優しいゆりかご
一部の視線が私に集まる。
ちょっと待って、混乱してきた。
てっきり、もっと物々しい集まりだと思ってた。
けど、私の目の前に広がってるのは小さい頃よく連れてかれた公民館のような景色。
チェック柄のシャツを着たおじさんや、焦げ茶のタイトスカートを着たおばさんが、賑やかに設営をしている。
そろそろ自治会の集会でも始めましょうか、という感じだ。
「ねえ、お嬢ちゃん」
死角になっていたドアの裏から40-50代だろうかと思われるおじさんが顔を出し、話しかけてきた。
突然の事で思わず1歩仰け反る。
「見ない顔だけど、誰かの紹介かな?ここは関係ない人が来るような所じゃ無いんだけど。」
にこやかに優しい口調で話しつつ語気を強めている。
こういう喋り方には本能的な恐怖を感じてしまう。
「え、ええと...その、実はメモを拾いまして。」
なんと言うか迷ったが、声を振り絞った。
「メモ?」
「はい。これなんですけど。」
スマホの写真フォルダを開き、図書館で撮った写真を見せる。
「はあ、なるほどねぇ。」
写真を拡大し目の近くに持っていった後、おじさんは困ったような顔をして頭をポリポリとかいている。
「で、そのメモを見て、君は好奇心でここに来たって事かな?」
「好奇心...というか、何か手がかりが掴めるんじゃないかな〜なんて思いまして。」
「手がかり?なんの?」
「蘇生薬についてです。」
そう言い終わった途端、再び無数の視線が私を刺してくるのを感じた。
「実は、お姉ちゃ...私の姉が蘇生した後おかしくなっちゃって。それで色々調べてたんです。そしたら、蘇生薬についての本にこのメモがあって。それで...」
おじさんはしばらく考えるような素振りを見せた後、眉を緩めた。
「なるほどね。なら答えると、君の選択は正解かもしれないね。」
「この集まり..."蘇生薬被害者遺族の会"は、蘇生した後おかしくなった家族を持つ人達、つまり君みたいな人達の集まりなんだよ。」
「被害者遺族?」
「あはは、そこ引っ掛かるよね。ちょっと皮肉ってみたんだよ。中々上手いでしょ?」
そう言って笑うおじさんの目はこちらを確かに視界の中心に据えている。




