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真守葉摘が微笑む時   作者: モモル24号
真守葉摘が微笑む時 不器用な完璧超人編

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リベンジャーと不器用な完璧超人・1


 進藤啓斗は、大学のオカルト研究会に所属する大学二年生だ。大企業の令嬢で美人で評判の真守葉摘先輩に誘われ入会したものの、超常現象には興味などなかった。


 そんな啓斗だったが、オカルトネタを扱い、やらせ的な配信の雑務をこなし、超能力者である先輩が巻き起こす様々な事件に巻き込まれる内に、少なくとも真守葉摘という人物が本物であると認めていた。


 事件の解決をきっかけに、二年生の春に、新入学生として青木理沙が加わる事になった。啓斗と違い、彼女は()()()。いわゆる霊視能力がある有望な後輩である。研究会の内情を良く知る彼女は、真守葉摘の世話係に近い。啓斗としては可愛らしい後輩が出来て嬉しい反面、美人の先輩との二人きりの時間が減り複雑な気分であった。


 いまも真守葉摘が運転する高級外車の後部座席で、窓の外を流れる夜の景色を見つめていた。葉摘はいつもと変わらぬ冷静な表情でハンドルを握っている。助手席には理沙が座り、先輩と慣れない雑談をしている。


(⋯⋯ボーッとしていないで助け舟を出したまえ、啓斗)


(⋯⋯理沙君の機嫌を損ねると、せっかく得た新入生を失う事になるのだぞ)


 啓斗は小さな息をつく。テレパシー(思考感応)能力で、先輩からの悲しい叫びが伝わって来ているからだ。


 淡い恋心を向けていい相手ではないのは百も承知だ。それでも惹かれてしまうのは、一年の付き合いで彼女の内面を見てきたせいだろう。


(⋯⋯理沙は先輩のポンコツぶりを承知してますよ。彼女で人間相手の日常会話を学んで下さいよ)


 高い能力や知識があるのに、この先輩は対人相手が苦手なのだ。オカルトを雑に扱う人間や、悪人には容赦ないのだが。


 いまは新入生の理沙に任せておきたかったが、啓斗はふと思い出した。


「⋯⋯会長、本当にあれで終わりでしょうか」


 啓斗は助け舟のかわりに思い出した案件を、少し不安そうに葉摘へ尋ねた。



 二人は以前、地元の心霊スポットを悪質な性的犯罪行為の場所に利用していた連中を、葉摘のサイキッカー能力と周到な罠で社会的に────そして法的に「排除」したばかりだった。


 葉摘と啓斗、二人のアリバイは完全で、抜かりはない。罠にかかった犯罪者連中は不運な事故死を遂げた。その他の者たちも芋づる式に逮捕された。明るみに出た余罪も含めて、重い罪に問われるはずだ。


「ああ、あの件は表向きは終わりだよ。法と社会の裁きという点で、彼らに逃げ場はないからね」


 葉摘は短い答えを返した。懇意にしている警察関係者から連絡が入っていたそうだ。


「表向きは⋯⋯なんですよね? では、裏では?」


 葉摘は少しだけ口角を上げた。バックミラーに映る表情は美しく、少し皮肉が効いた目をしているように見えた。


「彼らは地を這うような連中。常識や倫理が通用しないからね。煮え湯を飲まされた恨みだけで、何か無謀な計画を実行してくる可能性は排除できない。とくにあのリーダー格の男⋯⋯ダミーを用意していたようだからね」


 啓斗は背筋が寒くなった。確かに逮捕直前に見せた犯罪者グループのリーダーらしき男の目はテレビ中継のカメラに怯む事なく睨みつけて敗北を認めず、むしろ燃え盛る怨念を宿していた。

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