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私は世界に愛された。

作者: まうか

初投稿です。冒険を終えた勇者の辿る先が気になってショートショートに起こしてみました。5分くらいで読めます。本文や投稿にあたって間違っている、やるといいことなどはコメントにて教えてもらえれば幸いです。

ついに、私の剣が魔王の首を斬り落とした。


《……悪夢が、やっと終わった。》


そう呟くと、魔王は灰となって消えてしまった。


立ち込めていた霧が晴れ、魔物たちは光となり、世界は再び朝を取り戻した。


私は全てを手に入れた。

天より授かった無限の魔力をはじめ、旅路で築いたハーレムは解けることなく、王は私に城と領地を与え、街へ出れば民衆が崇め称える。


朝はヒロインの目覚めのキスを受け、巨大な城の庭で優雅な朝を過ごす。

昼は簡単な業務を済ませるだけで王や民衆からの熱狂的な支持と富を得ることができた。

夕暮れには豪華絢爛を極めた食卓を美女と共に囲み、夜になれば金髪の幼馴染や銀髪の魔族、気難し屋の獣人、甘えたがりの術師、清楚な神官─など、選りすぐりの美女と刺激的に過ごす。

終わることのない幸せを私は堪能し尽くした。

「これ以上の人生があるだろうか。」

1人げに呟くと、不意に胸に冷たい何かが走る。

今日も同じ景色だな、と。

思えば昨日も同じような日であった。目覚めのキスを受け、簡単な業務をこなし、豪華な食卓を囲み、美女と夜を明かす。

一昨日もそうだった。民衆の声も、ヒロインの言葉も全てが既視感に満ち溢れている。

酒の入ったグラスを置き、隣に座るブロンド髪のエルフを見つめる。


この世界は止まっていた。


冒険も敵も困難も無くなっていた。誰も逆らわず、誰にも傷つけられない。


永遠の「幸せ」を私は享受しなくてはならない。

悪夢であった。


護身用のナイフを抜き、喉元に押し当てる。冷や汗が止まらなかったが、私はそれを一息に突き刺した。

わずかな痛みを感じた直後、私の無限の魔力よりスキルが発動し、負った傷は即座に治った。


死ぬことすら、許されなかった。


悪夢から覚めるため、私はヒロインを1人ずつ叩き切った。

しかし、そのたびに出るのは「あなたを愛していました。」、「あなたの手で死ねるなら本望です。」、「さぁ、早くトドメを…」という狂気にすら溢れた言葉であった。

配下の兵は「英雄に縋る寄生虫どもを駆除した!」と私を賛美し、民衆へ大々的に知らせた。民衆はますます私に対する敬意を強く抱くようになった。


次は王族を殺した。王、王女、王子…。一人一人を剣で捌いてゆく。

民衆は革命だと賛美した。


悪夢から覚めるために、私は考えうる全てを無限の魔力で行った。


世界を霧で覆い、魔物を放ち、世界を二度と終わらない夜に沈めた。

しかし、いまだに私と遭遇するすべては私を賛美し続けた。


程なくして、世界に勇者が現れた。

その勇者は無限の力で私の手の中の世界を砕いた。

遂に勇者の剣が私の首を斬り落とした。


死の間際、私は呟いた。


《……悪夢が、やっと終わった。》

閲覧ありがとうございました。

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