系統

精神感応系統

瞬間移動系統

発火能力系統

の4つだ。

同じ系統の中でも他の者と違う能力を持つ者もいれば、ほとんど同じ能力を持つ者もいる。例えば同じ精神感応系統の能力者でも、考えている事を読む能力者もいれば、逆に自分の考えを相手に伝える能力者もいる」


おおっ!それってテレパシーじゃないか。本当にいたんだ!


「だからどんな能力を持っているかわかりやすいように能力そのものに能力名がついている。考えている事を読む能力なら『精神感応能力(テレパス)』考えている事を伝える能力なら『思考伝達能力(テレパシー)』といった具合にだ」

「じゃあ僕の能力は相手の考えている事を読む能力なんですね」

「いや、セツナ君は相手の感情を読む以外にも、飛んでくる物や人の気配を察知できるだろう。だから君の能力は『精神感応能力(テレパス)』じゃない。そこがわからないんだ」


いや僕の能力が『精神感応能力』だって言ったのは西河さんなんだけど……


「例えばさっき会った杉城君は念動能力者だ。彼は物を自在に動かせる。その力を応用して自分の体を浮かせていたんだ。だから彼の能力は『体を浮かせる能力』では無い」

「えっと・・・どういう事ですか?」

「つまり杉城君の能力は『念動能力』であって『浮遊能力』ではないという事だ。

同じように、君も何かの能力を応用して、感情を読んだり、気配を察知したりしていると考えられる」

「えっと、つまりその『何かの能力』っていうのが分からないって事ですか」

「そういう事だ。だが『感情を読む能力』も『気配を察知する能力』も精神感応系統の能力なので、君の能力は『精神感応能力』と言ったんだ」

「でもそれだと、考えている事を読む『精神感応能力』とかぶりませんか?」

「そうだな・・・それでは君の能力は精神感応系統の能力だから、『精神感応系統能力』と呼ぶ事にしよう」


長っ……

まあいいや。

つまり今までの話をまとめると、僕の能力は『よくわからない』って事か。

当然といえば当然か。僕自身でさえよくわからないんだし。


「これで疑問は無くなったかな?」

「はい」

「そうか。本当は超能力についてもう少し説明しなければならないことがあるんだが、疲れているだろうし今日はこの辺にしておこう」

「わかりました」


言われてみれば、というか言われなくても確かに疲れている。主に杉城さんのせいで。


「能力者用の宿舎もあるのだが、今日はとりあえず来客用の建物に泊まってもらおう。まあホテルに泊まるようなものだと思ってくれればいい。超能力についてよくわからないまま他の能力者と接触するのはできるだけ避けたい」


僕も何もわからないまま他の超能力者に会うのは少し怖かったので、ホッとした。

杉城さんの時のような目に会うのはもうごめんだ。

それに、杉城さんからのダメージだけじゃなく、いろいろな事が起こりすぎてくたくただったのでどこかで休めるのはありがたかった。

はぁ……長い一日だったな……

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