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「第三の影・誕生」

世界が震えた。


光でも闇でもなく、ただ“白銀の線だけ”で描かれた世界に変わっていく。

色が薄れ、風が止まり、音が沈んでいく。


白銀の影がレオンの胸へ吸い込まれていくたびに、

地面の“輪郭”が失われていく。


まるで、絵本のページが消しゴムでこすられていくように。


『ぷ、ぷるる!? 地面が……薄くなってるですぅ!』


「影が……世界の根を削り始めたんだ……!」


ユウトは歯を食いしばる。

風がない世界――その中でただ走るだけで息が苦しい。


風がないということは、

「世界が生きていない」ということだった。


そして、その“死”の中心に――レオンが立っている。


レオンは目を開いていた。


だがその瞳は、

人間のものでも、影のものでもなかった。


“輪郭のない眼”

“意思のない眼”

“世界を映していない眼”


まるで、産まれる前の“何か”が顔を覗かせているようだった。


ユウトが叫ぶ。


「レオン!! まだ中にいるんだろ!!

 お前、沈黙の影にも沈語の影にも飲まれなかったんだ!

 第三の影ごときに――!」


白銀の影が微かに震えた。


ギ……ギギギ……


世界のどこからともなく“軋む音”がする。

だが物の音ではない。

世界の“線”そのものがきしんでいた。


ゴルドが吼える。


『ユウト! 影が……“形”を得ようとしている!!

 人の魂と世界の空白をインクにして、“新しい影の器”を作っている!!』


「レオンを……器になんかさせるかよ!!」


ユウトは前に出る。

風は吹かない。

足は重い。

声は吸われる。


それでも歩く。


その時、レオンの唇が動いた。


「……ユ……ウト……」


ユウトは息を飲む。


(レオン……お前……まだ……!)


しかし次の言葉は、レオンの声ではなかった。


「――ちがう。“ユウト”という音に意味はない」


冷たい、空白の声。


それはレオンの喉を使いながら、

“レオンの意思を否定”するために発せられた声だった。


白銀の影がレオンの背後で人の形に近づいていく。


輪郭

そして――頭部。


影は“顔”を造ろうとしていた。


だがその顔には、まだ“表情”も“口”もない。


ただの“穴”。


世界そのものが空っぽになっていくような不気味な穴。


ユウトは拳を握る。


「……影。

 お前なんかにレオンの顔を名乗らせねぇ!」


ユウトが踏み込んだ瞬間――


白銀の影が、初めて“声”を出した。


――ユ……ウト……


声にならない。

音にならない。

ただ空気の震えだけを持った“叫び”。


だが、それは間違いなく“ユウトを呼ぶ声”だった。


(……俺の名前を……?)


影は輪郭を広げながら、静かに、しかし確実に

“ユウトが近づくのを嫌がって”いる。


そしてレオンの胸に根を伸ばし、

レオンの“空白”を自分の芯に変えようとしている。


ピリィが震えながら叫んだ。


『ユウト! レオンさんの中……!

 まだ……青い光がありますぅ!!』


ユウトの心臓が跳ねる。


(レオン……お前まだ残ってる……!

 なら……!)


ユウトは叫ぶ。


「レオン!!

 お前は沈黙の影に飲まれなかった!

 沈語の影の空白も越えた!!

 第三の影なんかに!!!」


白銀の影が揺れる。


「お前の声を……渡すなぁぁぁぁぁぁ!!!」


その瞬間――


レオンの瞳の奥で、

“空白が裂けた”。


青い光が、ひと筋走った。


レオンの声が、かすかに漏れた。


「……ユ……ト……

 ……たす……け……」


白銀の影が猛反発するように震える。


ギギギギギ……ッ!!!


世界の“線”がさらに崩れ、

風の存在そのものが軋んだ。


(まずい……影が“形になる瞬間”だ……!)


影の身体が、


腕を

足を

胴を

そして“顔”を――


レオンの体から抜き取り、

自分の器へと移していく。


そして――


“笑った”。


声なき笑い。

口のない笑い。

ただ輪郭だけの笑い。


世界の“存在の根”が震えた。


第三の影が誕生したのだ。


完全に、独立した“存在”として。


ユウトは叫んだ。


「レオン!!!」


白銀の影が、誕生の第一声を放つ。


――ァアアアアアアアアア


風が吹き飛び、世界が歪む。


ユウトは拳を握りしめた。


(レオンを……絶対に取り戻す。

 この影を、絶対に倒す!!)


第三の影が、

完全に形を持った“最初の瞬間”だった。

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