地蔵岬
私の故郷は、太平洋側のとある港町である。
大きな湾と小さな湾の境目に位置するそこは、観光でも産業でも名の知れることのない小さな町だった。
それでも、一通りのものは揃っていたから、子供の頃の私は何不自由なく生活していた。
祖父は漁師、父はサラリーマン、母は漁協のパートという、その町では珍しくない家族構成で、私は地元の公立学校に通っていた。
そして休みの日には、祖父の船で海に出ることもあった。
先述した通り、この町は大きな湾と小さな湾の境目にあり、小さな湾側に漁港がある。
大きな湾と小さな湾の境目に防波堤があるのだが、ちょうどそこに突き出す形で岬があった。
町の人はそこを『地蔵岬』と呼んでいる。
入り江のような場所にある漁港から、祖父の船で大きな湾に出る途中、必ず岬のすぐ下を通るのだが、幼い私はなぜその場所が『地蔵岬』と呼ばれるのか知らなかった。
「ねえおじいちゃん、お地蔵さんに見えるから地蔵岬なの?」
ある日、私がそう尋ねると、祖父はぎこちなく笑った。
「あぁ、そう見えるかもしれんなぁ……あそこには、行っちゃあいかんぞ」
それは、何度も言われていた。
父にも、母にも、何なら学校の先生にも。
その理由を聞くと「危ないから」と型通りの答えが返ってくるのだが、それが何かを隠すための方便であることくらい、当時の私には分かっていた。
――そして、本当の理由を知ったのは、夏休みのある日だった。
「網に仏さんが掛かった」
早朝、その報せが入り、祖父は朝食もそこそこに家を飛び出した。
「仏さん?」
嫌な予感がした。当時は夕方、よくサスペンスドラマの再放送をやっていて、祖父が祖母と一緒に見ていた。
私も宿題をしながら横目に見ていたから、「仏さん」という隠語の意味を知っていた。
だから母に、「誰かが溺れたの?」と聞いたのだが、母は苦笑して否定した。
「違うのよ――文字通り、仏さん」
そこで誤魔化し切れないと思ったのだろう。母は『地蔵岬』にまつわる話を私に聞かせた。
大きな湾と小さな湾の境目にあるその海域は、潮の流れが複雑である。そのため、様々なものが流され、留まる。
港町の漁師は、そこを狙って漁に出る。
潮流の関係で比較的浅瀬となっており、カニやタコといった、海底に暮らす生き物が主な獲物だ。
そのため、時には潮の流れに乗って来た、思わぬものが網に掛かることがある。
――お地蔵さん。
どことも知れぬ場所から流れ着いた石仏が網に掛かれば、網を切る以外に方法がなくなってしまう。
けれども、この港町の人々はそうしない。
必ずお地蔵さんを引き上げて、港へ連れて帰る。
それには訳があった。
「海にお地蔵さんが沈んでいると、引っ張られてしまうから」
母は私にそう言った。
港町にありがちな迷信かもしれない。
その他にも、「お盆には海に近づいてはいけない」だとか、「船の上で口笛を吹いてはいけない」だとか、真偽不明なことをよく言われた。
けれども、先程の祖父の慌てた様子を見ると、どうもそれだけではない気がした。
さらに私があれこれ尋ねると、母は根負けしたように続けた。
「土砂崩れなんかで、お地蔵さんが海に沈むのは珍しいことじゃない。けれど普通、重たい石のお地蔵さんが、浅瀬に向かって流されるなんて、考えられないでしょ」
「…………」
「ここに流れ着くのは、『曰く』のあるお地蔵さんばかりなのよ――手に余って海に沈めたお地蔵さんが、長い年月をかけて、海の底を転がってくるの」
真夏の朝とはいえ、日が出れば軽く汗ばむような陽気だ。それなのに一瞬、ゾッ……と寒くなったのを覚えている。
「それで、そのお地蔵さんをどうするの?」
母は窓越しに、岬のてっぺんを指さした。
「あそこに棄てるの」
――地蔵岬。
そこは、流れ着いた地蔵の墓場だったのだ。
――――
東京に出て出版社に就職すれば、日々の多忙にかまけて故郷に顔を出すことがめっきりとなくなった。
そんな私が、『地蔵岬』を思い出すことになったのは、去年、ホラー小説コンテストを担当したことがきっかけだ。
某オカルト系YouTuberとのコラボ企画で、大賞はそのYouTuber監修による映像化と書籍化という、うちの出版社にしては大きなものだった。
企画に当たり、私はそのYouTuberにインタビューを行った。
そのYouTuberの名を、仮に「まほろ」としておく。
まほろ氏は、オカルト界隈では有名なクリエイターで、動画配信だけでなく、ホラー小説を何冊か出している。SNSでの発信力もあり、YouTubeチャンネルの更新報告はだいたい万バズとなる。
弊社の応接室にまほろ氏を迎え、私はインタビューを開始した。
「今、求められているホラーとは、どんなものでしょう?」
「やはり、モキュメンタリーホラーでしょうね。極限まで現実に寄せた虚構というアプローチが、AIの発達で嘘に慣れたユーザーにウケていると思うんです」
インタビューの内容はコンテストに関するものだ。そこから、ホラー小説の様々な切り口へと変移していく。
「ホラーと一口に言っても、色々ありますよね。怪談、パニックホラー、デスゲームとか。その中でも、モキュメンタリーホラーに一番向いているのは、怪談じゃないかな」
まほろ氏はオカルトの知識を駆使し、分かりやすく「怪談とは何か?」といった内容を語っていく。
「怪談にも色々ありますよ。定番なのは、心霊スポットと既存の怪奇現象を組み合わせたものですかね。僕もそのパターンで幾つか動画を撮りましたけど、やっぱ一番反応がいいですね。既存の要素の組み合わせが、リアル感を増すというか、怖さを感じさせるポイントのような気がします」
そこから、「有名な心霊スポット」にまつわる話になったのだが……。
「心霊スポットかどうかは分かりませんけど、私の故郷に『地蔵岬』というのがありますが、ご存知ですか?」
と、何ともなしに尋ねたところで、まほろ氏の顔色が変わった。
「それ、この界隈で禁句になってるんで」
どういうことだ……? と気にはなったものの、これ以上この話題に触れてはインタビューに差し支える。
私は話題を変え、円満にインタビューを終えた。
その後、帰り支度をするまほろ氏に、私は声を掛けた。
「本当に申し訳ないのですけど……『地蔵岬』がどうして禁句なのか、教えていただけないでしょうか? まだ父母が住んでいる故郷なもので、どうしても気になってしまって……」
まほろ氏は言葉に迷うような仕草を見せてから、小声で答えた。
「僕が大好きだったYouTuberが、あの場所に関わったのがきっかけで、失踪してしまったんですよ――僕がこの道に入るきっかけになった人たちです。それからオカルト界隈では、『本当にヤバい場所』だから、軽々しく話題にしてはいけないと言われています」
――――
帰宅後、私はすぐさまパソコンを開いた。
インターネットを開き、『地蔵岬』と入力して検索する。
けれども、似た地名が表示されただけで、思った情報にはヒットしなかった。あの名称は地元の人がそう呼んでいただけで、町の外では通じない名だからなのか? しかし少なくとも、まほろ氏の知っているYouTuberの動画があるはずなのだが……。
少し考えた後、私は検索ワードを『J岬』としてみた。オカルト系のネタで、固有名詞をぼかすのによく使われる略し方だ。
――すると、ヒットした。
とあるYouTubeの動画。
配信者の名は、『オカチャン』となっていた。
動画のタイトルは『恐怖! 封印されし史上最恐の心霊スポット【J岬】に挑んだ結果、とんでもないことに!?』となっている。
大袈裟な煽りだと、私は少し冷めた気分になった。
動画を再生してみる。すると、男性三人の姿が映し出された。
「どうもー。元気、勇気、怪奇! なオカルトチャンネル『オカチャン』へようこそー(パフパフ) さて今回は、(ピー)県にある隠れ心霊スポット『J岬』にやって来ました」
私は別ウインドウを開いて、『オカチャン』について調べた。
メンバーは、リーダーの岡田、ひろさん、まー吉、そしてこの場では撮影を担っているケンケンの四人組らしい。大学のオカルトサークルの仲間で、卒業後も仕事の合間に、心霊スポット巡りをしたり、怪談イベントを行ったりしていたようだ。
「皆さん、『J岬』って名前は聞いたことがないんじゃないかな。実を言うと、僕たちも初めて聞いたんですよ。前の怪談イベントの時に募集したんですよね、あまり知られていない心霊スポットを教えてくださいって。そしたら、メールが来まして」
中心となって進行をしているのが岡田だろう。彼はメールの内容を説明していく。その内容は私が知っている通りのもので、差出人は地元の誰かではないかと私は思った。
ひろさんとまー吉の二人が、岡田の説明に合いの手を入れながら盛り上げていく。
そして、一通りの説明が終わったところで、 拍子抜けのする効果音と共に画面が切り替わった。
暗がりを懐中電灯で切り取ったその場所を、私は知っていた――場所を特定されないためだろう。所々モザイクでぼかしてあるが、間違いない、故郷の漁港だ。
防波堤沿いに彼らは進んでいく。その途中、海にまつわる怪談を語ったり、犬の鳴き声に過剰に驚いて見せたりという演出も忘れない。
――そして。
「到着しました。この道を行くと、『J岬』の先に出るようです」
そこは、私が幼い頃から「この先には行くな」と厳しく言い聞かされていた場所だった。
三人は足を止め、カメラに向き直る。
「本当にヤバい場所だということで、今回、いつも以上に用意を整えてきました」
と、彼らはバックパックを開いて中を見せた。
「お数珠、お線香、ロウソク……これらは我々が心霊スポットにお邪魔する時の三種の神器ですけど、今回はそれに加え、厄除け祈願で有名な(ピー)神社の御札です」
「それから、除霊に効果があると有名なファブ(ピー)ズ」
「あと、宗派は違いますけど、ニンニクと十字架ですね」
「さすがに吸血鬼はいないだろ」
軽いノリで動画は進行していく。
三人は、草の覆い茂った、道とは名ばかりの斜面を上っていった。その間も、オカルトに関する話題を語ったり、奇妙な形の木を見つけて視聴者の不安を煽ったりする。
それでも、バカ騒ぎをせずに、一応は地元に配慮した気遣いをしているところが、彼らの好感度に繋がっているのかもしれない。
やがて場面が切り替わる。
三人がカメラを向き、神妙な顔で呼吸を合わせる。
「さて、『地蔵岬』に到着しました。先程からビンビンと異様な空気を感じてます……。この先は、ここにいる『何か』に敬意を示すため、慎重にいきます」
先程までと打って変わって声が低い。演出の一環だろうが、何かあるのではという期待を持たせる流れだ。
私は思わず身を乗り出した――長年過ごした故郷でありながら、見たことのない景色がこの先に広がっていると思うと、興味がないはずがない。
三人はお数珠を手に、暗闇に向けて合掌してから、懐中電灯を奥へと向けた。
――その先にあったのは、乱雑に積まれたお地蔵さんの山。
その周囲を、ぐるりと注連縄が囲っている。
「うわ……」
岡田が声を漏らした。他の二人は声もない。
カメラがお地蔵さんの山に近付いていく。ひとつひとつをアップで映せば、苔に覆われたもの、フジツボが付いたもの、顔が半分欠けたものと、様々な地蔵尊が見られた。
映像の影で声が入る。
「これ、映しちゃって大丈夫かな?」
「映すのは問題ないでしょ。映るのが嫌なら、機材に異変があってもおかしくないし」
「俺らに何かあったら、編集で切ればいいんじゃない?」
オカルト慣れした怖いもの知らずな彼らは、地蔵の山を一周する。
「これ、古そうだね。いつからここにあるんだろう」
「実は昼間、地元で調査を行ったんですけど、この場所についての話を、地元の方から一切聞けなかったんですよね」
「そうそう、『絶対に行くな』と滅茶苦茶怒られたし」
「でも、その忠告を無視して来てる訳じゃないですよ。僕らの目的――日本に残る風習を記録するっていうのを説明した上で、『勝手にしろ』と言われたんで」
何とも稚拙な言い訳だが、それが彼らのやり方らしい。
一通り地蔵の山を映した後、正面に戻った彼らは、撮影した映像を確認する。
「ここのお地蔵さん、何体くらいあるんだろ」
「百体はあるだろうな」
「何か変わったものが写ってるとかはない?」
「あ、このお地蔵さん、年号が入っている……文永三年って読めるね」
「鎌倉時代だよ。そんな昔から存在してるのか、このお地蔵さん」
「どんな経緯を辿って、ここに着いたんだろうな」
場面が切り替わる。神妙な表情で並んだ三人は、お墓でよく見る線香立てを手にしていた。
「では、お邪魔させていただいたお礼に、手を合わせます」
注連縄の手前に線香立てを置き、ロウソクに火を点ける。
そして線香の束に火を移して線香立てに立ててから、三人は手を合わせた。
そこから急に画面が明るくなった。
三人の口調も軽いものになり、効果音と共に拍手をする。
「恒例、呪われ検証ターイム(パフパフ)」
背景にあるのは、有名全国チェーンの、24時間営業のファミレスだ。
先ほどまでとは別人のようなノリで、岡田がファミレスを示した。
「さて、こちらはJ岬の最寄りのファミレスです。何回かご覧いただいてる視聴者の方はご存知かと思いますけど、よくあるじゃないですか……人数より多くお冷を出されたっていうの。アレで、僕たちが果たしてどのような状況になっているのか、検証してみるという企画です」
恐らくはスマホだろうが、撮影しながら、三人と撮影者の四人は店内へ入っていく。
すると、男性店員が応対に出た。
「いらっしゃいませ……」
彼は戸惑った顔をして、言いづらそうに先頭の岡田を見た。
「すいません。ご予約でない団体様のご対応はいたしかねます」
画面がボックス席に移る。
テーブルにカメラが置かれたようで、初めてケンケンの姿が映された。
四人は顔を寄せてニヤニヤしていた。
「ちょっと、初めてのパターンでしたね」
岡田の言葉に、他の三人は頷いた。
「最高記録じゃないかな、これ」
「確か、これまでの最高記録はプラス三人だったよね」
「記録更新だな」
「実を言うと、ケンケンの他に、僕も自撮りを撮ってたんですよ」
と、岡田がカメラにスマホを向ける。
「『団体様ですか?』って時に、何か映ってないかと思って、見直したんですけど……」
スマホにある写真の岡田の顔が、白いモヤに覆われたようになっている。
――まるで、線香の煙越しに見たように。
店員の件も含めて仕込みだろうが、オカルト好きな視聴者的にはおあつらえ向きな演出には違いない。
私は投稿されたコメントの盛り上がり具合を見て苦々しく思った。
少しして、別の店員がお冷を運んできたのだが、五つのグラスが置かれたテーブルを見て、四人は再び盛り上がった。
その後、ありきたりなセットメニューを食べながら、四人は総括的な雑談をした。
「撮れ高としては期待外れな部分もあったけど、かなり異質な物件であったのは違いないな」
「正直、撮影中止に追い込まれるようなトラブルを期待してたところはあった」
「お地蔵さんの映像から何か情報が得られて、新たなる展開へ、って流れは可能性あるんじゃないか?」
「そうだな。検証してみる価値はある」
「という訳で、次回は、今回のお地蔵さんについての考察をお届けできればと思います。元気、勇気、怪奇! 『オカチャン』でしたー! チャンネル登録をお忘れなくー。では!」
と岡田が締めて、動画はそこで終わっていた。
パソコンの前で眉を寄せ、私はまほろ氏の言葉を思い出した。この動画だけでは、彼らが失踪したとされる要因が分からない。
私は彼らの他の動画を検索してみる。すると、それはすぐに見つかった。
『J岬』のすぐ次に投稿された動画だったから。
再生してみる。ひろさん、まー吉、ケンケンの三人が並ぶ映像。背景を見ると、誰かの自宅のようだ。
真ん中に座るまー吉が語りだす。
「えー、視聴者の皆さんにご報告しなくてはならないことがありまして……実は、この前の『J岬』の直後から、岡田と連絡が取れなくなりました」
これも仕込みか……と私は疑った。
しかし冷静に考えれば、多くのフォロワーを持ち、再生数で少なからず稼いでいる彼らが、理由もなく収入源を断つような行為をするのは不自然だ。
私は動画に集中する。
「『J岬』から戻った翌日、検証動画の打ち合わせをどうするか相談しようと、グループLINEで呼び掛けたのですが、岡田だけが既読にならず……」
まー吉の言葉をひろさんが継ぐ。
「自宅にも行ってみたんですけど……あ、彼、一人暮らしなんで、賃貸マンションなんですけど、ベルを鳴らしても出てこないんで、職場に確認したら、無断欠勤が続いているとのことでした」
「ご家族に連絡して、大家さんに頼んでもらって部屋にも入ったんですよ。正直、最悪の事態を想像したんですけど、岡田はいませんでした」
ケンケンは口下手なようで、助けを求めるようにまー吉を見る。
「ケンケンの言う通り……これはまずいんじゃないかってなって、昨日、ご家族が捜索願を提出しました」
画面が切り替わり、岡田の顔写真と、警察署の名前と電話番号が表示される。
「もし、岡田をどこかで見かけたという方は、このチャンネルでも構いません。是非ご連絡をお願いします」
動画はそこで終わっていた。
ゾッ……と総毛立つ感覚が私の肌を覆い尽くした。とてもネタとは思えない。
私の指はすかさず、次の動画を再生していた。
そこに映っていたのは、ひろさんとケンケンの二人。
げっそりとやつれた表情で、ひろさんはこう言った。
「まー吉も、いなくなりました」
背筋を戦慄が貫く。
見開いた私の視線の先で、ケンケンが震える声を出した。
「やっぱ、『J岬』に行ったせいなんだと思います」
「『J岬』の情報をくれた人に連絡してみたんですけど、返事がなくて困っています。この動画をご覧の皆さんで、『J岬』についてご存知の方は、何でもいいですから、情報をください。本当に、本当にお願いします」
ひろさんが深々と頭を下げ、動画は終了した。
私はさらに検索するが、どうやらそれが、『オカチャン』として投稿された最後の動画のようだった。
投稿日を見ると三年前。
一体、彼らに何があったのか。
それから、YouTube以外での彼らの活動を調べ、行き当たったSNSを覗いてみた。
だがそれも、更新は三年前で止まっていた。
――助けて
という、ケンケンの投稿を最後に。
少し悩んだ末、私はまほろ氏にメールを書いた。
――『オカチャン』の動画を見ました。ケンケンさんがその後どうなったのか、ご存知ですか?
しばらくして、まほろ氏から返信があった。
――直接の知り合いではないので正確なところは分かりませんが、自殺したという噂を聞いたことがあります。
――私の父母から、地蔵岬について話を聞こうかと思います。何かのお役に立ちそうでしたら、ご連絡しましょうか?
そのメールの返信が届いたのは翌朝だった。
――関わってはいけないことが、この世にはあるんです。
それを最後に、まほろ氏と連絡が取れなくなった。




