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レジ打ちに現れた天使  作者: Evanp
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第一話

特別何か言うことはありませんが、面白いと思っていただけたら幸いです!

「いらっしゃいませ~」


 どうにか声を張り、商品を持ってきた客に笑顔を向けながらそういう。無言でカゴをどさっと置いた客はそのままスマホを見続ける。内心で『お願いしますぐらい言えよ』と愚痴を吐くが表には出さない。もし出してしまえばどうなるかなんてわかり切ったことだからだ。それでも、失礼な態度をされるのは慣れることはないだろう。

 もくもくと商品を通す。ピッ!ピッ!と通す音が地味に頭に響くが、それも最初の一時間ぐらいのものだ。俺は4時間ほど、閉店までのアルバイトなので、少ししたらこの音にも慣れてただ時間が経過するのを待つだけになる。ポイントカードを持っているか、支払方法は何かを確認したところでふと視線を感じた。もしかして、待ってる客が不機嫌になった?たまに「時間をかけすぎだ!」とか、「もっと丁寧に扱え!」とかのクレームに近い事を言われる。その前触れか?


「・・・・・・」


 しかし、レジに並んでいる客はいなかった。珍しく今日は客が少ないな。まあ、楽なのはいい事だ。俺がバイトをしているスーパーは駅前にあり、平日では仕事終わりの客がそのまま酒や晩御飯を買いに来る。夜10時に閉店するので、俺は午後6時からのバイトである。以前やっていたバイトは裏方だったため接客やってみたいな~程度の間隔で選んだのだが、それが若干失敗だった。

 変な客、頭のおかしい客は結構いる。人として当たり前のことができない。なぜか高圧的。そんなのはまだいいほうだ。これ以上話し続けるとただ俺の愚痴を垂れ流すことになるのでやめておこう。ビニール袋をまとめ、レジ内を軽く整えておく。今のうちにほかの客が来たときに色々取り扱いがいいようにするために。


「よろしくお願いします!」

「いらっしゃいませ!」


 元気な声でそういったお客様は小さな子供だった。お菓子を手に抱え、千円札を握っていた。その笑顔に浄化されるかと思ったが、ぎりぎりで耐えた。笑顔で商品を受け取り、どこかソワソワしているお客様の様子に納得した俺は色のついたセロハンテープを商品を開けるときに邪魔にならないところに張り付ける。

 さらに光り輝いた笑顔に俺は危うく浄化されそうになりつつ、商品を手渡しする。


「ありがとうございます!」

「ありがとうございました。またどうぞお越しくださいませ!」


 マニュアルでもあるが、それ以上に本心でまた来てほしいという思いを込めてそう言う。きっと、こういう子がいるからほかの人もバイトとか頑張れてんだろうなぁ。

 しかし、今日はほんとに客が少ない。ある一定以上の客がいないと流石に暇になる。2、3分に一人ぐらいのペースで客が来てくれないと時間の経過が遅く感じる。ボーっとしていてもいいが、そうすると来た客に反応するのが遅れたり、俺のアホ面がさらされてしまうのでなんか嫌なんだよな。

 結局、バイトは何やっても辛かったり暇だったりするのでそれは飲み込むしかない。そう思っていると、ペットボトルを持ってきた・・・高校生ぐらいか?の女の子がやってきた。


「お願いします!」

「いらっしゃいませ!」


 これぐらいの年の客もいい人が多い。声を張ってくれるので確認が楽だし、やっぱり年の近い相手はしゃべりやすい。そう思いペットボトルを通すと、そのお客様が突然俺に向かって話し始めた。


「お兄さん、結構な頻度でレジ入ってますよね?」

「え?ああ、そうですね。稼げるときに稼いどこうと思って・・・でも、週4ぐらいですよ?もしかして、お客様はそこそこな頻度でこの店に?」

「そうなんです。駅前だし、この時間だと安くなってる商品もありますし。」

「そうですねぇ。もう少ししたら半額になる商品も出てきますし、自分も買えるものなら買いたいですよ。」


 笑顔でそう話す。列を気にしても客がいないのでもう少し話そうとするお客様はどこか照れたような顔で俺に向かってこっそりと声を出す。


「あの、もしよかったらお仕事終わったらお時間良いですか?」

「・・・え?」

「あの、無理じゃなくていいんです!その、10時までお仕事してますよね?それが終わったら、あそこの出口の近くで待ってます!」

「え?あっちょっ!」


 俺の返答を待たずにそのまま行ってしまうお客様。俺は若干放心状態で取り残される。何?どっきりか何かか?それともなんか、気に障ることでもした?そこ行ったら強面なお兄さんとかがいてぼこぼこにされる?え?え?


「あの、良いですか?」

「ッ!すみません!お待たせいたしました!」


 考えがまとまらない。マジでどういうことだ?レジを通す間も、接客している間も、どうなってしまうのか、何が起きてしまうのか、ということを考えるとまともに仕事をできる訳がない。どっかでなんかしたか?もしかして・・・いや・・・


 そんなこんなで時間は経過する。閉店間近になっても客は来る。この時間帯の客は大体顔が同じである。そして、変なことをする客も同じである。マジで早く帰ってくれないかな・・・いやマジで。

 少しして、ビールを持った中年が来る。雑に商品を置いた彼はワイヤレスイヤホンをつけたまま、何かの動画を見ているようだ。こちらの話を聞く気がないらしく、こちらもそういった客には特別対応をする気はない。適当に商品を通し渡す。向こうも何も言うことなく帰っていく。その客が向かった先はさっきのお客様・・・女の子が言っていたほうだった。そういえば、あの子は何歳ぐらいなんだろう。パっと見は高校生ぐらいだったが、なんというか、どこか幼さがあったような・・・もし高校生なら妹と同じぐらいか?まあ、もう覚悟を決めるか。もしなんかあって暴力でも振るわれたら全力で逃げよ。逃げるが勝ちっていう言葉もあるし、俺は暴力とかやったことないし。


「はいこれ」

「いらっしゃいませ~」


 俺は、自分で言うのもなんだが客によって相当態度を変える。今も高圧的な客は適当に返す。てか、内心でもいい客はお客様、悪い客は客、最悪な客は・・・もはや形容してないな。こいつとか、場合によってはあだ名的なのをつけてるし。

 そんな感じで時間は経過する。そろそろ時間もいいころだし、レジ周りを片付ける。後は残っている数名の客の対応をして時間になる。閉店の音楽が鳴るが・・・やはり数名の客は残ってるな。普通に考えて閉店時間が過ぎても店にいるってどういう心境なんだ?早くしてくんねぇかなぁ。


「あ、お疲れ様!今日はもう上がっていいよ」

「え?いいんですか?でもまだ客が・・・」

「ああ、今日は私が対応しておくから。お疲れ様!」

「そういうことなら。お疲れ様です。お先、失礼します」


 今日一緒に入っていた少し年上の女性先輩、サイトウさんがそう言ってくれたのでレジを閉じる。最近は俺が残っていたのでありがたい。先月の残業枠の時間が一時間以上あり、そのほとんどがこの閉店後の客の対応だということがマジで頭おかしいと思う。金が入るからいいじゃないかという人もいるが、そういう問題ではない。精神的につらいのだ。やっと帰れると思ったら自分勝手な客に制限される。まじで、これがほんとにきつい!俺は自分の時間を理不尽に制限されるのがとてつもなく許せない。しかし、バイトの身でそこら辺をとやかく言うことはできない。


「う~さぶっ!」


 今は冬ど真ん中。そんな季節の夜10時など、寒すぎて着替えるのも億劫になる。ロッカーから上着を出し、荷物をリュックに入れて帰りの準備をしたのまではいい。いいのだが・・・


「やっぱ待ってんのかなぁ」


 てか、あの時間からだと1時間以上待ってることにならないか?そう考えたら早く行かないと相当寒い思いしてるんじゃ・・・


「ちょっと急ぐか」


 軽く小走りで言われていた出入口のほうに向かう。シャッターが絞められた入り口の前に、その子はいた。手袋をつけているうえで手をこすり合わせあっためているのか?よく見ると足も軽くもじもじさせてこすり合わせている。てか、この時期にスカートって・・・学校帰りか?そういえばあの制服どっかで・・・


「あ!来てくれたんですね!」

「っ!うん。最初はいたずらだと思ったけど本当だったらかわいそうなことになるし、もしそうじゃなくてもこっちは帰る時に通るからね。ほら、そっちに俺の自転車止まってるんだよ」


 指さした先には従業員用の駐輪場に止められた俺の自転車。とりあえず荷物を自転車のカゴに乗せ、女の子のほうに振り替える。


「さて、お話がある的なこと言ってたけど?」

「はい。でもまずは自己紹介します。初めまして。月影つきかげルナと言います。」

「俺は大波見おおばみ建斗けんとです。よろしく」

「オオバミさん、下の名前は建斗っていうんですね。苗字はネームプレートで知ってたんですけど、かっこいい名前ですね。」

「ありがとう。あ~あの、正直女の子にこういうの聞くのは失礼だってわかってるんだけど、月影さんは今何歳?ぱっと見高校生っぽいけど・・・」

「そうですか?今は13歳です!今年の7月で14歳になる中学一年生です!」


 それを聞き、俺の脳内は一瞬フリーズした。こんな時間に中学生女子と一緒にいる19歳専門学生。これ、まずいのでは?てか、普通にこの子補導対象だし、早く家に帰さないと・・・


「あ、その顔、私のこと心配してますね?ダイジョブです!私の家、あそこなんで!」


 そういって指を刺した先は駅前の高いマンション。階層も高いが確か値段もそこそこ高かったはず・・・てか、ここに住んでるってことは!


「その学生服、もしかして西中?」

「そうですよ?」

「だから見覚えあったのか!そこ、俺の出身校なんだよ。家はここから離れてるけど、そっか。ここら辺も西中の範囲か。」

「そうだったんですね。私たち同じ出身校なんですね!」


 なんか、すごく喜んでる。え?同じ学校だったからってこんなに喜ぶ?んん?


「あの、改めて、お話させていただきます。私は、ここ最近結構な頻度でこのスーパーに来てるんです。まあ、買ってるのはそんなに量はないんですけど。」

「そうなの?そういえばたまに見かけるような・・・」

「あんなにお客さんがいるのに一人だけ覚えるなんてできないですよ!でも、朧気ながらも覚えてくれてるなんて、うれしいなぁ」


 何がうれしいのか・・・いや、待て。え?そんなことある?このシチュエーション、今の発言。いやいや、勘違いするな。流石にこんな子が俺に・・・あり得るのか?あり得ていいのか?もしかしてドッキリ?周りに誰かいる?

 きょろきょろと周りを見回すが誰かがいる様子はない。しかし・・・そんな・・・


「あの、オオバミさん!」

「はい!何でしょうか!?」


 急に大きな声を出されたのでこっちも反射的に勢いよく返事をしてしまった。


「私、このスーパーに通って、あなたに会って、あなたの接客を受けて、感じたんです!この人しかいないって!」

「・・・」

「声、対応、誠意、やさしさ。それらすべてが私が求めていた以上に素晴らしい方です!そして、今話して理解しました!オオバミさん、どうか私と付き合ってください!」


 すごい。こんなことってあるんだ。てか、この子勢いがすごいな。付き合ってくださいって言って思いっきり腰を折り、手を伸ばしている。あれだ、昔の漫画で主人公がヒロインに告白するシーン。最近はああいうシーン見ないなって思ってたけど、まさかリアルで見るとは。


「えーと、まず整理させて。俺と君はほぼ初対面だよね?」

「そうですね!私が一方的に知ってるだけです!」

「だよね?あと、君は今13歳って言ったよね?俺、今19歳で今年20歳になるんだよ。結構年の差があるね」

「?そうですね」


 そうですねって・・・あ!


「俺、今大学に行ってないんだよ。まあ、学校に行ってないわけじゃないんだけど」

「?どういうことですか?」

「俺、今専門学生なんだよ。奨学金も借りてるし、ほら・・・年の差も」

「私そういうの気にしません!正直好みであればそういうのどうでもいいんです!」

「・・・君、結構強いね」

「君じゃなくてルナって呼んでください!」

「ルナ・・・ちゃんで良いかな?」

「ちゃん付け!いいですね!」


 すげぇ。さっきからずっとルナ・・・ちゃんのペースだ。まったく話の流れが変わらない。どうしよう。断るべきなんだろうが、普通にこの子かわいいし、俺も彼女ができるチャンスともとらえられる。年齢差があるのは正直不安だが、世の中年の差カップルも多いだろう。


「う~ん、わかった。でもまずはお互いを知るためのお試し期間にしない?そうだな、もう少しで1月も終わるし、2月いっぱい付き合ってみて、そっちの思いが変わらなかったら本格的にお付き合いする、的な感じでどう?」

「そう、ですね。わかりました!ではこれが私の連絡先です!あと、平日は学校があるのですが私部活入ってないので放課後にあったりもできますか?」

「俺の学校の時間割次第かな・・・先に送っておくか」


 自分の写真フォルダから時間割を引っ張り出しルナちゃんに送る。基本的に午後に授業があるせいであまり放課後に会うことはできないかもしれないが、何日かは会えるだろう。


「そうしたら、次の火曜日、学校終わりに少し遊びましょう!」

「遊ぶって何を?」

「そうですね・・・まずは、私の行きたいところとかからでいいですか?その次にオオバミさんの行きたいところ、って感じでお互いの行動、好きなものとかをお互いに教えあいましょう!どうですか?」

「そうだね。うん、それならよさそうだね」


 という訳で、次の火曜日、3日後に遊びに行く・・・いや、これはデートなのでは?まあ、遊びに行く、デート、どうとらえても変わらないか。その間バイトもないし、少し服とかを買いに行くか。あと、髪も切っておこう。最近きりに行けてないし、ちょうどいいか。


 俺は、過去に一度女性とお付き合いしたことはあるが長くは続かなかった。こんなにかわいい女の子に好きと言われて嫌だという男はそうそういないと思う。

 真っ黒な髪は肩より少ししたぐらいまで伸びており、目はキリリとした力強さを感じ取らせる。身長は・・・160あるかないかぐらいか。学生服の上に上着を着ているからわかりづらいが、おそらくスタイルもいいのだろう。普通に考えて、特別イケメンでも、スタイルがいいでもない俺が好かれる理由が分からない。声や性格?的なものを見ていたらしいが、そんなにいいという自負もない。俺は、自分に自信がない。

 分かれて自転車をこぎ家に向かう。なんか、すごい時間を過ごした気がする。


「ただいま~」

「おかえり。これ晩御飯ね~」


 家に帰ると母が晩御飯をテーブルに出してくれていた。ちょうどいい温かさになっている晩御飯を食べて風呂に入る。もう時間も時間だし、疲れたのでそのまま布団に入り寝ようとした。その時だった。


ブ~~~!


 俺のスマホが通知を伝えた。ゲームか何かの通知かと思って見てみると、ルナちゃんだった。てか、初対面でちゃん付けってどうなのよ?いや、年齢差とか考えると全然おかしくないんだけど、あの子大人びてるせいでなんかダメな感じが・・・いや、いいか。あの子も喜んでるし。ほんとに?いや、うん。悩むのや~めた!とりあえず通知みよ!


『お疲れ様です!改めて今日はいきなりあんなことを言ってしまってすみません。でも、私の思いにこたえてくれてありがとうございます!』

『お疲れ様。まあ、確かに驚いたけどうれしさもあったよ。改めて聞くけど、ドッキリとかじゃないよね?』

『違います!』

『そうだよね。ありがとう。もう時間も遅いし寝ようと思ってたけど、ルナちゃんもあんまり夜更かししないようにね』

『はい!私ももうすぐ寝るところです!そういえば、バイトのシフトとかってあります?』

『あるけど、どうして?』

『正直、オオバミさんがいないなら行く意味ないなって思って。』


 ・・・この子、マジ?もしかしてバイト先に来てたのって俺に会うため?なんか、もしかして俺の想像の別ベクトルでやばい子なのでは?


『まあ、そういうことなら』


 写真を送る。うーん、ダイジョブかこれ?なんかまずいような・・・


『ありがとうございます!それじゃあ、おやすみなさい!』

『お休みなさい』


 スマホを置き、毛布を掛ける。もう、今日はぐっすり寝て明日またいろいろ考えよう。あと、このことは学校のやつとか家族にはなすのはだいぶ先にしよう。うん!そうしよう!


 そう考え頭がすっきりしたら一気に眠気が襲ってきた。おやすみなさい。あとは明日の俺、頑張れ!

難聴?朴念仁?いえ、この話はよりリアルなので主人公は察しがそこそこありますし、聞き取れないこともほとんどありません。勘違いもします。

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