赤い接触
母を見送り、ドアノブから手を離す。
ドアがギイーッと音を立てながら閉まり、錠前がガチャンと悲鳴をあげた。
赤い車がビルの影へと消えていった後、押し入れを開く。原型を留めていないそれを見つめると、赤色だけが酷く鮮やかに見えた。
母が来てから1週間。ついに8/12がやって来た。
あれから、蘇遺会について調べていたが、どうやら、あまり表だった組織では無いらしい。
検索はもちろん、SNSなどを調べても、特に目立った情報は見つからなかった。
けれど、集会場所だけは分かる。
どちらにしろ私は選べる立場にない。
私はドアノブを強く握りしめ、ドアを開けた。
階段を降り道路へ。
舗装された綺麗な道路は熱を帯びており、陽も落ちてきたというのに下から熱気が突き上げてきた。
15分ほど歩くと、藤有ビルに着いた。
スマホには18:45の数字。
いつ頃行くかというのも考えたのだが、変に早く行って目を付けられたら堪らないと考え、大人しく常識に従うことにした。
しかし、着いたは良いものの、外から見る限りでは上へ向かう階段しかないように見える。
このまま冒険者ごっこをするつもりは無い。
ここは、誰か来るのを待っておく方が懸命だ。
そうやって物陰で様子を伺っていると、5人組の男達が談笑しながらやって来た。
この時間にここへ、ましてや集団で来るということは彼らも同じ目的を持っているだろう。
心臓が存在感を示し始めた。だが、選択肢は無いのだ。
彼らは、階段の裏側、それもやや奥側に向かい、姿を消した。
慎重に後を追うと、下へ向かう階段が現れた。
どうやら、地下への階段は特に隠されている訳では無いらしい。
至って普通のコンクリートの階段をひとつ、またひとつと、静かに降りる。
降りるにつれ冷たくなっていく空気は火照った頬を冷まし、埃を運んでいる。
2個目の折り返しを抜けると、そこには他の部屋と全く遜色ない、やや黄ばんだ金属製のドアがあった。
ここが、蘇遺会...。
いつでも逃げる準備は出来ている。
ここに"凶器"がある事を願って。
私は冷たさを手に感じながら、ドアを開けた。
中では、父や母と同年代であろう私服の人達がテーブルを組み立てる音が鈍く響いていた。
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