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真守葉摘が微笑む時   作者: モモル24号
真守葉摘が微笑む時 不器用な完璧超人編

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リベンジャーと不器用な完璧超人・3

※ 性犯罪グループによる描写があります。露骨な表現はさけましたが苦手な方はご注意下さい。


 犯罪グループのリーダーが起訴猶予を経て解放された。政府絡みの有力議員の息子と言う事もありる。リーダーとして罪を認めたものの、当人の関わりや確証が得られず罪が重くなる前に有耶無耶にされた。


「こちらの仕掛けた罠を利用して、口の軽い連中を一緒に始末したようだな」


 犯罪グループのリーダーをはじめ、有力者の子息が多かった。事件の発覚が大きく広まる前に動いたのだ。将来を考え、心霊スポットを利用した性的犯罪に加えて、裏取引の証拠など、都合の悪いもの全てを処分していた。


 二人の新たな戦いの舞台は、葉摘が足繁く通う「カフェ・ド・リエル」だった。街の喧騒から隔絶されたように静かな、アンティークな調度品で統一されたその喫茶店。葉摘の能力者としての密かな社交の場であり、彼女の好むオカルト満載な『テリトリー』の一つでもあった。


 葉摘の行く先の大半は、立場的な観点から防犯セキュリティや不審物のチェックは高めてある。その上、サイキッカーとして真守葉摘を武力制圧するのは難しい。最終的に葉摘を凌辱し嘲笑いたいにせよ、情報が欲しくてたまらないはずだ。


 葉摘の読みでは、彼らの狙いはいくつかに別れていた。一つは、啓斗に送りつけた写真と酷似した偽造写真。啓斗の心配したように、偽造だろうと葉摘のが経営する大企業の取引先やマスコミにばら撒く事で、社会的なスキャンダルを引き起こすことになる。もう一つは、馴染みの店などに高性能の集音器と発信器を仕掛け、二人の会話を盗聴することだった。


「我々がパニックになり、店で事件の全容や私たちの『悪事』を話すのを期待しているのだな」


「では僕たちの会話は今、筒抜けなんですか?」


「邸や車はまだ平気だ。あちらとしては揺さぶりをかけて使える会話を録音し、偽造写真と共に公表するのが一番効くとわかっている。まだ慌てる時間ではないのだよ」


 葉摘は淡々と説明する。啓斗は身を乗り出すように慌ててしまい恥ずかしくなった。葉摘はその様子を楽しそうに眺め、目を細めた。そして悪巧みを思いついたように口元を歪めて笑う。


「だからこそわたしたちは、彼らが聞きたいと思っていることを、正確に──そしてドラマチックに演じてあげなくてはならないのだよ」


「わかっちゃいますが⋯⋯またですか」


「不満かね。釣れるかどうかは、啓斗⋯⋯君次第だぞ。うまいことやりたまえ」


「プレッシャーかけないで下さいよ、葉摘先輩」


「『カフェ・ド・リエル』内で暴れるような真似はしないと思いたいな。さて、予定通りわたしが先に入店する。啓斗は遅刻して慌てて来るが良い」


 啓斗は葉摘からの指示を胸に、少し緊張した面持ちで待つ。いかにも待ち合わせをして来た風を装う。慌て気味に後から入れば、啓斗の緊張した表情が良い演出になるとの判断だ。啓斗は憤慨したが、襲われる可能性を前もって知らせてもらえただけ、前よりマシだという思うことにしたようだ。


 啓斗は演出のため小走りに葉摘の待つ喫茶店へ向かうと、手動のドアを開けた。カランコロンと呼び鈴が鳴る。既に窓際の指定席には、いつものように優雅に紅茶を傾ける葉摘の姿があった。


「遅かったじゃないか」


「す、すいません」


「まあ、いい。見せたいものがこら隣に座りたまえ」


 二人の演技が始まった。四人用の席に座っていた葉摘が横にお尻をズラす。パソコンを見せるため、彼女は啓斗に、二人がけのソファの隣へと来るように勧める。


 事前に決められていた通りだとはいえ、啓斗は珈琲の香りに混ざる葉摘から漂う良い香りに、胸の鼓動が高鳴る。


 監視がいなければ対面に、怪しいものごいれば隣に座らせると宣言していた。香しい甘い気分と、いつ襲われるのかわからない緊張感に、啓斗は猛烈なストレスを感じた。


「計画書が出来た。まあ見たまえ」


 罠にはめるための計画を、あえてオープンにする。このやりとり自体、この店で行った事が何度もあるため、監視者が見ても違和感はなかっただろう。


「葉摘先輩、罠にかけるとして彼らはどうやってここに?」


 啓斗は声をくぐもらせて低めに、だが耳を済ませば聞こえるくらいの声量で話す。慣れた打ち合わせだが、隣に座るのは初めてだ。車の助手席より密着度が高く、啓斗はドキドキした。葉摘の運転の時も啓斗が運転の時も助手席に互いが座る事はあまりなかったので、彼は余計に興奮していた。


 葉摘はカップをソーサーに静かに戻し、啓斗の様子を楽しむように微笑んだ。


「私のスケジュールは、父の秘書を通じて外部に漏れることがある。おそらく彼らは共犯者を使って、あの時私が心霊スポットへ向かうことを突き止めたのだよ。現場の証拠はデマで通せるだろうが⋯⋯現場にいた事実までは消せない。彼らの突破口らそこにあるのだろう」


「でも先輩、あの写真がネットにバラ撒かれたら、俺ちちもうおしまいですよ!?」


 啓斗はわざとそれらしく声を震わせた。

葉摘は落ち着き払った声で応じる。


「落ち着きたまえ啓斗君。証拠はすべて私たちが握っているようなものだろう。それにあの連中も所詮は小物。刑務所中から出て来ようと、出来る事なんて限られているさ」


「で、ですが、あの心霊スポットでの件が明るみに出たら、俺たちだって無傷じゃ済みませんよ? どさくさに紛れて奪ってやったあいつの⋯⋯滝田の事を、やつらは知って攻撃を仕掛けたって事ですかね」


 盗聴器を使った録音を考えて、啓斗はあえて曖昧に、どう取るかによって変わる言葉で自然に話した。親友だった滝田という男は現在も行方不明となったままだ。彼ら犯罪者グループの行いが明るみに出たきっかけを作ったのが滝田だけに、この話題は食いつくはずだった。


「そういう事だ。幸いやつらは啓斗と滝田の関係は気づいていない。こちらも濡れ衣を被せられ前に動いておこうじゃないか」



「回収は頼めないのですか」


「難しいな。何より秘密は裾野が広がるほど守れなくなるものだ。啓斗君とわたしが共有するだけで十分さ」


 これは新入生の理沙を巻き込まないための、葉摘の配慮だ。啓斗と葉摘の二人だけの秘密だと、あえて強調することで赤く鳴る後輩の反応を楽しむ余裕が、彼女にはあった。


 後輩をからかいながらも、葉摘はしっかり違和感のある客の姿を捉えていた。啓斗にはもう一つの理由を伝えていない。犯罪者グループがリスクを背負ってまで復讐するために、啓斗の目の前で、彼らが自分を犯すつもりだからだ。そんな事を彼女の口から伝えてしまうと、余計な力が入る。大事な後輩たちとの絆を、葉摘は彼女なりに大切にしていたのだ。 


 葉摘はカップの中を覗き込みながら、まるで小説の登場人物について話すかのように再び語り始めた。


「だからこそ、私たちには『切り札』がある。押収されたデータは完全ではない。何より彼らがわたしたちを陥れるために使うつもりの共犯者についての情報。それに、彼らが過去に犯した、まだ明るみに出ていない決定的な証拠がね」


 えっ、そんなのあったか⋯⋯そう考えた啓斗は、葉摘の意図を察し、話を膨らませる。


「そ、それがあれば、彼らをさらに追い詰めることができますね!!」


「ああ。彼らが我々を脅迫し、盗聴しているという事実ごと、警察に突き出してやるさ。そうすれば、今度は彼らが『業務妨害』に『脅迫』で刑期を延ばすことになる」


 葉摘はそう言うと、テーブル下に手を伸ばし、あらかじめ自分が用意していた盗聴を啓斗の前に出した。葉摘の感覚には、ダミーの他に二つ盗聴器があり、犯行グループの仲間らしき男も、暴力行為に出る気のない二人の監視を兼ねた盗撮役、囮の下っ端だった。


 葉摘が得意気に、彼女自身が用意した盗聴器を見て、用意した覚えのない代物だったため、下っ端は当然動揺した。


 啓斗は葉摘の悪戯につきあわされて内心ハラハラしていた。生命がかかっているというのに、おちょくる気でいるのだ。顔色に出さないよに注意しながら、啓斗は葉摘の悪さに付き合う。


 二人は聞こえることを承知の上で、偽の『切り札』と『反撃計画』を滔々と語り続けた。中身の実行性は低い。肝心なのは、「いつ」「どこで」行動を起こすのか──盗聴器の向こう側の相手に知らせることだ。


 ひと仕事終えた啓斗と葉摘は、店を出た。真剣な面持ちで、無言で進む。犯罪者たちが勝利を確信し、狂喜乱舞する姿が目に浮かぶようだった。


 安全圏まで離れ二人は真守邸へ戻った。緊張の糸が切れたように啓斗は深く息を吐いた。


「あれでよかったんでしょうか」


「完璧だよ」


 葉摘は満足そうに頷き、微笑んだ。


「彼らは私たちが話した『偽の情報』を鵜呑みにし、慌てて自分たちの共犯者や希望者に連絡を取るはず。その交信こそが、わたしが仕掛けた本物の罠の引き金になる」


 葉摘は共犯者の通信手段と彼らの仲間達が生活している家、潜伏しているアジトを、複数のサイキック能力を融合させたマテリアルリーディングを使い特定する。リーディングにより得た情報は大学に待機していた


 犯罪者グループは偽の切り札の話に飛びついて、大企業の令嬢を穢そうと邪な心を持つ者たちが大勢集まった。


 真守葉摘がどういう人物なのか、彼らの大半は知らない。ただ催しの内容が面白そうだと思っただけ。本当に令嬢がやって来るのならば、目茶苦茶にしたいという企画主の思いに共感していた。


 啓斗と葉摘は、かつて心霊スポットで性犯罪行為などを行う連中を罠にはめた場所に来ていた。普段から日中でも人の気配の少ない廃ビル。


 先にこの地にやって来ていた監視役の者から、二人が心霊スポットに入ったと連絡が入ると、集まった者たちから歓声が上がった。


 数人ならばともかく数十人の足音や話し声は、暗く静かな心霊スポット現場にまで響く。まして宴のようなテンションの高さと、口々に声に発する下卑た非道な発言を隠す気もなく近づいてくるのだ。それも二人を逃さないように挟み撃ちにする形で、同程度の人数が反対側からも近づいて来ていた。


「大丈夫なんですか、葉摘先輩」


 葉摘が彼を気にしてなのか、知らせる事のなかったもう一つの狙いが、集団から叫ばれる声でわかってしまった。


 いくら真守葉摘が強力な能力者でも百名近い人数を相手に、勝てる見込みはなかった。


「言ったろう、罠には罠だと。奴らが望むように、好きなだけ⋯⋯やりたい放題にさせてやればいいのさ」


 そう言うと葉摘は啓斗に目を閉じるように伝えた。確証が欲しい。それも性犯罪者のリーダー格自身がやって来て目撃させる。刺激が強いと教育上よろしくないと、葉摘は啓斗に目を閉じさせた。


 殺意にも似た陵辱者集団が近づくのを前に、目を閉じて待つなど恐怖でしかない。暗い街灯一つついているだけなので、暗闇から近づく懐中電灯やスマートフォンなどの明かりのちらつきが閉じる目に映り、啓斗は震えた。


 スッと、柔らかな手が啓斗の手に触れた。


「啓斗⋯⋯わたしの手を握り、罵声は一切無視するんだ。わたしが何を言われても目はしっかり閉じて、わたしの手を握っておけ」


 ドキドキする気持ちが恐怖からか、葉摘への気持ちからなのかわからない。ただ知らない方が身のため⋯⋯これは確実だった。


 騒ぎが大きくなり、二人が手を繋ぎ固まっているのを見て、集団が勢いづく。


「仲間が世話になった礼をさせてもらうよ、真守葉摘。そこの男は彼氏か。君の痴態が良く見えるように、しっかり目を開かせて見届けさせてやるよ」


 これから陵辱をしようとする相手が怯え震える様子を楽しむために、リーダー格の男が葉摘の前で語り出した。誰が先でも構わなかったが、嬲るための言葉だけはリーダー格の男の役目であり、興奮を高めるために集まったものも承知していた。


「その顔が見たかったんだよ。お前らの隠した証拠は消しといて、かわりにボロボロに汚されたお前のトドメを、そいつの手で刺させてやるよ。ギャハハハハハ」


 数の暴力の前に完全に油断したのか、リーダー格の男が、気丈に立ち尽くす葉摘に言葉を吐きかけ頬に触れる。後始末は啓斗にさせるのは、以前やろうとした手口と同じにしたい、プライドから来るものなのだろうと思われた。


「────やれ」


 目を瞑る啓斗は興奮した怒声や、嘲笑する大勢の叫び声の中で、リーダーらしき男の言葉をハッキリ聞いて歯ぎしりしていた。


 彼には何も出来ない。だから大人しく指示通りにしていた────瞬間だった。


 フワッとした体感。かかる空気の圧力は同じだが、浮揚感に目眩がしそうになった。手の感触が、啓斗の意識を保つ。


「始まったようだな」


 見えないけれど、手の温もりの先からテレパシーの声が届く。


「空中⋯⋯ですか」


 空中浮揚に、透明化。それだけではなく、下の乱痴気騒ぎの中心、スポットライトのように光を当てられる犠牲者は、彼女⋯⋯真守葉摘その人だった。喧騒の中で自分の身に何が起きているのか、啓斗にはわからない。


「見るなと言ったろうに。わたしの身代わりに、リーダーが変わってくれたのだよ」


 似てなくとも、自分の痴態を想像され見られるようで嫌だ、そう言いたいらしい。彼女の能力により、興奮した彼らはあっさり洗脳状態になり、よく見るとあまり似ていない葉摘もどきに群がっていた。


「あれって、映像だとどうなるんですか」


 啓斗は同じように透明化した無音の撮影ドローンに気づき、葉摘の企みがわかった。


「無論暴行相手は女性として映る。彼らは嬉々として暴行事件に加わる犯罪者だよ。ネットなどに動画をあげようものがいたのならば、情報を公開した状態で、リーダーと嬉々として行為に及ぶ自分達の姿になる」


「エッ、エグい⋯⋯」


 啓斗は自業自得の罠の恐ろしさに血の気が引いた。悪いのは彼らなので同情はしない。リーダー格の男も、()()()()()表現出来ない体験を自分自身の身に受けていた。


 決定的な瞬間を映像に確保した後、懇意にしている警察関係者に証拠を渡す手筈になっており、集まった男達は即刻捕まることになるのだ。


 その夜遅く、ニュース速報が入った。「連続婦女暴行・誘拐事件の被告らを含めた多数の共犯者が逮捕。組織的な脅迫未遂も発覚」


 啓斗は自宅へ戻ると、ネットのニュース画面を見つめた。すべては葉摘の計画通りに運びホッとひと息ついた。


 翌日の朝、講義の前に大学のオカルト研究会へと向かうと、理沙が青白い顔でパソコン作業をしていた。


「おはよう理沙。えっと、徹夜?」


 葉摘から送られてきた犯罪達の証拠映像の保存作業や、個人情報ファイルの整理など、裏方作業を彼女一人で行っていたようだ。ニュースになるのが早かったのも、事前に用意されていたからだろう。


「ゆうべはお楽しみでしまね、啓斗先輩」


「内容が内容なだけに、嫌なニュアンスだな、それ」


「先輩が鼻の下伸ばしていちゃいちゃしていたんだから当然です。葉摘先輩、情報処理私たちに全部丸投げなんですよ。嫌味の一つくらい言いたくなります」


 理沙は葉摘が新たに雇った女性秘書と、手分けして事務処理を行っていたようだ。あとの作業は彼女が引き受けてくれたので、理沙はブツブツ文句を言いながら帰ってしまった。


「おはよう、啓斗。理沙がブツブツ呟いていたが、うまくやってくれたようだね」


 理沙と違って艶々な表情で入って来た葉摘は、犯罪組織を根こそぎ潰すことが出来て機嫌が良くみえた。


「まったく、感情に支配された人間ほど操りやすいものはないね」


 葉摘は啓斗の分の紅茶を淹れながら、事もなげに言った。彼女のサイキック能力は、ただ超常現象を解明するためだけではなく、悪意を持った人間を見定め、その思考の隙を突くためにも使われた。


 啓斗は彼女の美しさの裏に潜む冷徹さと正義感に、改めて畏敬の念を抱く。ただ啓斗は、制裁の趣向に引いたのだがそれは言わないでおいた。


「もうこれで、本当に終わりですね」


「ああ。もう二度と彼らが日の目を見ることはないだろう」


 葉摘は紅茶カップを啓斗に差し出した。


「さあ今日も勉学に励みたまえ。午後はまた顔を出すのだぞ。今日の研究テーマは、最近話題の『人体自然発火現象』についてだ」


 どこかで聞いたようなテーマだな、啓斗は、そんなツッコミを入れたくなったが、淹れてもらった紅茶を一口味わい落ち着く。


 平和な日常が戻ってきた。しかし、啓斗は知っていた。この美しい先輩の隣で、自分はこれからも数多の闇と対峙し、巻き込まれるのだろうと。激しい人の性を見せつけられた後なので、先行きが不安だった。



 ◇ 


 啓斗が講義のために研究会室から出てゆくと、葉摘はさっそく協力者にねぎらいの言葉を送る。


「どうだったかね。アドバイスどおり、能力解放して、啓斗に眠る厨二心を擽ってやったぞ」


 リモートで繋がった相手は理沙より表情の暗い、秘書の由紀子だ。子会社の社長秘書に抜擢された彼女の相手を選ばない物言いが葉摘も気に入り、仕事を依頼したり、恋愛アドバイスをもらったりしている。


「駄目でしょ」


 得意気な令嬢を相手に呆れたように駄目出しをする由紀子。


定番とはいえ、洗脳(マインドコントロール)がマズかったかね。透明化や空中浮揚はメジャーではないからか⋯⋯」


 駄目だしを食らって動揺する葉摘。彼女にとって犯罪者の復讐心など些細な事。それより大事なのは、後輩との距離感だったのだ。


「ぜんっ⋯⋯ぜん駄目ダメ。つか、超能力の問題じゃないって。何、あのむさい乱痴気騒ぎ。あんなもの見せられたら絶対引くに決まってるでしょうが。雷撃ズドーンと壊滅させた方がマシだよ」


 その事後処理で今も葉摘に代わり対応に追われて忙しい由紀子は容赦なかった。超能力で恐れられるのは、葉摘のもとにいる事を啓斗が望んだ時点で問題なかった。喫茶店でのやり取りなど、完璧なのに不器用な彼女にしては上手く流れを作ったと感心していた。


「次はうまくやるから見捨てないでくれたまえよ」


「────却下」


「むっ⋯⋯何故かね」


「私は誰かさんのせいでクッソ忙しいんですよ? それに人の恋路の手助けより、自分の相手が先」


「わかった。啓斗とうまく行った時には、わたしが全力で君に協力する」


「仕掛けた私が言うのもなんですが、桜子みたいなのはなしですよ」


「わかった。では次の作戦を練ろうじゃないか」


 葉摘と協力者による新たな作戦が構築され、実行に移されるであろうことを、啓斗は知らない。

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