「ピリィ、嫉妬で大爆発する!」
翌朝・村長宅
――朝日が差し込み、鳥の声が聞こえる。
穏やかな朝。
昨夜あれだけ騒いだのだから、少しは静かに目覚めてもいいはずだった。
しかし。
『ユウトぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
――その叫びで、ユウトは目を覚ました。
「……何ごと!?」
布団から飛び起きると、襖を突き破る勢いでピリィが飛び込んできた。
飛びながら、すでに泣いている。
『ユウトが……ユウトが……!!』
「ピリィ!? どうしたんだよ!?」
『あたしの知らないところで……女の子と話してたって聞いたですぅ!!』
ユウト「……は?」
レオン(部屋の隅でストレッチ中)
「ユウト。お前、何をした」
ユウト「俺に心当たりないぞ!?」
ゴルド(腹筋中)
『ユウト、お前モテるなァ!』
ユウト「やめろややこしくなる!!」
ピリィはぷるぷる震えながらユウトに詰め寄る。
『ユウト……あんた……昨日の夜中……!!』
「寝てたよ!? 爆睡だよ!? 誰の夢見てたかは知らんけど!!」
『――“村の娘さんたちと話していた”って聞いたですぅ!!!』
ユウト「誰情報!?」
すると村の子どもが部屋の前から顔を出した。
「勇者さま〜、昨日のお風呂のあと、女の人たちが“風の勇者さまイケメンだったねぇ♡”って井戸端会議してたよ!」
ユウト「それ俺関係ないやつじゃねぇか!!!」
ピリィ『ちがわないですぅ!!!』
怒り&嫉妬でまんまるボディが震え、湯気のようなオーラが立っている。
レオンが低い声で言った。
「……やばいな。これは“本気の嫉妬暴走モード”だ」
ゴルド『爆発するぞ!! 物理的に!!!』
ユウト「何で俺が爆発に巻き込まれなきゃいけないんだよ!!」
ピリィは涙目でユウトの胸にぽすっとぶつかってきた。
『ユウト……ゆうべ一緒に風呂入ったのに……
なんで……あたし以外の女の話を……』
「いや、俺何もしてないからな!!?」
『でも! 女の子に好かれるのは事実ですぅ!!』
ユウト「それは誤解じゃない? 村の娘さんたち、ただの噂話で……」
ピリィ『でも! でもぉ!!』
涙の勢いで床を転がり、ユウトにしがみつくピリィ。
ユウトは困った顔でため息をついた。
「……ピリィ。」
『な、なんですぅ……(涙目)』
「嫉妬してくれるのは……ありがたいよ」
ピリィ『……っ!?』
丸い体がぴたっと固まった。
『い、いま……なんて……』
ユウトは照れながらも続ける。
「俺のこと気にかけてくれてるってことだろ?
だから……嬉しいよ。ありがとな、ピリィ」
ピリィの顔が、トマトのように真っ赤になった。
『~~~~~~~~っっっ!!』
次の瞬間。
『ユウト大好きですぅぅぅぅぅ!!!!』
ダイブ。
ユウト「うおあああああああああああ!!!?」
レオン「はいきた暴走モード第二形態。」
ゴルド『愛情タックルだァァァ!!!』
ピリィは涙と鼻息を撒き散らしながらユウトに抱きつき、さらに語気を強める。
『ユウトは! あたしのですぅ!!
他の女の子になんて渡さないですぅ!!』
ユウト「渡す気はないけど、そもそも誰も俺を求めてないから安心しろ!!」
レオン「それはそれで悲しくないか」
ピリィがぐいっと前に出て宣言する。
『今日一日、ユウトはあたしが見張るですぅ!!』
ユウト「監視対象になった……!?」
レオン「お前が原因だ」
ユウト「言うほど!? 俺何もしてないよな!?」
ゴルド『ユウトよ……恋とは理屈じゃねぇのだ……』
ユウト「恋じゃないからな!? ピリィは仲間だからな!?」
ピリィ『な、仲間“以上”ですぅ!!』
ユウト「今の聞かなかったことにしよう」
レオン「聞いたぞ」
ゴルド『俺も聞いた』
ピリィ『村中に言いふらすですぅ~~~~!!!!』
ユウト「やめろおおお!!!?」
村の人々の反応
ピリィがユウトの腕にしがみついて歩き回るせいで――
村人A「まあ……勇者さまとピリィちゃん、朝から仲が良いこと……」
村人B「若いっていいねぇ……!」
村の娘たち「え、え、え、え!? 風の勇者さま……!!?」
ユウト「待て!! 違う!! こういうのじゃない!!」
ピリィ『こういうのですぅ!!』
村娘たち「お似合いだと思ってました♡」
ユウト「やめてぇぇぇ!!?」
レオン(遠くから)「……頑張れ、風の勇者」
ゴルド「モテ期だな!!」
ユウト「俺の意思が反映されてねぇ!!」
最終的に
ピリィはユウトの腕にべったり張り付いたまま、ほぼ一日離れなかった。
・ユウトが歩けば → ピリィもついてくる
・ユウトが水を飲めば → ピリィの目が輝く
・ユウトが村娘と目が合えば → ピリィの目が真っ赤に光る
レオン「……ユウト、もう諦めろ」
ユウト「何を!? 何を諦めればいいんだよ!!?」
ピリィ『ふふふ……ユウトはあたしのですぅ……♡』
ユウト「やめてくれ本当に!!?」
こうして――
第四の影との死闘明けの朝は、
“ピリィの大嫉妬モード”によって 完全に平穏を失ったのであった。
蒼風は今日も、賑やかに吹く。




