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ホラーな私。

作者: 愁水

 時刻は丑三つ時。何でよりにもよってこんな時間にこんな話を書いているのか、自分でもよくわからない。これは、そんな話。

 どこまでが本当の出来事で、どこまでが架空の話なのか。

 …後ろで気配がしたような気がする。きっと、気のせいだ。



 二年付き合ったダンナと結婚して、もうすぐ四年経つだろうか。

 あれはまだ付き合っていた頃。レイトショー狙いで映画をみる約束をしていた。仕事を終わらせたダンナが私を自宅まで迎えに来て、映画館に向かう途中、コンビニに寄った。正直、何を買ったなんかは憶えていない。私は車に乗ろうとしたが、ふと、顔を上げると、道路を挟んだその先に竹やぶがあった。辺りはコンビニの明かりだけで、街灯はほとんどなかったため、竹やぶといってもほとんど闇に溶け込んでいたのだが。

 その中に、居た(、、)のだ。長い黒髪の、赤い服を着た女が。

 ―――目が離せなかった。見開いて、ガン見してしまった。

 だっておかしいでしょ!? 十二月だよ!? ワンピース一枚って!? それ以前に何で暗い竹やぶの中に人が居るの!? ……普通、こっち考えるのが先だよね。

 ダンナに呼ばれて視線を外した後、お約束的に、その女は姿を消していた。



 この日、初めて映画館で寝てしまった。ここまでつまらない映画を見たのは、本当に久しぶりだった気がする。「おもしろかった」というダンナの気が知れない。

 帰り、ダンナが運転する車の中で、ぼーっと外を見ていた私。辺りは田んぼだらけで、街灯なんかない道。車のライトに照らされた田んぼの中に、一瞬、

 映った―――。赤い服の女が。

 私は急いで振り向いた。明かりが消えた暗闇に、鮮やかな色は既になかった。

 変な違和感を感じながらも、家に着いたのでダンナに別れを言って下りる。ダンナが車を発進させると同時に、私は何気なく振り返った。誰も居なかったはずの車の後部座席には、長い黒髪を垂らした、赤い服の女が乗っていた。

 呆然と見送ってしまった私は、急いでダンナの携帯に電話をした。結局、ダンナが家に着くまでも、家に着いてからも、事故や異常なことは何も起きなかった。



 そして、今に至る。

 何も、〝おかしなこと〟は起きていない。

 しかし、ふと、ナニ(、、)かの気配を感じる時があるのは、きっと気のせい。…だと、自分に暗示をかける。

 でも、もしかしたら。

 私とダンナが気づいていないだけで、二人しか住んでいないこの家にもう一人、出入りしている赤い服の女を他人は見ているかもしれない。

 そして、二人しか乗車していない車の後部座席には、他人が見たら、もう一人乗っているのかも―――……。


 長い黒髪の、赤い服の女が。

 

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