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鳩になる条件


 一通りパン屑を食べ終わった鳩たちは散っていった。あれで悪意が無いのだからタチが悪い。


明日香と大雅を見る。

金髪の女の子——凛と呼ばれていた——もそこに居た。


「陽菜ちゃん、だいぶ揉まれちゃったね」


明日香がそう言って笑う。


「うん...ちょっと疲れちゃった」


私は正直に答えた。


「私たちも最初そうだったなぁ。洗礼、みたいな?」


「言えてる」


2人で笑う。心から笑うことに、どこか懐かしさすら覚えた。


そして、明日香は急に真剣な面持ちになった。


「陽菜ちゃんも辛いことたくさんあったと思う。けど、ここの人たちはちょっと面倒くさいだけのいい人だから。一緒に頑張ろ?」


彼女に対しては隠し事は通用しないような、全て喋ってしまいそうな、そんな感覚を覚えた。


「う、うん。ありがとう」


「ちょっと待ってよ。私まだ納得してないんだけど」


凛が明日香の後ろから、抑えた声で割り込んだ。


「ここは私にとって、大切な場所なの。だから、ちゃんとした方法で入ってきてないやつは信頼出来ない」


「凛ちゃん、それも一理あると思う。けど、私は陽菜ちゃんが悪いようには思えないなあ。それに、しんさんも良いって言ってるんだし」


「そんなふわふわした理由で納得出来ないって言ってるんだよ」


「それに、ここでは揉め事を起こさないのが決まりでしょ?」


 凛は何かを言い返そうとした。

 が、言葉に詰まったようだ。


「...はいはい分かったよ」


明日香の正論に毒気を抜かれたのか、そう吐き捨てると、彼女は鳩たちの元へ戻って行った。

不満げに何かを話し始めている。

 おばあちゃんは肩に手を回しながらうんうんと頷いていた。


「まあ、そのうちあいつも慣れるさ」


離れた所で見ていたのだろう大雅が、凛の居たポジションに入るとそうため息をついた。


それにしても。

凛を見つめる。


私が想像していたのは彼女の方の反応だった。


明日香や大雅、おじさんおばさん、そしてしんさん。

なぜ私をすんなり受け入れたんだろう?


この優しさを信じられない私の方がおかしい——そう錯覚しそうになる。

 

 違う。

 馴れ合いがしたかった訳じゃない。


スマホを取り出し、メモの写真を開く。


万年筆特有の色彩のムラが、液晶越しでも達筆さを際立たせている。


 何度考えても、腑に落ちない。

 なぜ私が取ったあの本に。

 偶然と片付けるのは簡単。

 でも。


「ねえ、2人とも」


私はスマホを2人に向けた。


「この会で万年筆を使ってる人、知らない?」

遅くなりました!すみません!

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