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真守葉摘が微笑む時   作者: モモル24号
『悲嘆と歓喜のコントラスト』 〜 怪文書の秘密を探れ 〜
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『悲嘆と歓喜のコントラスト』

第二章は公式企画 春の推理2024メッセージの投稿作品【『悲嘆と歓喜のコントラスト』 〜 怪文書の秘密を探れ 〜】 を収録したものです。


 ────夜の(とばり)が降りたある日、私は有名な駅の前に降り立ってしまった

 ────夜の(あかり)が灯ったある日、私は有名な店の暖簾をくぐってしまった


 辿り着いたのは東の果てか

 巡り合ったのは奇跡の店か


 戻ることは叶わない

 食わずには帰れない


 何故か無性に辺りが冷える

 何故か無性におなかが鳴る


 死ぬかもしれない恐怖

 ラーメンがための狂気


 主の天使が吹く終末のラッパ音

 主の店主が吹く屋台のラッパ音


 生への執着に悶え足掻く人々

 生への渇望に悶え疼く喉と舌


 主の天使が告げるのは死への誘い

 主の店主が告げるのは食への誘い


 魂奪う黄泉の鳥は骸をついばむ

 魂こめたスープは鶏ガラベース


 正面の誰かは囚われてむせび泣く

 醤油ダレはちょっぴり生姜が効く


 どんより浮かぶ混沌の呪い

 どんぶりの中で混ざる旨味


 主の天使が蠢く人々をすくう

 主の店主が茹だる麺をすくう


 死神鎌を片手に手早い首切り

 平ざるを片手に手早い湯切り


 絶望の中で、人々は静かに沈む

 どんぶりの中、麺が静かに沈む


 面は打ちひしがれて皺になる

 麺は昔ながらの縮れ麺となる


 青冷めたのは顔だけか心もか

 青菜は小松菜かほうれん草か


 メンタルは抓む

 メンマは一摘み


 血臭と悲しみの咎びとが一体ずつ

 チャーシューとナルトは一枚ずつ


 刻んだ(ささ)やかな涙が浮かぶ

 刻んだ(こま)かなネギが浮かぶ


 海の藻屑と躯が波に侵される

 海苔が一枚スープに浸される


 広がる不浄の死が闇に香る

 広がる醤油ラーメンの香り


 混在する死と恐怖

 調和する麺と具材


 歪に割れた頭蓋骨

 歪に割れた割り箸


 最後に黒装束が刺突を加える

 最後に白胡椒で刺激が加わる


 主の天使がラッパを鳴らす

 主のラーメンに喉を鳴らす


 美しく飾られた惨劇の一幕

 美しく彩られた食卓の一皿


 白い蓮花の湖にゆっくりと沈む

 白いレンゲにスープが浸水する


 命の輝きを主の天使が吸う

 黄金のスープを口から吸う


 痺れるような悲痛

 痺れるような旨味


 ラッパの告げる死は止まらない

 ラーメンを手繰る箸は止まらない 


 血塗らた世界に支配される人々

 ラーメンの魔力に脳が踊る人々


 獰猛に食いちぎられ上る悲鳴

 チャーシューを半分齧る歓喜


 血肉に彩られる虚ろな世界

 ナルトに彩られる器の世界


 青白い死の天使が嗤う

 青菜で口を直して笑う


 放たれた杭が死者を打つ

 放るメンマが食感を増す


 ボロボロの人々が崩れる

 ホロホロの海苔が溶ける


 最後の審判に人々は絶望する

 最後の一口に人々は嘆望する


 ガラスの棺は全て叩き割られた

 グラスの水は全て飲み干された


 主の天使の宣告で世界は終わる

 主の店主の会計で食事は終わる


 主は死を入れ替え魂を再生する

 主は志を入れ替え魂を注入する


 後悔し悲嘆しても想いは戻らない

 後悔し悲嘆しても重さは減らない


 メシアは誕生していた

 メシは頼み忘れていた


 耳を揃えた法師に建てられた神殿

 耳を塞がれた坊主と賑やかな港湾

 

 ……いつの間にか夜が明けていた

 ……いつの間にかお金は消えてた

 


 ──────────────

 オカルト研究会宛に届いていたメッセージ。

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