表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/47

まさかの伝説級⁉️

 俺の名はユウト・ナガセ。

 異世界に転生して勇者になった男……のはずなのだが、ステータスは壊滅的に低い。

 攻撃力5、防御力3、俊敏2、運1。どの数値も見なかったことにしたい。

 唯一の救いは、「モンスターの心の声が聞こえる」という奇妙なスキル。

 それだけで命をつないできた、最弱勇者である。


 そんな俺の前に、今日またしても事件が起こった。



「……なあユウト。空、光ってねえか?」


『あれ……魔力が空気を割ってる。やばい気がする。』


 見上げると、雲の切れ間から金色の光が差していた。

 それはどんどん強くなり、やがて形を成していく。


 そして現れたのは——眩しいほどの美女だった。


「ユウトさ〜んっ! お久しぶりですねぇ♡」


「げっ! お前ぇぇぇぇ!!」


『だ、誰!? なんで空から女が降ってきた!?』ゴルドが叫ぶ。


『まぶしい! 溶ける! スライム的に限界っ!!』ピリィが泡立ちながら叫ぶ。


「落ち着け! こいつは俺をこの世界に送り込んだ、女神だ!」


『こいつって言うなぁ!』女神は頬を膨らませた。


「みなさん初めましてっ! 私は“転生管理課・女神リュミエル”ですっ♡」


『……役所みたいな名前だな。』


『天界って書類仕事あるんだ……』


「お前らツッコミ鋭いな。」



「で、今回はなんだ?」


「実はユウトさん、本来は“伝説級の全能勇者”になるはずだったんです!」


「………………はい?」


『“全能”? それって……世界最強ってことか?』


「そうですっ♡ 本来のユウトさんは、攻撃力9999、防御9999、俊敏9999、運9999! 神すら超える勇者になる予定だったんです〜!」


「な、な、なんだってぇぇぇ!! じゃあ俺のこのゴミみたいな数値は!?」


「パソコンにコーヒーこぼしちゃったんです♡」


「お前ら天界、仕事ナメてんのか!!」


『え、神様ってパソコン使うの?』

『……書類よりカフェ事故が原因ってどうなんだ……』


「細かいことは気にしないでください♡ 今から修正しますね〜!」



 リュミエルが杖を掲げる。

 まばゆい光が俺を包み、世界が震えた。


【再設定開始:勇者ユウト・ナガセ】


 体の中を、熱いエネルギーが駆け抜ける。

 筋肉が膨張し、視界がくっきりして、世界が俺を中心に回っているように感じた。


「うおおおおおお!! すげぇ……力が……! 指パッチンしたら山動きそう!!」


『空が震えてる!?』『ピリィが蒸発しかけてるぅぅ!!』


「ははっ、これが伝説級の勇者の力か! 竜王でも誰でも、かかってこい!!」


 俺は拳を握りしめ、空に突き上げた。


 ——その瞬間、リュミエルが顔を曇らせた。


「ん? どした?」


「ちょ、ちょっと待ってくださいね? おかしいな……スキル欄に空白が……」


「スキル? そんなの後でいいって!」


「えっと……“モンスター思考読取”ってやつ、どこいっちゃいました?」


「え?」



「おいおいおい! それ俺の唯一の生存手段だぞ!!」


『ユウトさん、それないと本当にただの人!』


『人どころか、装備してないモブ!』


「それは今までのユウトさんで、全能勇者なんだから、いらないでしょ♡」


「いや、俺そういうのじゃなくて! そっちが俺のアイデンティティなんだよ!!」


「え、アイデンティティって……そんな残念な方向でいいんですか……?んー、それじゃあ、特別に何か別のスキル付けときますね♡」


「いいんだよ!! っていうかやめろ! そのボタン押すな!!」


「えいっ♡」


【転送シーケンス開始】


「おい、今の“えいっ”って言ったな!? 軽すぎだろ!?!?」


『ユウト!?』『ま、また光ってる!?』


「次は絶対うまくいきますからぁぁぁ!!」

 ——そう言い残し、リュミエルの声が遠ざかっていった。



 光が消え、目を開けると……そこは暗く巨大な洞窟。

 岩肌が赤く光り、熱気が肌を刺す。

 そして頭上から、重い声が響いた。


『……人間、か。珍しい。ここに来るとはな。』


 闇の中で、紅い瞳が二つ、ゆらりと開く。

 息をするだけで、胸が圧迫されるような威圧感。


「うわ……まさか……」


『名乗れ。』


「ゆ、ユウト……勇者です。」


『また勇者か。飽きた。焼き払うか。』


「ちょ、待っ、落ち着け!!」


 その声を聞いた瞬間——頭の中に“思考”が流れ込んできた。


『……面倒だ。今日も眠い。焼くのも億劫だ。』


「え……?」


 脳内に、確かに竜王の“心の声”が響いた。

 だが、それと同時に、空中に赤い警告が走る。


【エラー:スキル競合検出】

【全能モードと思考読取の干渉により、優先スキル:思考読取】

【再起動中……】


「おい待て!? またバグったのか!?!?」


【全能データ破損。初期設定に戻します。】


「戻すなぁぁぁぁぁぁ!!!」


 再び光が弾け、体から力が抜けた。

 たった今まで世界を支配できるほどの力が、煙のように消えていく。


『……ふむ。なんだこの哀れな気配は。』


「ですよねぇ……俺もそう思います。」


『さっきまでの力はどこへいった。貴様、なにをした。』


「いや、俺も知りたいわ。」


 力は消えたが、心の声だけは残った。

 どうやら、俺は“また最弱”に戻ったらしい。



「ま、まあ、最強より最弱の方が俺っぽいし……」


『……貴様、恐れぬのか? 我を前にして。』


「怖いけど、話せるしな。」


『話せる……?』


「お前、ほんとはあんまり人間殺したくないんだろ?」


『……なぜ、それを。』


「聞こえてんだよ。お前の“めんどくさい”って心の声が。」


『…………。』


 竜王は長い沈黙のあと、ふっと息を吐いた。


『くだらぬ勇者だ。だが、悪くはない。』


「だろ?」


『面白い。少し、見物させてもらおう。』


 炎のような瞳が、少しだけ柔らかく光った。

 俺は苦笑しながら呟く。


「……結局、俺はこうなる運命なのかもな。」


 ——こうして、

 全能勇者になり損ねた“最弱勇者”と、

 世界最強の竜王との、奇妙な関係が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ