【30秒で読める怪談】バイオハザード7.1
私の友人の山本さん(仮名)から聞いた話です。
山本さんが大学生の頃、後輩が自殺したそうです。
後輩を、仮に「池内さん」とします。
山本さんと池内さんは、それほど親しかったわけではありません。
同じサークルで、山本さんが1年先輩でした。
池内さんには確かに陰がありましたが、話しかければ意外にしゃべってくれる、人なつっこいところのある青年だったようです。
2人が入っていたサークルは、日本全国の心霊スポットを巡ろうという集まり。
池内さんは、もともとそういう霊的なものに興味はあったんでしょう。
サークル内で心霊写真や怪奇現象の話をして、ずいぶん楽しそうにしていたようです。
ただ、問題がありました。
サークルの代表を務めていた「梶原さん」という人が、かなりクセのある人物でした。
隣県のお寺の息子だそうで、頭は丸刈り。
大柄というか、太っていて、声も大きい。
どこかガマガエルのような印象もあり、要するに、威圧感があったのです。
逆に池内さんは小柄な、かわいい感じの大学生。
あるとき梶原さんに命令されて、心霊ツアーの予定表を組むことに。
慣れない中、作り上げた予定表を持っていくと、
「こんなスケジュールで、どうやって動くんだよ、バカか。
〇〇線が10:42着で、××線が10:47発。
おまえ、ここの駅に行ったことあんの?
どう考えてもムリだろ。
オレらを走らせる気かよ。
小学生でもわかるぞ。
頭悪いなー」と、
梶原さんにコテンパンにやっつけられました。
それでも池内さんは、ニコニコして反論しなかったそう。
あとで山本さんが
「梶原さんもひどいよな。あんなに言わなくてもいいのに」
と声をかけたら、
「大丈夫です、このサークルが好きなんで。それに、梶原さんの指摘ももっともだし」
と逆に梶原さんをかばうほどでした。
そんな池内さんがある日、自殺しました。
自宅アパートで首を吊っているのを、アパートの管理人が発見したのです。
大学の夏休みも半ば過ぎた頃の、残暑の厳しい時期。
ものすごい異臭がしたそうです。
池内さんが自殺したことを、帰省中だった山本さんは、9月になってから知りました。
久しぶりにサークル室へ顔を出したときに、梶原さんから一部始終を聞かされたのです。
池内さんの地元(中部地方)から、ご両親が飛んできたこと。
息子が自殺した理由を知りたいと、遺体の人差し指を使い、携帯の指紋認証ロックを解除したこと。
電話帳に梶原さんの名前があり、そこに「梶原部長」とあったため、ご両親が梶原さんへ電話をかけたこと。
それを受け、梶原さんは池内さんのアパートを訪問し、ご両親と面会したことなどを聞かされました。
梶原さんは、どこかニヤニヤしながら言いました。
「いや、まいったよー。
そりゃ、息子が死んでテンパってるのはわかるけど。
『息子のおもちゃをもらってください』って言われてさー。
プレステとゲームを渡されちゃったよー」
梶原さんの言い方に、強い怒りを覚えた山本さん。
こんなヤツのところにあるよりは、と考え、池内さんのプレステとゲームを引きとりました。
その際、梶原さんに5千円を要求され、吐き気がしたそうです。
数ヶ月たち、山本さんはふと思い出して、池内さんの形見のプレステで遊んでみようと思い立ちました。
ソフトは、これも形見の『バイオハザード7』。
『7』はシリーズ屈指の名作。
「すべては恐怖のために」という名キャッチコピーのついています。
基本ストーリーは、主人公のイーサンが、さまざまな謎を解きながら恐ろしい館を脱出するというもの。
おもしろいゲームですから、プレイし始めると、すぐに作品世界に没入して、池内さんの形見ということも頭から消えてしまいます。
暗い画面から、突如、襲いかかってくるモールデッド(クリーチャー)たち。
ゲームの途中に、ビデオテープを見るくだりがあります。
山本さんは一度、『7』をクリアしたことがあるので、飛ばそうとしました。
でも、なぜかスキップできません。
不思議に思っていたら、再生されたビデオテープの映像の中に、後ろを向いている人物が映っているのに気づきました。
そんなところに人なんていたっけ、と思っていると、その人物が振り返りました。
肌の色で白人だとわかったのですが、その人がこう叫びました。
「ハンニンハ、カジワラダ」と。
山本さんは心臓が止まるかと思ったそうです。
ただし奇妙な現象はその1回だけ。
あとは何度プレイしても、同じ白人は現れませんでした。
その後。
気になった山本さんは、大学の生徒課に頼みこんで、池内さんのご両親と連絡をとりました。
すると、「事件性はないと検死で確認済み」と警察からも言われており、そっとしておいてほしいと言われたそうです。
でも山本さんは、今でもひっかかっていると私に話してくれました……