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真守葉摘が微笑む時   作者: モモル24号
ライアー・バスター 偽りの断罪者編

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第6話 創作の庭の誓い


 緋音はララと相談して、毬奈と直接会って話を聞くことにした。昔よりフットワークは重くなったが、顔を見せた方が毬奈も安心するだろうから。


 ララといる店でそのまま待ち合わせる事にする。ララは経過報告するニャといって、一旦席を外した。毬奈は彼女の旦那さんに送られて、すぐにやって来た。


 久しぶりに会ってお互い抱きしめ合うと、毬奈に釣られて緋音も少し涙が出る。現実での会話はずいぶん前になるが、創作の庭で毎日のようにメッセージを交わしていたはずなのに‥‥少し間が空いた期間が二人とも長く感じた。


「恥も何もさ、最初から言っておいたじゃない。わたしが昔からざっくり過ぎるように、毬奈が感情移入しやすいし、欠点は昔からお互い様でしょ。毬奈は頑固だし、折れるの待ってたんだよ」


「酷っ⋯⋯でも、私の方が酷いよね。ごめんなさい。疎遠になってそのままかと思ったのに⋯⋯待っててくれてありがとうございます」


「まあ仮想の世界の仮定の人物について私と毬奈の意見が違うからと、嫌う理由にはならないよね。同様に仮の話で堂庵を断罪に動くのも違う、それは毬奈も正しかったよ」


「うん。でも慎重に接するべきだった」


「そうね。リスクが大きくなって来たから焦ったよ。ものぐさ旦那さんに話して、ちゃんとリアルは警戒しなよ?」


「うん、わかってる。本当に来たら取っ捕まえて警察に突き出すって」


「頼もしいじゃん」


 そう言ってカラカラと何事もなかったように笑う緋音。会うと創作の庭の話が尽きない。でも現実にミスター・ホロウが現れるとなると、お喋りばかりしていられない。


緋音は叩かれ叩かれたからといって沈黙していたのではない。ずっと客観的に観察していたのだ。調子に乗った堂庵は、その底の浅い思考と、隠していた本性を必ず露呈し、ボロを出すとわかっていたから。


「緋音、私も協力させて。私のせいでせっかく築いたコミュニティが乗っ取られちゃったけど⋯⋯」



毬奈は怖さを忘れ、緋音の指示に従うと告げる。よっぽど怖かったのだろう。


「それなら紹介したい人がいるの」


 緋音の言葉を待っていた人物が二人の座る席にやって来て、ペコリとお辞儀した。


「えっ、誰?」


「会うのは初めましてニャ」


「⋯⋯ニャ?」


「あっ⋯⋯これはネットの癖じゃなくて、クソボス(葉摘)に暗示をかけられたニャ」


 クスッと同じ疑問を抱いた緋音が吹き出し、毬奈はキョトンとする。危うくホロウのことなど忘れる所だった。


「ララだよ、皆本ララ。彼女もミスター・ホロウに迷惑被った一人よ」


「毬奈‥‥改めてよろしくニャ」


 緋音は活発なデニムジャケットにジーンズ、毬奈はどこの異世界令嬢だよとツッコミたくなるフリフリなフリル服。ララはと言うと、猫耳フードのパーカーに短パンのストリート女子だった。様相の違う三者。


「ララは複数のサイトを巡回して、堂庵浩二(ミスター・ホロウ)の過去のコメントや、信頼関係のある者とのやり取りを調べてくれていたの」 


 緋音の言葉でララが持ってきたノートパソコンをテーブルに出して起動する。堂庵のこれまでの行動の記録を前に、毬奈は愕然とした事実に直面する。堂庵が他の創作者に送っていた言葉や、詩に寄せられた返信の内容が、以前見たもの同様に驚くほど似通っていたからだ。それも(ホロウ)の作品を褒めそやす者とセットで。


偽りの断罪者(ライアー・バスター)として確証を得ないとさ、偽りを裁くものじゃなくて、嘘つきの裁定者になっちゃうものね」


「そういうことニャ」


 緋音とララが毬奈の肩をポンと叩いて励ます。


 心配する言葉、慰めの言葉に溢れたミスター・ホロウの各サイト。しかし距離感がおかしく、馴れ馴れしさだけが増してゆく。これらの言葉は、毬奈だけに向けられた特別なものではなかったと緋音もようやく親友に伝える事が出来た。


 ミスター・ホロウの作り上げた蜜月の計画は、長く続かなかった。いや始めから蜜月状態など存在していなかった。


 甘い囁き合いは、あくまでもミスター・ホロウの頭の地図の中の出来事。(ホロウ)による一方的な筋書きによる解釈である。毬奈は創作者同士として尊敬し、作風に惚れ込んでいた⋯⋯その感覚が違っていたのに気づきもせず、ストーカーまがいの行いまで始めた。


「創作の庭という場所なのが厄介なのよね。文章という証拠はあっても、創作の一環のつもりだったと言い逃れ出来てしまう」


「精神的にも逃げ場が出来てしまうニャ」


(ホロウ)はそこまで計算していると思う?」


「まだそこまで考えてなさそうね。でもあいつ(ホロウ)は狡賢く進化する怪物だから」


 実害が出るまで警察も動けない。そんな事は三人とも望んでいない。そうなる前にミスター・ホロウの正体を暴き、被害を未然に食い止めるしかなかった。


「ホロウに限らずこの創作の庭の性質上、舞い上がって勘違いする輩は出てくるニャ」


「そうね。でもわたしの目の黒い内はそうはさせない‥‥なんてね。毬奈、ララ。ホロウ退治にあらためて協力してくれる?」

 

「もちろんよ」


「了解だニャ」


 三人はソフトドリンクの入ったグラスを掲げて軽く打ち、飲み干した。


 桃園の誓いならぬ、創作の庭の誓い。ネットの怪人ミスター・ホロウがチヤホヤされて桃源郷気分に浸っている中、断罪の刃は静かに磨かれていた。


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