「ピリィと村娘たちの女子会」
村の朝・縁側前
ユウトが朝の風を吸いこみながら伸びをしていると、村の少女たちがきゃいきゃい言いながら集まっていた。
「ゆ、勇者さま、昨日はお風呂で大変だったって……!」
「風のお兄さんってかっこいいよねぇ……」
「雷の勇者さまもイケメン……!」
その視線の9割がユウトに向いている。
ユウト「ちょ、どういう朝なの……?」
レオン「お前のせいだろ」
ピリィは……というと。
縁側の陰から顔だけ出し、震えていた。
(……来たです……この流れ……
これはもう……“女子会召喚フラグ”です……!)
ピリィはふるっと体を震わせた。
ピリィ(小声)『ユウト……浮気はダメですぅ……』
ユウト「浮気じゃねぇよ!?」
だが村娘のひとりが、ピリィの丸さに気づいた。
「あっ、昨日ユウトさまといっしょにいたモコモコちゃん!」
「かわいいー! 触っていいの?」
ピリィは硬直した。
(……触っていい……?)
「ふわふわだね〜!」
「わ〜、気持ちいい〜!」
その瞬間、ピリィの表情が――バチィッと音を立てて変わる。
(……あ、あれ……?
なんか、なでられるの気持ちいい……?
でも……でも……!!)
ピリィは思いきって顔をあげた。
『み、みなさん!!
きょうは……女子会、するです!!』
村娘「じょ……女子会?」
『そうですぅ!!
ユウトの……いえ、勇者様の周りに集まる女子として……
きょうは語るべきですぅ!!』
レオン「そんな義務はない」
ユウト「やめろ恥ずかしい!!」
しかし村娘たちは――
「楽しそう……!」
「女子会って言ってみたい!」
「勇者さまの話もっと聞きたい〜!」
まさかのノリノリ。
ピリィは天に拳を突き上げた。
『よしっ!!!
では女子会、はっじまるよーーーーですぅ!!』
村長宅・女子会会場(ちゃぶ台)
ちゃぶ台には菓子、木の実、手作りクッキー、お茶。
そして中心に陣取るのは――
もちろんピリィ(主催者)。
村娘A「ピリィちゃんは、ユウトさまとどういう関係なの?」
村娘B「やっぱり恋人なの?」
ピリィ『れ、恋人っ!? そ、その……
いえ、まだ正式には……でも……でも……!!』
ピリィは胸に手を当て、小さく震えた。
村娘C「顔赤い〜♡」
村娘A「いや、そもそも恋愛ってできるの?」
ピリィ『できます!!
モンスターでも恋はできるです!!
だってユウトの心は――いつもあたしに優しいですぅ……』
村娘たち「きゃーーーー♡♡♡」
ピリィは勢いづいて、ちゃぶ台の上に乗りかける。
村娘B「じゃあさ、ユウト様ってどんなとこが好きなの?」
ピリィは力強く頷き――
『ぜんぶ好きです!!
まず寝起きの顔が、ちょっとぼんやりしているところがかわいいですし
朝のくしゃくしゃ髪も尊いし
飯食べるときの素朴な笑顔が神ですし
あと風呂の――』
「風呂の?」
村娘たちが身を乗り出す。
ピリィは鼻血寸前の顔で叫んだ。
『湯気の中のユウトはもう……
なんというか……!!
“存在がありがたい”のですぅ!!』
村娘たち「ぎゃーーー♡♡♡」
ちゃぶ台が揺れた。
ピリィは語る語る。
『ユウトは優しいですし、風も強いですし……
何より、あたしの声にいちばん反応してくれるです!
いつも“呼んだ?”ってすぐ来てくれるですぅ!!』
村娘B「それ絶対両想いだよね?」
村娘C「羨ましいっ!!」
村娘A「でもさ……他の女の子がユウト様に近づいたら……?」
空気が張り詰めた。
ピリィは――ゆっくりと笑った。
『――焼き払うですぅ』
村娘たち(全員)「ひっ!?♡」
ピリィ『ユウトに手を出した女子は……
風の勇者でも守りきれないほど……
あたしが……こう……お仕置きするですぅ……』
ゴゴゴゴゴ……
ちゃぶ台の下が震えた。
村娘C「ピ、ピリィちゃん……?」
ピリィは唐突に笑顔へ戻る。
『でも!!
みなさんは、今日からお友達なので問題ないですぅ♡
ユウトの良さを広めるのは大歓迎ですぅ♡
でも奪うのはダメですぅ♡』
村娘たち(全員)
「…………(こわっ…こわかわ……)」
「……でも絶対いい子だよね?」
「めっちゃわかる。推しが尊いとそうなるよね」
ピリィ『そうなのです!!
ユウトは尊いのです!!
みなさんも推し活するですぅ!!!』
女子会は謎の熱気と共に夜まで続いたという。
女子会終了・ユウトたちの側
ユウト「……なんか今、妙に寒気がしたんだけど」
レオン「……女子会中にお前の名前ほぼずっと出てるぞ」
ゴルド『推されてるなぁ!! 筋肉も推されてぇ!!』
ユウト「いや推されるのは嬉しいけど……
なんか、“奪われたら殺される”みたいな気配が……?」
レオン「正しい察知だ。逃げ道は確保しておけ」
ピリィが笑顔で戻ってくる。
『ユウトぉ♡ 女子会、最高だったですぅ♡』
ユウト「……お、おう」
(なんか……光って見える。
いや、後ろに炎ゆらいでない?)
レオン「ユウト。部屋の鍵だけはしめて寝ろ」
ユウト「お前の忠告が一番怖いわ!!」
その夜――
蒼風の勇者は、戦場より恐ろしい“女子会の余韻”に震えることとなった。




