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「境界外突入 ― 風の勇者と“世界の裏側”」

翌朝の旅路。

第四の影との戦いへ向け、森の外れを歩くユウトたち。


風がやわらかく吹き、草木を揺らした。


ピリィがふわふわとユウトの肩の近くを漂いながら、

ぽそりと呟いた。


『ユウト……その……』


「ん? どうした?」


なぜかピリィの身体の“背中あたり”がぷくっとふくらんでいる。


レオンが気づき、目を細めた。


「……また羽が出てるぞ、お前」


『ひゃっ!?』


ピリィは慌てて身体を縮ませるが、

感情がコントロールできず、

ひらひらとした“スライムの羽”が左右に生えてしまう。


ユウトが思わず笑う。


「ピリィ、それ……今どういう状態なんだ?」


『ど、どういう状態とか言わないでほしいですぅぅ!!

 で、でも……これは……その……』


ピリィはもじもじし、

羽っぽい部分がさらにピンク色に染まる。


ゴルドが大笑いした。


『お前、感情がハネに出すぎだろ!!』


レオンが淡々と解説を入れる。


「スライムの変形反応だな。

 こいつは特に風属性との相性が強いから、

 感情で“空気抵抗を減らす形”に変わるんだ」


ユウト「へぇ……羽って、そういう仕組みなのか」


ピリィは恥ずかしそうに身体を丸める。


『べ、べつに!

 ユウトが優しくすると……

 羽が勝手に出てくるだけで……

 あたしの意思じゃないですぅ……』


ユウトはにこっと笑って言った。


「じゃあピリィの羽って、

 嬉しい時の“しっぽ”みたいなもんなんだな」


『~~~~~~ッ!?!?

 そ、そんな可愛い感じに言わないでほしいですぅぅ!!』


ピリィの羽は完全にバタバタしていた。


レオンがため息をつく。


「見た目に反して、

 こいつは感情が全部丸出しだからな」


ゴルド『逆にわかりやすくて良いじゃねぇか!』


ユウトはそっとピリィの頭(?)を撫でる。


「でもさ。

 ピリィの羽、可愛いし……

 強く見えるよ」


『~~~~~~~~~~っっっ!!

 ユウトのばかぁぁぁぁぁ!!!

 もう飛んでいくですぅぅぅぅ!!』


ピリィは涙目になりつつも、

嬉しさのあまりその場をくるくる飛び回った。


羽は大きく広がり、

淡い風の光をきらきらと弾いている。


レオン「……あれは完全に“好き”だな」


ユウト「え、何が?」


レオン「いや……なんでもない」


ゴルド『あーあ、ピリィの羽、今日一番キレイだわ。

   完全に恋する生き物だな』


ピリィ『きっ……聞こえてるですぅぅぅぅ!!』


ユウトは笑いながら風を巻き起こした。


その瞬間――

ピリィの羽は、風を受けてふわっと輝いた。


まるで本物の妖精の羽のように。


ユウトは素直に感嘆した。


「……すげぇ。

 ピリィの羽って、本当に綺麗なんだな」


『やめてぇぇぇぇぇ!!!

 これ以上褒められたら……

 溶けるですぅぅぅぅぅ!!!』


ピリィはぷるぷる震えながら、

ユウトの背中に隠れた。


それでも羽は嬉しそうに揺れている。



村を出て半日後 境界線前の荒野


空の色が変わった。


境界へ近づくほど、世界の輪郭が“ざらつく”ようになっていく。

遠景の山も木々も、まるで手描きの線が乱れているかのように揺らいでいた。


ユウトは立ち止まり、目を細める。


「……ここだ。第四の影が言ってた“境界の外”の入口」


レオンは雷を指先に灯し、慎重に周囲を観察する。


「異様だな……色も深度も違う。まるで絵が途中で終わっているみたいだ」


ゴルドは腕を組み、筋肉で押し破れるか試すように構える。


『つまりド派手にぶっ壊せば進めるってことか?』


ピリィが慌ててユウトの肩に張りつく。


『やめるですぅ!!

 ここは世界の端っこなんですよ!?

 落ちたら戻ってこれないかもしれないですぅ!!』


ユウトは深呼吸をし、風を感じた。


(……境界の外。

 世界の“線”が書かれる前の場所。

 第四の影が本体を隠している……裏側の層)


そして――

ここには“まだ見ていないリュミエルの真実”もある。


ユウトは拳を握る。


「行くぞ。

 みんな、絶対に離れないでついて来い!」


『おー!!』


レオン「ユウト、先頭は任せる」


ピリィ『ユウトの隣はあたし!!』


ゴルド『じゃあ俺は背中!!』


ユウト「何その並び順の争い!?」



風が止む。


いや――

風そのものが存在しない空間。


大地は白銀の線だけで描かれた“下書き”のような広がり。


空に色がなく、星も太陽もない。


ただ薄く揺らぐ白線と黒線が、世界を形づくる前のように浮かんでいた。


ピリィが震える。


『う、動くですぅ……!

 大地の線が、生きてるみたいに……!』


レオンは剣を構える。


「ユウト、お前の風だけが“色を持っている”。

 この世界は、お前たち勇者を想定して作られていない場所だ」


ユウトは頷く。


「……わかってる。だから風で切り拓くしかない」


ユウトの蒼風が足元を包むと――

白銀の線が“押されて”わずかに道が生まれる。


ゴルド「おお! 道ができたぞ!!」


ピリィ『ユウト、すごいですぅ!

 ユウトは歩くだけで世界を描けるです!!』


レオン(小声)「……またピリィがテンション上がってる」


ユウトは苦笑しながら先へ進む。




一定距離進むと――

耳に届くはずのない“ざわめき”が響いた。


【――――】


言葉にならない波。


だがユウトには“意味”だけが伝わってくる。


(……これ、モンスターの思考の気配じゃない)


もっと深い。もっと古い。


まるで――

世界の裏側で眠っていた“原初の声”のような重さ。


レオンがユウトに目を向ける。


「どうした?」


「なんか……“世界そのものの声”が聞こえる」


ゴルド『お前どんだけ万能なんだよ!?』


ユウト「いや、俺も初体験だよ……」


すると、風が一瞬だけざわついた。


ユウトの背に蒼い光が宿る。


【――ユウト】


聞こえた。


どこか懐かしい、透き通る女神の声。


リュミエルの声。


ユウト「……リュミエル?」


ピリィ『えっ!? リュミエルの声ですぅ!?』


しかし――


【……ユ……ト……こ……は……】


声が途切れ、弱く消えた。


レオンが眉をひそめる。


「届かない……か。

 ここは“風の通らない領域”だ。声も歪む」


ユウトは拳を握りしめた。


(リュミエル……本当にここにいるのか?

 第四の影が“真実”と言ったもの……

 女神の裏側に何がある)




突然――

地面の白線が、ぴき、と割れた。


『ユウト!! 来るですぅ!!』


黒い芽のようなものが地面から突き出る。


まるで影そのものが、植物として生えたような形。


レオン「こんな存在、これまで見たことがない……!」


芽は急成長し、あっという間に

“人型の影” へと変化していく。


【――――】


声はない。

輪郭だけがある。

しかし“敵意”だけが鮮明に伝わってきた。


ユウトは構える。


「行くぞみんな!!

 境界の外の影……ここからが本番だ!!」


ピリィ『ユウト、後ろは任せるですぅ!!』


レオン「雷で前線を開く!」


ゴルド『筋肉で殴り抜ける!!』


ユウトは風を纏い、前に出る。


「蒼風――開けッ!!」


蒼い線が世界を突き破り、戦いが始まる。



影の芽は動きが異様に速い。


脚の線が伸び縮みし、

形状を変えながら襲いかかってくる。


ユウトは飛ぶ。


風で影を裂きながら叫ぶ。


「線が……見える!!

 弱点の線が視える!!」


レオンが驚嘆する。


「ユウト、その力……核層で得た“風の視認力”か!」


ユウトは影の中心部――わずかに濃い黒線を一閃。


蒼風が爆ぜ、影の芽は弾け飛ぶ。


ピリィ『ユウトすごいですぅ!!

 影の弱点が見えるなんてチートですぅ!!』


ゴルド『やっぱ勇者は筋肉じゃなくて風なんだな!!』


レオン「どこに嫉妬してるんだお前は」


ユウトは風を収め、息を吐いた。


「……まだ序の口だな。

 第四の影の“本当の核”はこの奥だ」



道が狭まり、空間そのものが縮む。


そして。


空が裂けた。


ひとつの巨大な“洞”が出現する。


その奥で、微かに光るもの――


いや、光ではない。


白銀の“女神の輪郭”。


ユウトの胸が強烈に締め付けられた。


ピリィ『ユウト……あれ……』


レオンは息を呑む。


「……リュミエル、なのか……?」


ユウトの足が止まる。


風が震える。


――第四の影の声が、奥から響いた。


【風の勇者よ

 “これが女神リュミエルの本当の姿”だ】



ユウト「……っ!!?」


リュミエルの輪郭は半透明で――

ところどころ欠け、崩れていた。


光ではなく、“線だけ”で描かれた不完全な姿。


レオン「まるで……途中で描くのをやめた絵のようだ」


ピリィ『リュミエル……どうしてこんな……』


第四の影が続ける。


【女神リュミエルは、すでに完全な存在ではない

 お前が出会った“彼女”は――

 本体の欠片が作り出した幻想にすぎない】


ユウトの呼吸が止まる。


『…………』


第四の影は静かに告げる。


【そして――

 リュミエルが“欠けた理由”こそ

 この世界が歪んだ原因そのものだ】



ユウト「――教えろ」


風が震える。


「リュミエルに……何があったんだ……?」


第四の影が答えようとした瞬間。


――空間がひずんだ。


そこへ、

**“白銀の光”**が落ちてきた。


【ユウトさん……来ちゃ……ダメ……】


弱々しい女神の声。


ユウト「リュミエル!!?」


光が弾け――

ユウトの意識は、強制的に奪われた。

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